相剋のスラスト   作:雨風雷光

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~Light Raid~ part2-ユメノカタチ-

ー第一章ーハジマリノコエー

ここはどこだろうか……また夢か?

辺りを見渡しているとどこからか話し声が聞こえた。

少し高い丘の上、そこに三つの影が見えた。近くに行こうと思ったがなぜかいくら歩いても前に進まない。というより近づけない。なのでここから隠れて様子を伺うことにした。

「見える?あれ」

「あぁ、よく見える。我らの育った島」

「俺たちの島が燃え尽きていくのが」

僕は不思議とその声を初めて聞いた気はしなかった。

そしてその影はまた会話を続ける。

「アイツ、大丈夫だろうか……」

「心配いらんだろう。すぐに助けを連れてくる」

「これで私たちも助かるのね。さっきの洞窟も底が抜けて海に繋がってしまうなんて」

アイツ……何故かは分からないがこの影が言っている(アイツ)というのは僕のことだと思ってしまう。それにこの影達のこともよく、分かってしまうのだ。どこか懐かしい感じがあるその影。あれは恐らく僕の……

ーーーー

<ドンドンドン!

ドアを叩く音で目が覚める。

見慣れた天井、ふかふかの布団。そして歴代の提督だろうか?その写真がズラリと強化ガラスのケースに並んでいる。そうだ、ここはブイン基地の北東支部だった……。

考え事をしているとまたドアを叩かれた。そして若い男の声が聞こえてきた。

「光藤さん!みんな訓練してますよ!早く起きてください!」

「えっ!?あっ!こんな時間!ごめん今行くよ!」

 

ーーマルキューマルマルーー演習場ーー

演習場に行くと既に訓練が始まっていた。

今日は模擬戦をするとのことだったので一対一で順番に戦っていくものだった。すでに一周終え二周目に突入していた。そして今は二周目二回戦式凪雪恵と夜桜月読。

「夜桜さん。よろしくお願いいたします」

「よ、よろしく」(雪風なんだけど雰囲気は浜風みたいな感じだな……)

 

審判は主審一人副審二人で戦登場となっているステージから落ちると場外判定となりステージに残っている方が勝利となる。

主審は雨風くん、副審は霧衛さんと番柄さん。

「時間は四分。では、始め!」

「たぁっ!」

夜桜が先手をきった。

夜桜くんはさまざまな斬撃を使って戦う。

「風神斬!」

これで雪恵の敗北が確定……と思いきや雪恵は踊るようにステップをとりながらあっさりと受け流す。そしてそのまま夜桜に連撃を叩き込む。速度はそこまで早いわけではないが手数が多く威力が高い。夜桜は防戦一方になってしまった。

「わっわわわ!」

「ほっ。やっ。たぁっ!」

「ぉわっ!?」

雪恵に押され場外落ちた夜桜。そしてステージから雪恵が見下ろし笑顔で手を差し伸べた。

「お疲れ様でした夜桜さん。でも一発ずつよりは少しでも手数を増やした方がいいですよ?」

「あ、あははは。……強いんだね……」

「お兄様直伝ですので」

霧衛直伝なので威力が高いのは当たり前みたいに皆は見ていた。そのあと雨風と春日、翔鶴と扶桑、僕と山城、霧衛と蒼井、天津風と大鳳、番柄と叢雲、紫織とレン、加賀と瑞鳳といった組み合わせで回してすぐに日がくれた。僕らは皆で風呂に向かった。が。

 

「あれ?提督さん」

由良が暖簾をくぐって出てきた。

「由良。どうして男湯から……?」

「あ、女湯のほうシャワーとか色々壊れちゃってて」

「何があったんだ」

「実は演習で流れ弾が出ちゃって……それが落ちたみたい」

「ほーう。由良は風呂上がりか?」

「ううん。中を覗いただけですよ。提督さんは今からですか?」

「ああ、皆でな。しかしどうしたもんか……」

雨風が悩んでいると由良が大胆にも「背中を流すから入りましょ?ね?」と切り出した。もちろん僕は遠慮しようかと思ったんだけど。番柄さんと雨風くんはあっさりOK。レンさんと夜桜くんはお任せするって。艦娘は何故か誰も反対しないっていう結果に……。

あ、タオルは着けて入ることになったけど。

「くーっ!運動後はこれに限るな!」

「雨風、タオルはだけそうよ……?」

「大丈夫、下は水着ですから」

「兄様いつの間に……」

「あ、提督さん、背中流すからこっち来てね、ね?」

「おう、分かった」

「提督、泡ながすよ?」

「うん、ありがとう瑞鳳」

「夜桜さん。肩を揉んでくださいますか?凝ってしまって」

「うん、提督に頼むんだね……ま、いいけどさ」

「んぁっ……」

「加賀さん!なんて声出すの!?」

「ご、ごめんなさい……気持ちよかったので……///」

「私の髪洗いにくくない?長いから……」

「ううん。平気だよ。サラサラしてて指が通るから」

「大鳳、なんで落ち込みぎみなの……?」

「提督、回りを見て察してください……」

「あー。うん……分かった……」

「達哉さん、眠いのでしたらこちらに……」

「ごめん翔鶴さん、少しお願い……」

「こっち見たら刺すわよ!」

「見ねぇよ……」

「兄さん、石鹸をとってくださいますか?」

「ほい」

「ありがとうございます」

「提督ー桶どこー?」

「まって、今お湯掛けるから」

皆でゆったりと風呂に浸かった。そしてそれぞれ部屋に戻るが途中で会議室に寄ることにした。一応作戦の整理をすることに。

「少し作戦を変更します。今のところの装備では歯が立たない可能性が充分にあり得ます。なので明日、ヒトサンサンマルより装備の試験をします。なのでそれまでには起きてきてください。以上です。他は特に変更なし、状況によって考えます」

「あ、今日は会議室で寝てください。明日出発なので。じゃあ船を持ってきますね。雨風、山城行くわよ」

「はい姉様。ではみなさんおやすみなさい」

「しっかりと休息をとるようにしてくださいね。では」

そう言って雨風たち3人は本部から船を引っ張ってくるとのことで会議室を後にした。それと霧衛から聞いた話ではここのイスを倒すとベッドになるよう。それぞれの机の下には毛布があったので皆それを被って眠りについた。少し話し声も聞こえたがすぐに収まり寝息にかわった。僕も目を瞑り眠るのだった。

ー第二章ーナガイユメー

「……ガ……ゆ……」

誰かに呼ばれている。聞いたことのある声。懐かしい声。この声は……。

「ユウガ!」

「えっ!?あ……さ……(サキ)……?」

「会えてウレシイわ……」

サキは僕に駆け寄り抱きついた。僕も軽く背中を叩く。

すると他に二人の声が聞こえてくる。

「再会してイチャつくなよ。なにしてんだ」

「ふ。嫉妬かカギナ?我には分からんな」

「誰が嫉妬するってぇ?なぁツルギ」

カギナとツルギ、いずれも僕と共に逃げていた仲間だ。

この三人はどうやらあのあと島から逃げられたようだ。良かった、心底良かったと思う。救助隊が見つけられなかったのも恐らく僕より先に逃げたからだろう。

「三人とも無事だったのか……良かった」

嬉しくてホッとしたが三人は笑顔を見せない。理由を聞こうとしたとたんに景色が変わる。そこは深海棲艦の巣窟。周りはすべて黒く染まっている。そしてサキは黒の端に居座る白い人影に語りかける。

「電波はどう?とれた?」

「アァ、トレタワ。コレヲ使エバヤツラ二嘘ガ届クナ…」

「そう、上出来だわ」

何をしているんだ……?嘘が届く?馬鹿なことを言わないでくれ。電波を乗っとる。そんなこと……

通信を使っていたその白い影、「姫」は声質を変え「ワレ、目的ヲ確認デキズ。コレヨリ帰投スル」と言った。

それら会議室で聞いたあの通信と全く同じ。書き換えたのはコイツらか!しかしなぜサキたちが……

「っ!?」

目が覚めた。しかしまだ眠い。時刻はマルヒトサンマル。港に大きな影が見える。恐らくあれに乗っていくのだろう。汗をかいてしまったので風呂に向かう。しかし宛もなく別の方角へ進んでいた。

「あれ……?工廠?いや倉庫か……」

気付くとブイン基地の倉庫に居た。

カツンカツン。足音が聞こえる。真後ろだ。僕は振り返る。

「そんな……どうして……?」

そこには黒崎サキ、金木カギナ、倉形ツルギが居た。僕は防衛のために腰についていたダガー構えた。

「寄るな!僕は君たちとは闘いたくない!」

サキが微笑む。

「何を甘いことを言っているの?戦わないわよ。貴方が断らなければ……ね?」

「どうして深海棲艦と共に居たんだ!アイツらは!」

「アイツらは俺たちを助けてくれた。恩人たちだ……」

「我らはあの者たちと手を組んだのだ。ユウガ、君も来い、こちらはイゴコチガイイ……」

「くっ……!」

後ろに下がってしまった。直後、腹部に強烈な衝撃が走った。目の前にはツルギがいる。膝をあげている。蹴られたようだ。そしてツルギを飛び越えてきたカギナに首を捕まれる。僕一人を軽々と宙に浮かす。カギナはそのまま僕を殴る。

「う……がっ……!」(速い!しかも力が強くなってる…!)

「力をまともに使えない…アワレナヤツ……!」

「だからおまエハヨワイノダ……」

二人が構える。僕はやられることを覚悟した。しかし

「止めろ!そこまでにしなさい」

サキに止められ二人は後ろに下がる。

サキは僕に近付き僕の顔を掴む。

「ねぇ?強いでしょォ?」

三人を黒い影が包む。顔が、体が見えない。

サキは僕に何かを差し出してきた。

「ユウガ……。私はアナタを迎えにキタノ。ダから、貴方も私たちみたいに……」

サキを包む影は形を持った。それはまるで[あの時]の強大な「姫」のような。

    「アナタモチカラニオボレマショウ?」

僕は怖かった。とてもとても怖かった。でもここで怖がってては何もできない。僕はサキの手に握られた<ソレ>を掴み取る。

「ふざけるな!僕は力になんて呑まれない!僕は……お前達とは違う!」

……目を開けると見慣れた天井が見えた。周りは誰も起きていない。外もまだ暗く大きな影が一つ見えるだけ。丁度到着したようであった。と、ドアが開いた。

「あれ?光藤さん。まだ起きてたんですか?」

「今起きたとこ……お疲れ様」

「ええ、おつ、ありがとです。どうしたんですか?まだ一時間経ってませんよ」

「なんでも…………いや、雨風くん」

「はい?」

「朝早くからで悪いけど会議を開いてもらってもいいかな?」

「分かりました。ではマルハチサンマル。食事をしながらでも」

「ありがとう。ん?なんだこれ」

僕は手に持っていた何かに気づいた。

ーマルハチサンマルー

「みなさん、朝早くからですみません。ですが今回は大事なことを伝えなければなりません」

僕が真ん中に座り話を続ける。

「あの島、カリラ島は僕にとっての因縁のある島です。提督になる前に海軍の任務で停泊していたところで六年前、深海棲艦によって壊滅させられました。そして地図からは消えたのです。しかし今回出てきたのは僕たちに関係がある可能性が高いです。僕は夢を見ました。その内容の通りだと僕たちは故意的に電波を妨害された」

そう言える根拠は夢で見た中であったがために上手くは説明できなかったが提督たちは電波を妨害されたことに関してはそう思っていたようで作戦に賛同してくれた。

それと……僕たちは島に行くまでに敵には会わない。島の周りは何もないただの海ということが分かっている。だからこそ大型船で向かうのだ。

あの島に。あの思い出の海に。

     ー作戦開始まであとー2日ー

ー第三章ーカナシミノウミー

僕たちは船に乗り込みブイン基地を出発した。

船の中で装備の試験を行うことに。

「よし。これなら軽くていいな。強度も抜群だ」

「お?雨風、それ……」

「おお、見ろよ春日!これが今回の武器!俺専用の強化型軽槍<マガツライコウ>だ!特に先端の赤い刀身……最高だ…。二つに分けて使うこともできるぜ…お前のは?」

「俺はNeoGrandMk.Ⅱだ。トリガーの部分取り外せばハンドガンとしても使えるタイプのライフル。重さはあれだが使いやすさはピカイチだ」

雨風の武器は二槍一体の槍。基本的には二本に分けて戦う。この形状なら二刀流のようにも扱える。

春日の武器は状況によって使い分ける合成銃で、深海棲艦の装甲を貫く弾丸を詰めている。スナイパー型の春日からはもってこいの武器である。

「んじゃ、見て回ってくる」

「おう」

雨風は春日の元を離れ船内を歩いていく。

「番柄さん」

「あ、雨風くん」

「雨風さん」

番柄と翔鶴の元に来た雨風。二人はハンドガンを使っていた。翔鶴は艤装強化用の装備であるが、番柄は<ケルマニクス>ともう一つのハンドガン<翔子>を装備に決めていた。普通のハンドガンのようではあるが<翔子>は自己強化のためにも使える。<ケルマニクス>は攻撃のみなのだが、使用者が[番柄達哉]の時のみ追尾弾、爆裂弾、氷結弾など様々な弾丸があるため使い方には困らない。

「に、しても。どうして翔鶴までハンドガン?」

「明石さんにお願いしてもう一つ、提督と対になるのを作って頂いたんです。大破したときに戦えないのでは意味がないので。それと……」

翔鶴は番柄を見つめる。番柄は少し穏やかに微笑んだ。

そして翔鶴は装備を強く握り締めその<名>を付ける。

「哉守(かなかみ)……達哉さん……この翔鶴、パートナーとして貴方を必ずお守りします」

そう言って番柄の手を優しく握った。

「翔鶴さん……」(手を握り返す)

雨風はそれを見てゆっくりとその場を離れ、また歩き始めた。そうして次に向かったのは剣術三人集の霧衛、葉月、夜桜の元。どうやら技の形を覚えているようだ。指南役は霧衛、葉月と夜桜がそれを真似する。

「いいか、力を入れて大きく振りかぶる。ただそれだけだ」

「やぁっ!」

「はっ!」

二人は霧衛の言う通りに刀を大きく振った。斬撃が飛ぶ、そして着弾地点で効果が出る模様。葉月は斬撃の当たったその部分が凍り付いた。霧衛はあまり使わないが雪恵の得意技でもある「氷結斬」に酷似している。一方夜桜の方は爆発が起こったために霧衛の「爆連斬」の下位互換「列破斬」と思われる。一番の得意技ではないので仕方はないかと考えた。

「葉月はよしとして月読は及第点だな。それに力を抑えたとはいえずいぶん弱いな?」

「うぐっ!?だ、だって僕は元々司令系だし……」

「夜桜くん。それは言い訳ですよ。私だって本来なら司令系ですので」

「…………」(*´・ω・)ショボン

分かりやすくしょんぼりする夜桜。見ていて飽きないのではあるのだけれど……。僕からしたら敵わない相手だとは思える。と、こちらにも来たようだ。

雨風は近くに来て光藤に声を掛けた。

「光藤さんは武器の方決まりました?」

「いや、まったく。ってか雨風くんの槍は随分禍禍しいね……」

先程見たよりもかなり違って見える。近くで見てみるとメタリックな赤色で所々青く光るラインが入っている。

先端の刃は赫灼だ。

「そういえば光藤さん。それは?」

雨風は光藤の側にあるソレを指差す。

「あ、これ?なんか分からないけど持ってたんだよね……名前は分から……あれ?」

不思議と。名前が浮かんできた。これは絆を示すもの。光を放つもの。これは

「……<イーヴィルレイ>……」

「イーヴィルレイ……ですか。……うん。[悪である光]……かな?」

「悪……ね」

どうしてかは分からないけど名前を知っていた。

僕はこれがなんなのかも分からなかった。形は台形に近いような半長方形のような不思議な形。雨風くんは僕と少し話をしたあとまた船内を歩き始めた。次に向かったのは扶桑さんたちから格闘を教えてもらっていた蒼井君のところ。

「はっ!たあっ!……山城さんどうですか?」

「さっきよりは良いわ。47点。減点は軸がぶれること、攻撃する際少し力が抜ける、背後と下半身のガードが無いこと、あと狙いが定まってなくてバラバラに拳を撃ち込んでいるわ。威力はなかなか良い方よ」

「結構直すところありますね……」

「頑張って、筋はいいから♪」

天津風はボーッと見ている。

「よっ。優はどうだ?」

「あら、雨風さん。まだ普通かしら……でもあの人に危険が及ぶなんて……心配だわ」

「……それはすまんな」

雨風は天津風に頭を下げる。

「あっ。別に貴方を攻めている訳じゃ……」

「しかし原因は俺にあるようなものだ。だから俺も全力で守らせてもらう。怪我はさせんさ」

「……ええ。そこもよろしくお願いするわ……」

「あぁ。では、他の様子も見なければならないから」

「お疲れ様。貴方も無理はしないでね」

雨風は手を振りながらその場を去っていった。

ーーー二時間後ーーー

「あとしばらくで上陸します。みなさん準備をしておいてください」

僕たちは島に上陸するための準備を始める。

     決着をつける

      アイツ等は僕が止める

僕がやらなければならないんだ。

「…光藤さん?」

「ううん。なんでもない。さあ、行こう!」

「はい。この大鳳、ついていきます!」

       上陸まであと12時間

-to be continue ?-

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