不死の少年と死相の見える少女 作:睡眠欲求者
太陽の光以外の光源がない薄暗い室内で、コンクリート剥き出しの柱に背を預け、腕を組んで待機する。蘭豹が言っていた開始ブザーが鳴って、3分ほど過ぎていた。目を閉じて、耳を澄ませると、銃声がする。結構早く始まったようだ。ちなみに、俺は動くつもりはない。イ・ウーで鍛えた俺にとって脅威になるやつなんてここにはいないと思っている。
故に、敵が減るまで待つことにした。別に、面倒くさくなったというわけではない、必要がないと考えただけだ。そんなことを考えていると、後ろから気配を感じた。腕組みを解き、腰に掛けてあったリボルバーを抜く。
「誰だ!!!」
柱越しに、叫ぶ。すると、ハハハハハハハという笑い声が聞こえてくる。
「俺に、気づくのか。ただ者ではないな。今年は、粒ぞろいらしいな」
「あんた、受験生じゃないな?教師か」
「ほう、素晴らしいな。どうしてそう思った?」
「簡単な推理だぞ、あんたのスニーキングは見事だった。だけど、スニーキングをしておきながら、仕掛けてこずに様子見をしていた。それだけなら、いいが加えてさっきの発言だ。教師がいるなんてのは誰でもわかる」
「良い推理だ。確かに、教師陣には受験生に対する攻撃許可が出ている。なんでも、『想定外の事態による危機管理能力を試す』という名目でな。まあ、実際はただ監視するだけの役割を退屈に感じた試験官たちの暇つぶしなんだがね。」
「質の悪い試験管だ。本当に、武偵高の教師というのはクレイジーだ」
「まあ、そういうな。こっちも退屈なんだ」
取り合いず、やるだけやるか。引き金を引いて、打つ。予備動作なしの早打ちを、紙一重で躱した。・・・結構やるな。
「ハハハハハハハハハハ、いい早打ちだ。だが、すでに手に持っている拳銃を気にしないわけないな」
「ああ、だからそっちの拳銃は囮・・・本命は」
「なッッッ」
教官の目の前に、接近して拳を放つ。教官は、後ろに飛んで回避を試みるがかなわない。
「何?」
もしもの時のために、仕掛けておいたワイヤーに足を取られる。教官は、バランスを崩すが、空中でバク転をして、ナイフでワイヤーを解く。けど・・・想定済みだ。
「読んでたよ・・・終わりだ」
俺の、拳が教官の顎にめり込んだ。
生徒を倒しながら階段を上がり、最上階に着くと、そこには生徒3人、試験管が4人が倒れていた。
そして、数人の受験生や大人が倒れている中で悠然と立ち尽くす、少年の姿が視界に映った。
・・・向こうは、俺に気づいてない。仕掛けるなら今・・・
リボルバ―を発砲する。
弾丸が、少年に迫り弾かれた。
「ッッッッ・・・・・・」
弾きやがった・・・銃弾で銃弾をはじいたのかよ・・・
「いきなり奇襲かい?」
「・・・卑怯だとでもいうのか」
「いや思わないね。それも戦略の一つのはずだし・・・」
「お前、名は?」
「遠山キンジ。君の名は?」
「ノアだ。悪いが、フルネームでは名乗れない・・・遠山キンジだったな」
「ああ、そうだよ」
「一応、警告だ。これから仕掛けるから、簡単に終わるなよ」
そう言って、シャーロックが掛けた封印を少しだけを解く。体に力が満ちるのを感じる・・・さあ、行こうか。
一瞬で距離を詰める。そして、リボルバーを至近距離で打つ。
「ッッッッッッ」
キンジは、紙一重で避けた。
お返しとばかりに、銃口を向ける。だが、この時を待っていたんだ。
キンジの銃を掴み額に当てる。
「なッッッッッッ」
キンジの動きが、驚きによって硬直したのを見て価値を確信する。相手の銃口を額に当てるなんて正気の沙汰じゃない。普通は、出来ないし、そんなことをされたら武偵である以上銃口をそらしてしまうだろう。それは、今回のキンジのように武偵かつ相手が強ければ強いほど顕著だ・・・死なない俺だからこそできた戦い方なのだ。
「俺の勝ちだ、キンジ」
すれ違いざまに、顔を掴んで地面にたたきつける。多少反射で腕で頭をかばい、ダイレクトで頭は打たなかったが、下はコンクリートだ結構なダメージを叩きつけられるそして・・・空中で回転し蹴れをキンジの体に叩き込んだ。
「がぁ・・・・・・」
うめき声をあげて、たたきつけられたキンジを見て勝利を確信したのだが・・・
「ま、だ、まだだ!」
手元のナイフを投擲してきた。やばい躱すのが間に合わない・・・
ザシュ――――――。
鮮血が舞った。
「ぐッッッッ・・・」
バックステップで距離を取る。あそこから反撃とは、タフだな・・・これは厳しそうだ。
油断していたのもあって、左腕をやられてしまった。俺は、不死だが傷がすぐに再生するような化け物みたいな体はしていないのだ・・・傷の直りは確かに早いが数分で治ったりしない。要するに、片腕が潰されて、リボルバーも吹っ飛ばされてピンチなわけだ。
「強いなキンジ・・・」
「そっちこそ、クレージーな戦い方だね。完全に意表を突かれたぞ。おかげで、まともに受けてしまって体がきついよ」
「じゃあ、ここらへんで終わりにしない?」
「次で決めるってことかい?」
「そうだ、次の攻防で終わりにしよう」