魔法少女育成計画-dogma-   作:闇と帽子と何かの旅人

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第七話『Promise』

 【みんなお待ちかねの、今週一番キャンディの少なかった魔法少女を発表するぽん。なんと今週は最下位の魔法少女が二人もいたぽん】

 

 【脱落者は一週間に一人とファヴもルールで言っていたから、これにはびっくりしたぽん。というわけで現行ルールでは今週の脱落者は無しぽん】

 

 【しかしこれでは円滑にイベントが進まないと判断してぽん。協議によりルールの改定が決まりましたぽん。来週からは最下位が二人以上居た場合でも最下位全員が脱落する事に決定したぽん! みんなでキャンディを同じにするとかいうずるはだめぽん】

 

 【それと今週一番キャンディが多かった魔法少女は本人の希望により秘密ぽん。なにとぞご了承くださいぽん】

 

◇◇◇

 

 鉄塔の夜風は冷たかった。心はどうだろうか。

 ルーラの心は安堵していた。無理もない、スノーホワイトのおかげで命拾いしたのだ。

 たが感謝など到底できるものでは無かった。スノーホワイトという魔法少女が、より理解できない存在になったからだ。

 

 ルーラは魔法で横に居るスノーホワイトに問う。

 

 「なぜ私を助けたスノーホワイト。真意を教えなさい!」

 

 ルーラの魔法に抵抗する事も無く、ただ素直に従うスノーホワイトは笑いながら返事をする。

  

 「困っていたから、助けた」

 

 理解できなかった。困っているからと言って自分を襲った敵を助けられるものか。

 ルーラは再度魔法を使い本心を言えと、スノーホワイトに再び問う。

 

 「困っていたから、助けた」

 

 同じ言葉。同じ表情だった。思わずルーラはたじろぐ。姿勢が崩れた事により魔法の効果から解放されたにも関わらずスノーホワイトは相変わらず同じ表情だった。

 

 「そんなに驚かないでください……そんなに震えてはいけない。サアサア、これからどうするんですか? 廃寺には帰れませんよね」

 

 スノーホワイトに問われ、ルーラは言葉に詰まる。

 ルーラは朱子織のマントをスノーホワイトに突如掴まれる。

 

 「ルーラさん気を落ちつけて、サアサア」

 

 ルーラは無理矢理手をつながれ歩かされる。スノーホワイトを見ながら諦めまじりにつぶやく。

 

 「なんなのかしらこいつ……」

 

 ルーラはホーッと深いため息を一つした。

 無理矢理とはいえ、スノーホワイトの手を拒めたはずだ。

 だが……ルーラがそれをしなかったのは、この手が命綱のように思えたからかもしれない。

 

 「病院? あなたここに住んでるの?」

 

 戸惑いながら聞くルーラにスノーホワイトは笑いながら頷き、ルーラを病室へと案内する。

 ルーラは部屋の窓から室内に入る。その窓のは頑丈に施錠されていた痕跡があったが今はそれも無く、ただ魔法少女達が出入りするのを拒まず見守っているようだった。

 

 「嫌な臭い」

 

 薄暗い病室には、鼻腔を穿つようなアルコール臭が漂っていた。

 ルーラは室内を見渡す。ベットと洋服箪笥(たんす)だろうか。ただ自然に置かれているそれらは、良く使われているのか、少々痛んでいた。

  

 辺りを見渡しているルーラを尻目にスノーホワイトはベットに横になっていた。

 

 「休まれないんですか?」

 

 ベットからスノーホワイトルーラに問いかけていた。

 質問には答えず、ルーラはベットに腰掛ける。

 

 「あなた何処か悪いの?」

 

 ルーラは珍しく気を遣うかのようにスノーホワイトに尋ねるが、スノーホワイトは枕に横になったまま笑顔で眠っていた。

 

 「寝ている……のんきなものね。それとも余程の馬鹿なのかしら」

 

 ルーラは呟きながら立とうとするがマントの裾を掴まれていて立てない。

 ゆりかごの中の赤子が母親の衣服を引っ張るかのよう、服をつかみながらスノーホワイトは眠っていた。

 ルーラは忌々しくも思いながらも、その寝顔を見て立ち上がるのを諦める。

 

 

◇◇◇

 

 

 ここは夢の中だろうか、スノーホワイトは辺りを見渡す

 混凝土(コンクリート)壁を凝視しながら、ふとねむりんの顔を思い浮かべる。

 自分以外誰もいないはずの部屋をグルリと見渡すスノーホワイト。

 姿は見えないがねむりんが居る気がする。声が聞こえる気がする。

 

 「……ねむりん……どこに……」

 

 スノーホワイトはそう呟きながら壁に耳を当てる。

 隣の部屋から物音がする。

 ねむりんが居る。

 スノーホワイトはそう直感する。

 

 今の今までスノーホワイトが想像し得なかった。己と壁一重(ひとえ)を隔てた場所にねむりんは居る。

 

 しかしスノーホワイトの問いかけは虚空へと吸い込まれ、言葉にならない嘆きと悲鳴だけが部屋に響く。ふとあの日交わしたねむりんとの約束を思い出し、飴を探すが何処にも見当たらない。

 全身の力が抜けスノーホワイトは冷たい床に崩れるように座り込む。

 スノーホワイトにとってねむりんの存在とは計り知れないものであり、同時に心の拠り所(胎内)であった。困った声が聞こえる。スノーホワイトの中でこだまするその悲鳴は誰にも聞かれる事は無く気付かれる事も無かった。それはまるで産まれる事のできなかった子供の叫び声。

 

 寝ても醒めても会いたい。母親を求めるようにスノーホワイトは這いずり出す。

 

 「ねむりん……助けて」

 

 心の中の声は絶えなかった。スノーホワイトは息も切れ切れに絶えず、ねむりんを呼ぶ。

 

 …………

 

 喉が枯れそうになりながら叫び続ける。

 

 …………

 

 どれくらい、そうしていただろう。

 (スノーホワイト)の心の声は届かなかった。

 

 

◇◇◇

 

 

 目覚めるスノーホワイト。窓からは朝日がホンノリ差し込んでいた。ベットの傍らに眠る前と変わらずルーラが座っている。ルーラはなにやら考え事をしているようだ。

 

 スノーホワイトはゆっくりと身を起こし、ルーラの方をぽんぽんと叩く。

 ルーラは一瞬ギョッとするが、すぐいつも通りの不遜な表情でスノーホワイトを見つめ返す。

 

 「おはようございますルーラさん」

 

 スノーホワイトは挨拶をするが、ルーラは不機嫌そうな顔で答える。

 

 「悠長な……」

 

 ルーラはスノーホワイトに説明をする。自分たちの状況。今後どうするかなど、スノーホワイトはただそれを黙って聞いていた。

 

 「聞いてるの? とにかく私達はキャンディを稼がないと来週には、また同じように脱落の危険に晒されるのよ。それに今回やった手だってもう封じられてる」

 

 スノーホワイトは飴を集めましょうと、タダ一言返事をする。

 ルーラはそんな様子のスノーホワイトに提案をしようとするが、同じ事を先に言われてしまう。

 

 「ルーラさん私と手を組みましょう」

 

 自分の言おうとしていた事を言われルーラは苦虫を噛み潰したような顔をする。

 スノーホワイトはそんなルーラにただ一言。

 

 「困った時はお互い様です」

 

 そういいながら、またもルーラの手をひっぱりスノーホワイトは街へと繰り出していた。

 

 

◇◇◇

 

 

 【今週の脱落者は無しぽん】

 

 廃寺にファヴの声がこだまする。 

 スイムスイムは呆然としていた。ミナエルユナエルの二人はヒスババアの悔しがる顔が見れなかったと嘆く。

 

 たまはそもそも何が起こったのか全くわかっていないようだ。

 ミナエルユナエルはどうしようと話し合ってるが、ただの愚痴のこぼし合いで進展があまり見受けられない。  

 

 「作戦は失敗やね」「お姉ちゃんマジブルー」「ヒスババアさらにキレて復讐にくるんじゃね?」「マジヤバイ」「これからどうすんのスイムスイム」「どうすんの?」

 

 呼びかけられるが、スイムスイムは上の空だった。

 苦しみながらルーラを倒し、ルーラに自分が成り代わり、このチームのリーダーとして自分がルーラになるという計画は脆くも破綻してしまったのだ。

 思えば脱落者発表の時に、ルーラは廃寺に居なかった。昼間自由行動を言い渡した後それきりルーラは来なかった。誰がルーラを助けたのだろう。

 スイムスイムはルーラを助けたであろう人物に思い当たり、その名を口にしていた。

 

 「スノーホワイト」

 

 それが次の標的。そういうスイムスイムの声を聞き、ミナエルユナエルの二人は了解とも取れる返事をしていた。

 

 「人気投票で負けた雪辱やね」「お姉ちゃんまじチャレンジャー」

 

 ミナエルユナエルの二人は、以前まとめサイトでN市内の魔法少女人気投票で二位になった事を思い出して雪辱だと張り切っている。その時の一位はスノーホワイトだったのだから尚更だ。燃え上がる二人を尻目にたまは困惑している。

 

 次に狙う相手を決め廃寺は静かに賑わう。

 

 スイムスイムはどこか、すくわれたような気持ちになっていた。

 それは気のせいでもなく事実だった。

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