比企谷八幡と神の舌を持つ少女   作:Oceans

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お待たせ致しました。21話目です。

それと、他作品ではありますが活動報告もありますので良ければ見てくれると嬉しいです。

それでは、今回もよろしくお願い致します。


第21皿 研修2日目は師匠の四宮先輩の授業から始まる

あの後は自室に戻り2日目の研修に備え、俺は包丁を研いだりし調整を行ったのち寝た。

 

そして、合宿2日目の朝も遠月学園の卒業生からの指定された課題のもと行われる。それはいいのだが...その卒業生というのが、少し問題ありまして...

 

 

「おはよう、79期卒業生の四宮だ。ここの課題は俺が持つことになった。したがって俺の提示する料理を作ってもらう。ルセットは行き渡ったか?」

 

なんと、課題の担当が俺の師匠である四宮先輩だった。各卒業生の課題の配置決めはコンピュータによる抽選で行われているらしく、俺はハズレくじである四宮先輩、もとい師匠の課題授業に割り当てられてしまった。

 

四宮先輩は卒業生の中で特に厳しく昨日だけでも30人以上も退学させたらしいとの噂も立っている。ああ...おっかない。気を引き締めていかないと退学させられるな。弟子だからといって贔屓などして課題通過などは決してありえない。むしろ厳しく採点するまであるな。四宮先輩ならやりかねない。

 

それよりも課題料理は何を作ればいいんだ?

 

「9種の野菜のテリーヌか...」

 

テリーヌというのはフランス料理の前菜メニューで色とりどりの野菜が使われ華やかな料理ではあるが、それぞれの野菜の下処理や火の入れ具合が違うため難しい品である。いかに9種の野菜の味を活かしまとめ上げることが重要となる。

 

「俺のルセットの中では割と簡単な料理を選んだ。もっと難しい料理の品の方が良かったか?」

 

(くそっ...)

 

(性格悪りぃ...マジ殴りてぇ...殴れないけど)

 

本当に性格が悪いな、四宮先輩は。他の生徒もイラッとしている。こんなんだから四宮先輩はフランスの店で従業員と揉めるんですよ....おっと、四宮先輩が俺の方を睨んでるな。顔にでも出ていたんだろうか...気をつけよう。

 

「ああ、それと...この課題においてチームは組まない。1人1品、仕上げてもらう。あと、調理中の情報交換と助言は禁止だ」

 

やっぱり、個人戦にしてきたか。四宮先輩は皆との協調があまり好まないからなぁ...助言と情報交換も禁止とは、かなり制限をつけてきたな。でも、それ以外では制限がないから良しとしますかね...

 

 

「食材は厨房後ろから任意で選び、使ってくれて構わない。それと、最後に助言を1つ。周りの料理人全員を敵だと思って、この課題を取り組むのが賢明だ。制限時間は今から3時間とする。それじゃあ....各自、始めろ!」

 

 

そう四宮先輩は1つの助言を言い放ったのち、課題が開始された。

 

周りの料理人を敵と思え...か。いかにも四宮先輩らしいというかなんというか...

 

「うおおっ...」

 

「俺も行きますかね...」

 

俺はそんな事を考えつつ...周りの生徒の後に続き、四宮先輩の課題に取りかかった。

 

とりあえず、俺はカリフラワーから選びにかかった。カリフラワーは酸化しやすいため早めにいいのを選ばないといけない。

 

「よし」

 

なんとか、人混みの中から状態のいいカリフラワーが手に入った。

後はキャベツやズッキーニなどの残り8種の野菜を慎重に選び、調理へと入った。

 

「えっと...ルセットを確認してっと...」

 

カリフラワーのつぼみと茎を切りつぼみの方をお湯で茹でる。同時にニンジンも塩を少量入れて茹で、キャベツも下ごしらえをし、その後はパプリカとズッキーニ、アスパラを弱めで炒める。そうする事で野菜に甘みが出るからだ。そして...型にサランラップを引き、下ごしらえをしたキャベツの葉を下に敷いて、その上にパプリカ、ズッキーニ、ヤングコーン、ニンジン、カリフラワー、オクラ、アスパラの順に乗せていく。最後にコンソメのゼリーを浸し、キャベツの葉で包み冷やす。

 

そして...時間いっぱいまで固めたところで型から出し、包丁で切り優しく皿に乗せて、見栄えを良くするためトマトとソースをテリーヌの外側に添えて、俺の9種の野菜のテリーヌが完成した。

 

 

俺はできた品を前の椅子でカッコよく座っている師匠であり課題の責任者である四宮先輩にサーブ(給仕)した。

 

 

「やっと、出来たか」

 

「ええ、なんとか」

 

「俺の弟子だからといって贔屓はしないからな」

 

「分かってますよ」

 

「早速だが、審査を開始する」パクっ

 

そう言って、四宮先輩は俺の作った9種の野菜のテリーヌを食べる。

 

「ふむ....」

 

「.........」

 

「.........」

 

しばし沈黙の時間が俺と四宮先輩の間に流れる。え?何?俺不合格なの?

 

「....比企谷八幡、合格だ」

 

「はい」

 

ふぅ....良かった。沈黙が長かったから不合格かと思ったぜ...

 

「この後の課題もちゃんとこなせよ。退学なんてことになったら俺は許さんぞ、師匠である俺の名前に傷をつけることになるからな」

 

「善処します」

 

「善処じゃダメだ。退学しないようにやるんだよ」

 

「うっす」

 

「下がっていいぞ」

 

四宮先輩にそう言われて下がる。次の審査は幸平だった。

 

「合格したみたいだな。比企谷」

 

「なんとかな。幸平も合格しろよ」

 

「当たり前だ」

 

幸平は俺と会話したのち、四宮先輩にサーブ(給仕)した。

 

「幸平創真、合格だ」

 

「よし!」

 

幸平創真も無事、合格した。その後も四宮先輩の合格、不合格の審査が続き...

 

「お願いします」

 

そして最後は田所恵の審査だけとなった。見た目としての評価では見栄えもよく合格ラインに達していると思う。味次第で決まる感じだな。

 

「ふぅ....田所恵。不合格、退学だ」

 

「え?」

 

「マジか」

 

しかし、田所恵は不合格という判断が四宮先輩から提示された。俺には不合格の要素が見当たらない感じがするんだが...

 

「これで終了だな。不合格の者は荷物をまとめてロビーに集合しろ」

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

「なんで、私は不合格なんでしょうか?理由を教えてくれませんか?」

 

「理由か。痛み始めてるカリフラワーを茹でる時にワインビネガーを田所は使ったな?」

 

「は、はい。漂白作用もあって見栄えもよく出来るし、野菜の甘みとビネガーの酸味をうまくマッチさせました。それでも不合格なんですか?」

 

「あ、ああ...そうだ。誰がルセットを変えていいと言った?このメニューは各野菜の甘みが作り上げるハーモニーを楽しむもんだ。ルセットの中に酸味を活かして調理するって書いてあったか?」

 

「書いてないです」

 

「それが、不合格の理由だ。田所が作った料理は俺の課した課題に沿わない、別の料理だ。納得したか?」

 

「......」

 

四宮先輩はそう言うが、田所は納得していない様子だ。もちろん俺も納得はしていない。別にルセットを変えていいとは言ってないが、変えることを禁止されてもいない。だから、田所が不合格になるのはおかしいと俺は思う。まぁ、田所の料理を食べてから決めよう...

 

「四宮先輩、少しいいですかね?」

 

「なんだ、八幡」

 

「ちょっと田所の作った料理を食べてもいいっすか?」

 

「構わない」

 

「田所、少し食べるぞ」

 

「う、うん」

 

俺は許可を取り田所の作った9種の野菜のテリーヌを食べる。普通に美味い。やはり、不合格になる理由がよく分からない。

 

上手く機転を利かし傷んだカリフラワーを良く見せようした結果、ルセットを変えることになった。いわゆる不可抗力が働いただけだ。それに傷んだカリフラワーを入れている四宮先輩にも落ち度があるのだ。

 

「美味いな」

 

「ほ、ほんと?」

 

「ああ、田所の不合格にする理由が分からない」

 

「なんだと?もう一回言ってみろ、八幡」

 

「何回でも言いますよ、田所を不合格にする理由が分からない」

 

初めてかもしれない。師匠である四宮先輩に意見を言うのは...だが、本当の事を言わないといけない気が俺はしてならなかったので、生意気ではあるが師匠である四宮先輩に楯を突いた。

 

「さっき、理由を言ったはずだが?」

 

「言いましたね。でも、俺はそれで納得しませんでした。四宮先輩にも落ち度がありましたので」

 

「ほぅ...いい度胸だ。俺の落ち度を言ってみろ」

 

「鮮度の悪い野菜を入れてた所、上手く機転を利かした点を考慮しない所ですね。後者は別にいいですけど、流石に前者はダメでしょ。鮮度の悪いものを使って料理をし、そのまま四宮先輩の提示したルセット通りに、それをお客さんに提供する。その後、どうなるか...あの勲章を取った四宮先輩なら分かりますよね?」

 

今では、それで社会問題になることが多々あるので気をつけなければいけないのだ。

 

「.......」

 

「なので、田所の不合格を取り消してもらってもいいっすか?」

 

「俺からもお願いしてもらっていいっすかね?不合格の取り消しの件」

 

「幸平...」

 

「幸平も俺に楯突くのか?」

 

「そうなりますかね。俺も比企谷の意見に賛成なんで」

 

「そうか、じゃあ八幡と幸平も退学にしようか」

 

「えっ!」

 

「俺たち2人も退学扱いとは横暴ですね」

 

「なんとでも言え。この決定は変わらない」

 

四宮先輩は折れないようだ。

 

「ひ、比企谷くん。私のことはいいから」

 

「全然、良くないだろ。田所は悔しくないのか?せっかく機転を利かして傷んだカリフラワーを使って最高の品を完成させ、サーブ(給仕)したのに、不合格なった。この理不尽な結果に満足できるのか?」

 

「で、できないよ。でも、しょうがないんだよ。これが結果なんだよ。私なんかの為に比企谷くんと幸平くんが退学になる必要なんてないんだよ。だから...私のことはもういいよ、比企谷くん。えへへ...」

 

田所は泣きながら、俺にそう訴える。俺は田所の涙を流すのを見て尚更、引き下がることはできないと思った。

 

「やっぱり、ダメだ。引き下がることはできない。俺に任せろ。絶対に田所を退学にはさせない」

 

「へっ?」

 

「四宮先輩、俺と食戟しませんか?四宮先輩が勝ったら俺だけ退学、俺が勝てば田所の不合格を取り消してくれますか?幸平はこの勝負、除外ということで」

 

「...面白い。いいだろう。その勝負、受けて立ってやる」

 

「比企谷...」

 

「俺が撒いた種だ。幸平までこの食戟に参加する必要はない」

 

「でもよ...まぁ、いいわ。比企谷に任せる。でも、俺もその勝負見届けるからな」

 

「分かった」

 

「マジかよ...四宮先輩と料理界のプリンスが食戟対決か」ヒソヒソ

 

「見ものだな...」ヒソヒソ

 

周りの生徒は四宮先輩と比企谷八幡の食戟対決が決まるとヒソヒソと話をしていた。その時である。

 

「面白い話をしているじゃないか?四宮、八幡くん」

 

ドアの前で佇む、堂島さんとその隣に乾先輩がいた。

 

 

「堂島さん、居たんですか?」

 

「さっきな。食戟をやるというなら、今日の課題を全て終えてから俺が立ち会いのもと非公式で執り行おう。いいな、四宮、八幡くん」

 

「はい」

 

「大丈夫ですよ、ムッシュ堂島」

 

「それじゃあ、八幡くん。今日の課題を終えた後にホテルの別館に来たまえ」

 

そして俺は堂島さんの立ち会いのもと師匠である四宮先輩と、今日の課題を全て終えた後に非公式の食戟を行うこととなった。

 

 

 

 

...続く

 

 

 




ここまで読んでくれた方々ありがとうございます。

今回は原作改変を行い、食戟対決は師匠の四宮先輩VS弟子の比企谷八幡の2人としました。2人の仲違いは日常茶飯事みたいなものなので関係崩壊とはなりませんのでご安心ください。

そしてら次回は2人の食戟対決となります。

それでは、次回もよろしくお願い致します。

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