病院で眠り目が覚めてからのスノーホワイトは、朝から街中を感情を殺すように動き回り、ルーラも置いて行かれないようにスノーホワイトに付いて行く。
二人は街中の困っている声を助けていく。
「ほんとにあなたの能力って便利よね、まるで助ける為だけに生まれたような魔法ね」
皮肉まじりにルーラは呟きながらも、自身の魔法でスノーホワイトが見つけ出した困っている人の問題を解決していく。
喧嘩だろうか、双方にルーラが命令をして場をおさめる。
その様子を見ていた笑顔のスノーホワイトがルーラの隣で呟く。
「私の能力は声を聞くだけですよ。さっきの問題も私だけだと解決が難しかったと思いますから」
謙遜だろうか、ルーラにはスノーホワイトのその言葉が少し癪に障ったが、口には出さず次の場所を教えろと急かす。
スノーホワイトに連れられ向かった場所では車同士の接触事故が起きていた。
幸いけが人も居なかったのでルーラはその場をおさめて解決していると、スノーホワイトが見当たらない。
辺りを見渡していると路地の間にスノーホワイトは座り込んでいた。
「ちょっと! 急に居なくなって何してるの?」
ルーラがそう言いながらスノーホワイトに詰め寄るのだが、スノーホワイトはこちらに見向きもせずうつむいている。
「ルーラさんは先ほど、私の魔法は助ける為の魔法と言いましたが、魔法が役に立たない事もあります……」
スノーホワイトが見ている地面へとルーラも視線を落とす。
動物の亡骸だろうか? 何の動物かも見ただけではわからないほど無残な姿だった。
先ほどの事故はこの動物が原因だったのかとルーラは思いつつ。
「スノーホワイト、動物の死体なんか見ててどうするつもり?」
ルーラは呆れながらスノーホワイトに疑問をぶつけていた。スノーホワイトの返事は悲しげで、今にも消えてしまいそうなか細い声だった。
「まだ……この子達の声が聞こえるんです。この声に私は応えたいけど……どうしようもなくて……」
この子
よく見るとお腹の辺りに子供だろうか、幾つかの塊りがあった。
しかしどちらも瀕死で手の施しようが無い。
ルーラは自分には聞こえない息も絶え絶えな動物の声を聞いているスノーホワイトをおぞましいと思いながらも哀れに思った。
もし自分が同じ魔法を持っていたとしたら、きっと耐え切れなくなるだろうと想像が容易かったからだ。
スノーホワイトはどうしようもなく、動物の前にただ佇んでいる。
ルーラはそんなスノーホワイトに吐き捨てるように言葉を投げかける。
「あんたの気が済むまで勝手にすれば?」
ルーラは付き合ってられないと言いながら、スノーホワイトを放置してその場から離れていく。
一人残されたスノーホワイトはただじっと、その声が聞こえなくなるまで声を聞き続けていた。
数時間経ち正午頃だろうか、ルーラが戻ってきていた。
「やっぱりまだ居たのね……」
呆れつつもルーラがスノーホワイトの横に座り話しかける。
「こんな場所でひとり野垂れ死ぬのも可哀想でしょう、ほら! どこかに埋めるわよ」
スノーホワイトはルーラの行動に謝意を示し、亡骸を持ち上げようとしたがルーラに止められる。
「これ使いなさいよ」
ハンカチだろうか綺麗な布を手渡されスノーホワイトは驚く。
スノーホワイトはルーラにお礼を言い動物を布で包む。
「病院の広場に埋めましょう。あそこなら綺麗な景色が見渡せますから……」
ルーラはそうね、と了承をし病院へとスノーホワイトと向かうが、道中あることを思いつく。
「穴を掘るならあいつが使えそうね……」
◇◇◇
「あのう……ルーラさん……用ってなんでしょうか?」
突如ルーラに病院の広場に呼び出され、おどおどしている魔法少女がスノーホワイトとルーラの目の前に居た。
「たま! あんた穴掘るの得意でしょ? 手伝いなさい」
ルーラは特に魔法も使用していないが、その言葉を聞いたたまはまるで魔法にかかったように頷いてその場で魔法を使おうとしている。
「たま待ちなさい! 掘る場所はそこじゃない!」
ルーラの怒号に萎縮したたまは涙目になりなっていた。
そんな二人の様子にスノーホワイトは笑顔で仲が良いんですねと言い放ち、またもルーラが怒鳴り声を上げ、たまはスノーホワイトの背中に隠れてしまった。
「ルーラさんが怒るから、たまさんの困った声がさっきから鳴り止みません」
スノーホワイトがルーラにそう呟くと、不満そうにしつつもルーラは怒るのを止める。
「それでどこを……掘ればいいのかな?」
おどおどしながらたまは掘る場所を尋ねる。
スノーホワイトはルーラとは対照的な優しい笑顔でゆびを指しながら説明する。
「ここなら日当たりも良くて、景色も良いと思うんです」
スノーホワイトは辺りを見渡せる広場の少し高いところにたまを連れて行き、ここで魔法を使うようにお願いをする。
たまが魔法を使うと地面に一メートルほどの穴が出来ていた。
スノーホワイトは持っていたハンカチに包まれた動物の亡骸を埋める。
「たま。用事も済んだし、もう帰って良いわよ。あと……あいつらに伝えておきなさい。二度と馬鹿な真似するんじゃないってね」
ルーラにそう言われ、たまはビクビクしながら帰ろうとしていたが、スノーホワイトに呼び止められる。
「たまさん、待ってください。これ差し上げます」
スノーホワイトはたまに飴を手渡していた。
「もらっていいの? ありがとう!」
たまはまるで動物のように喜びながら飴を受け取り帰っていった。
「ルーラさんもありがとうございます」
そう言いながらルーラにも飴を渡すスノーホワイト。
ルーラは報酬がたまと一緒というのが少し気に入らなかったが、飴を受け取る。
これで少しはこの少女の気が紛れるだろうか、ルーラはスノーホワイトを見ながら思いに耽る。
自分も部下の声をもう少し聞いていればあんな失敗は起きなかったのだろうか。
ルーラはそんな風に思いそうになったが、やっぱり騙したあいつらが悪いのよ、と心の中で一人ごちていた。
その後動物を埋め終わり、ルーラは街に再び駆け出すスノーホワイトを見て、朝よりも元気な表情になっている事に気付き、つられて笑い街へと繰り出していた。
ルーラとスノーホワイトは人助けを繰り返しながら街を彷徨っていた。
時刻は夕方になっていて目の前には学生達の帰りだろうか、その中の一人にスノーホワイトが声をかけると、その少年は驚きながらスノーホワイトと話を始める。
「何でスノーホワイトがルーラと居るの?」
突然話を振られルーラは不機嫌な顔をしながら会話に混ざる。
「この子だれよ? スノーホワイトあんたの知り合い?」
ルーラの疑問にスノーホワイトは答える。この子がラピュセルだよと。
「はあ? 嘘でしょ? ラピュセルあんた男だったの?」
ルーラに睨まれラピュセルもとい岸辺颯太は辟易しながら答える。
「そうだよ……男が魔法少女してたらいけないの?」
ルーラは値踏みするような眼で颯太を見ている。
まさかあの時ピーキーエンジェルズとたまの三人を退けた魔法少女がこんな少年だったとは。
ルーラは可笑しくなり笑うのを堪えながら考える。
あの馬鹿達がこれを知ったらどんな反応をするだろうかなどと考えていたが、もしかしたら知らないだけで、あの馬鹿達の中にもこういう輩がいるのかもと思い考えるだけにとどまりながら、スノーホワイトに疑問を投げかける。
「なぜラピュセルと私を引き合わせたの? 別に会わせるのなら連絡して変身させてから呼び出せばいいじゃない」
ルーラの疑問は至極当たり前の事だった。ルーラ自身常々魔法少女は正体を秘密にし、もし正体がばれた場合はその相手を生かしておくなと言っていたからだ。
もっともルーラ自身もスノーホワイトには正体は知られているが。
颯太もルーラの言葉に同調しながら不満を言う。
「そうだよ! スノーホワイトも何で今話しかけてきたの? 連絡くれればすぐに駆けつけるのに」
岸辺颯太は少し顔を赤らめながら話している。スノーホワイトはごめんねと言いながら飴を渡している。
そんな微笑ましい光景をルーラはイライラしながら見ていた。というより見せ付けられていた。
見せ付けられた光景によって生じた鬱憤をぶつける様にルーラは颯太に少し意地悪な質問をする。
「あんたスノーホワイトのこと好きなの?」
からかい混じりのルーラの問いかけに、びっくりしたような顔で颯太は慌てふためく。
「僕はただスノーホワイトを守る騎士として……やっぱりこの姿じゃ駄目だ!」
ちょっと待っててと言い放ち颯太は茂みに隠れ、そしてラピュセルに変身し戻ってきた。
「私ラピュセルは、スノーホワイトを守る騎士として戦っているだけだ!」
ラピュセルは先ほどまでと違い威勢よくルーラとスノーホワイトに自身の思いを堂々と宣言をする。
スノーホワイトは微笑みながら頷く。ルーラは若いわね……と呟き冷めた目で見ている。
スノーホワイトはラピュセルにこれからルーラも含めて3人で困っている人を助けに行かないかと提案する。
ラピュセルはルーラの事を訝しみながらもスノーホワイトの望みならと承諾する。
だが一応と、ルーラに釘を刺すようにラピュセルは注意をする。
「ルーラ、もしスノーホワイトに変な事をしたらすぐに叩き切るからな」
宣戦布告ともとれるようなその言葉を聞きながらルーラは女王のような笑みでラピュセルに言葉を返す。
「言われなくてもわかってるわよ。というかラピュセル、あんたもスノーホワイトに変な気起こさないようにね?」
痛い所をつかれたのかラピュセルは一瞬言いよどみ、それは関係ないと怒りながらルーラと口げんかを始める。
そんな二人の言い合いを聞いてスノーホワイトは心地良さそうに街へと3人一緒に繰り出していくのだった。