一戦目 再生-Playback-
子供の頃、ある夢を見た。
それは自分がヒーローになって人々を救う。たしかそんな内容だった。
その行いを繰り返すことでやがて最後には……そこで目が覚めたので、先のことは覚えていない。
その時から僕は、俺はヒーローに強い憧れを抱くようになった。
そして中学校入学と同時にその夢が叶った。
そこからおよそ1年ものあいだ脅威なる存在から人々を守るために戦い抜き、
その中でもある時には仲間が増えると協力や共闘し、またある時には敵対や死別などで減り、
そんな出来事を繰り返しながらも次第に強くなり、戦いは最終局面へ突入し__________
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朝日が昇ると共に目覚まし時計が起こしにかかるので眠いながらも仕方なく止める。あくびをしながらも身支度を整え、台所へ行き朝食の準備。食べ始める頃には身支度を終えた妹が「おはよう」と言いながら座り、「いただきます」の一言のあとに食事開始。
「うん、美味い」
「お、それは良かった。朝起きて作った甲斐があったよ」
「そっか、出来の良い兄を持って妹は本当に嬉しいよ」
「おいおい何様のつもりだよ……。まあいいや。成美、今年から高校生だな!」
「そうだね」
「あれ、なんか不安そうだな」
「そりゃそうだよ。いままで女子校だったのに昨日から共学だよ!私兄さん以外の男の人と話したことないし不安だらけだよ……」
「そっか、そん時は俺がお前を守ってやるさ!」
「はいはいシスコン発言やめましょうねー」
「うっ、ついに俺もシスコン認定されちまうとは……っ!」
「当たり前でしょ、そんな痛くて寒い台詞妹に吐くんだから」
「うぐっ、返せる言葉もないなこれ……」
「でも、兄さんの言うことに嘘がないから。嬉しいよ私」
「うん?なんか言った?」
「何でもない!ほら早く食べないと遅刻しちゃうよっ!」
「お、おうそうだな!」
何気ない会話をしながらも朝食を終えるとカバンを持って妹と共に家を出た。
あ、言い忘れたことがあるんだが俺は『川内光流(せんだいみつる)』。今年から霧赦学園(ぎりしゃがくえん)の高校三年生で大学進学か高卒で就職か、とにかく進路に悩む満17歳。それで妹の名は『川内成美(せんだいなるみ)』、去年度まで遠いところにある女子小学校に通っており、物覚えの良さから夏ごろまでイギリスで留学していたこともあって英語はペラペラ。今年から中学生で通学先はうちの高校が附属する中学校。
「おはよう!」
「お、おはよう美久!」
「美久ねえおはよう」
道中で短いツインテールな髪形をした一人の女の子がいたのでその子も紹介しよう。『松島美久(まつしまみく)』は小さいころから家が隣同士の幼馴染で困ったことがあったらいつでもそばにいる。親が留守の時はいつも夕食を作りに行くのでその話を聴いた母さんがよく茶化してくる。この歳までいくとホント恥ずかしいんだよなぁ。
「あ、成美ちゃん!今日から高校デビューだね!おめでとう!」
「入学式はこのあとだよ。でもありがと」
「いえいえ!友達増えるといいねっ!」
「ええ、出来れば男子とも馴染めるといいな」
「そうだね、今まで女子校だったから男子は初めてだよね」
「ああ、なんか変なことされたらすぐ俺に言ってくれよ」
「まあ、よっぽどのことがない限り大丈夫よ」
「そっか。なら安心だね、光流」
妹のことが心配になりながらも三人で登校する日々が今日から始まる………かも知れない。
「お、光流に美久!」
「おはよう恭」
「おはよう恭くん」
『角田恭(かくだきょう)』とは同学年でこの学校に入ってからの親友。フランクけっこうおっちょこちょいなところもあるけどこいつといて退屈することなんて何もない、それほど楽しい。
「新学期から一緒に登校なんて、やっぱ仲いいなお前ら!」
「まあ幼馴染だしな」
「そのまま付き合っちゃえばいいのに」
「なっ!」
「ふぇっ!」
ちょっと恭さん!その発言は卑怯でしょ!たしかに昔から一緒にいるけど付き合う……なんてそんなこと、出来ないことはないかもしれない。けどもしかしたら美久には好きな人がいるかもしれないし、いざ告ったあとにただ振られるならまだしもそこから関係が終わる。なんてことになったら堪ったもんじゃないよ!
だから彼女(ここではあくまで三人称、ここ重要!)とはそのままの関係でいたいのだ。
「はぁぁぁぁぁ………うぅ…」
その隣では美久が狼狽えているが冷やかされて恥ずかしがっているんだろう。きっとそうだ。
「なんて冗談はおいといて、今日クラス替えの発表だから教室行く前に見てこうぜっ」
「おう、そうだな」
「……うん、ていうかそうしなきゃ分からないし」
「あはは、たしかに」
冗談だったのかよ、と思いながら会話した通りに新クラスの表を確認しに行くと、4組の欄に俺ら三人の名前が載ってある。ということは今年も同じ、しかも三年連続であることが発覚し大喜び。その盛り上がりは教室でも収まることを知らない。
「いやぁこれはまさに奇跡ですなぁ」
「うん、こんなこと滅多にないしね」
「ああ、今回もお前らと一緒のクラスになれてホントに良かったっ!」
「おう!ってわけで改めて今年度もよろしくな!」
「ああ!」「うん!」
「はーいみんなー、チャイムがなりますからそろそろ席に着いてくださいネ~」
4組担任の『太白(タイ・バイ)』先生が入るとチャイムが鳴り、先ほどまで喋ってた人たちや俺らも自分の席に戻る。ちなみに彼女は中国出身で容姿端麗でまだ覚えたてとはいえ日本語も甘く丁寧なので性別はおろか生徒教師問わず人気だ。
入学式と並行して行われた始業式も終わり放課後になると、机の中の荷物をカバンに入れてある場所へ向かう。場所は体育館近くの部室棟の二階。俺が所属しているのは『考古学部』。俺が中学の方に入った時から存在しており、誰がいつ何のために作った部なのか分からない。しかし部室と表札は辛うじて残ってたものの当然誰も入っておらず廃部寸前だったために一応顧問であり、5年前になんらかの事故に巻き込まれて昏睡状態に陥り、現在は休職中の白石先生にも土下座で頼まれたので、入学してから特に何もすることもなかったので仕方なく入部し、再建と同時に部長になった。
活動内容でいえば考古学について研究するといったもので部員は俺を含め5名で美久が副部長。
「お疲れ様でーす」
「お、沙知に戒疾!」
「お前らも来たか」
ポニーテールの女子は『登米沙知(とよまさち)』、その隣にいる男子は『塩竃戒疾(しおがまかいと)』。二人とも一つ下の後輩だ。
「2年生の方はどうだった?」
「そうですねぇ、今年も戒疾と一緒でした!」
「お、おう。それはよかったな」
「いや良くないですよ。今年もこいつにパシられるって思うと……」
「そう言ってホントは私に相手されて嬉しいんでしょ?分かる、分かるよ。もう10年も一緒だもんねー」
「たしかに付き合いは長いよ。でも俺そんなこと思ってないよ。むしろ…」
「むしろ、何?」
「え」
「ねえむしろ何て言いたいのかなぁ?ねえ答えてよ答えなさいよ戒疾くぅ~ん?」
「……いいえ、ホントは嬉しいです」
「だよねだよねそうだよねー。もう戒疾ってばホントにシャイなんだから~」
二人は小学校の時から一緒であり、住んでいる地域がここより少し遠いようでこの学校に来たのは高校の時から。それで入部のきっかけは歴史オタクで考古学にも興味がある戒疾がこの部の存在を知り、同じ理由で沙知も希望したのが以上の経緯。余談だが彼は世界史派で彼女は日本史派。
まあそれは置いとくとしてこの二人の会話だが見ていて身の毛もよだつ。特に沙知、いつも脅迫しているのでされている戒疾にとっては気の毒である。それでも彼女を嫌ったりしないあたり優しい。よく愛想つかさないなといつも思う。
「まあだべるのは後にして、みんな揃ったことだしそろそろ始めよう」
こうして今日も部活が始まる。内容はこのあと始まる会議で分かる。
「ところで明日からだよな、部活勧誘期間」
「ああ、そうだな」
確認しあう恭と俺。そのあとに沙知、美久、戒疾が発言。
「私たちは何かしなくて良いんですか?」
「新入部員も欲しいところだし、やらないよりはやった方がいいかも!」
「そうですね。でも今年は何人入るんでしょうか?」
質問が来ると恭から口を開く。
「それなんだけど、そもそも部員が増えたのは設立してから……」
「私たちが入った時ですよね」
「うん、だからあまり期待できないかも……」
沙知の発言を聞いて思わず落胆する美久。
「おいおい副部長がそんなこといっていいのか?」
「副部長っていっても白石先生が勝手に決めたことだし……」
「あの時は無茶苦茶だったなぁ」
「あの時に限らず、な」
一応古株な俺らは当時を懐かしむ。
「えー、顧問の先生ってそういう」
「まあ僕たちは知らなくて当然だよ。なんせいない時に入ったんだしさ」
「そうだね。でも顧問もなしによくなくなりませんでしたねこの部」
不思議そうに思う新参者の沙知と戒疾。
「ああ、太先生が代理で顧問を引き受けてくれたからね」
「うんうん!あの時は助かったよ~」
「美人だし声も可愛いし、今年はあの人が担任になってくれて俺幸せだな~」
「あはは……ところで盛り上がってるところ悪いんだが、大分話が脱線してないか」
「「「「あ」」」」
とまあいつもこんな感じ。基本的には雑談して時間を過ごすので考古学とは何ぞやって思うところもある。けど俺はこういうのも嫌いじゃない。仲間と一緒に過ごしている感覚になれるのだから。
結局何も決まらないまま部活は終わり、家が隣同士な美久との下校時間。
「今日もいつもどおりだったね」
「ああ、何ともいえない感じだった」
「やっぱりこの部って人気ないね……」
「そもそも考古学自体マニアックな上に物好きでもない限り誰も興味示さないだろう」
「そうだよね……どうしたら部員増えるんだろう」
「うーん、一つ思いつくとすればPRすること」
「つまり考古学の良いところを見つけそれを勧誘の時に売り出す!」
「そうだよ!これを今日の話し合いで言えたら……」
「あぁ…そう考えると惜しかったね」
「まあいいや。あとでグループレインで伝えよう」
「そうだね!やり方はあまりよろしくないかもだけどそれが手っ取り早いね!」
「よし、そうと決まったら早速……」
ブレザーのポケットから携帯を取り出し、RAINというアプリを開こうとした瞬間。
「______________あれ?」
美久が止まったまま動かない。それだけじゃなく通行人や車も止まっており、音も一切聞こえない。つまり時が止まったということか。突然起きたことに焦りを隠せず脳内で錯乱していたところで、
《______________ぇる?》
「え?」
《______________聞こえる?》
声だ、女の子の声がした。正直摩訶不思議すぎて何が何だか分からない。そう取り乱しながらも一旦深呼吸し、少し落ち着いたところでその声に答えることにした。
「あ……ああ、聞こえる。聞こえてる!君は一体誰なんだ!」
《そう、そうなの。まだ忘れてるみたいね≫
「え、それってどういう……」
《今から私の言うことに従って!そのあとに教えるわ!》
「そんな!急に言われても……」
《いいから来て!これから世界の平和を脅かす災いが迫ってるの!だからお願いっ!》
世界の平和を脅かす災いか。時間停止にテレパシーといった本来ならあり得ないだろう現象が起きているのが現状なのだからそれも嘘じゃないんだろう。
「………分かった。俺は君の言うことを信じる。だから案内してくれっ!」
《ありがとう。それじゃあ!》
少女の声に導かれ、辿り着いた先はある商店街。多少買い物客で溢れてはいるが皆止まったまま。その先に幼稚園児くらいの小さな女の子がこちらに目を向けながら佇んでいた。それからしばらくするとその少女だけが動きだし、口を開いたので会話スタート。
「ごきげんよう、よく来たわね」
「君が、俺を読んだのか」
「そうよ」
「なあ教えてくれ、君は誰なんだ!そして今何が起きてるんだ!頼むから教えてくれ!」
「………本当に忘れてしまったのね、何もかも」
「忘れたって一体……」
「まあ、無理もないものね。私もあのあとしばらく眠っていたのだから」
話が全く見えてこない。忘れてしまった?眠っていた?この子は何が言いたいのか俺には分からない。多分俺じゃなくても分からない。いくら子供だからといえどやはり理解に苦しんではいたがそれでもなお対話を続ける。
「えっと、つまり何が言いたいんだ?」
「あなたは過去に戦士として戦い、今はその記憶をなくしているのよ」
「……戦士?」
「ええ、空想戦士(ファンシーファイター)として霊魔と呼ばれる災いから人々を救ってきた。それがあなたの過去であり、本来持つべきはずの記憶ということよ」
強引な解釈をするならば「昔は小さいころからの憧れだったヒーローになっていたのがいつの間にその記憶を失くしていた」ということか。
「一つ聞いていいか?」
「何?」
「その、空想戦士ってなんだ?」
「世の理を乱す霊魔からこの世に住まう人々を守るために戦う戦士のことよ」
「そう……なのか。ところで眠ってたっていうのは」
「あなたは最後の戦いを終えたあと、これで解決されるはずだった。けれど……」
「けれど?」
「………ごめんなさい。これはまだ話せないわ」
「っ!何でだよ!?」
「この時間停止は特殊能力によって起こっているもの。そろそろそれが切れるわ」
「切れたらどうなるんだ?」
「あなたとのお話は終わり」
え、ここでか?まだ聞きたいことがたくさんあるのに、本当になんなんだよ!もう何もかも無茶苦茶だ。
「それじゃあこの続きは?」
「それはまたあとで話すわ。この際だから拒否権無用で私からお願いがるの」
いやいや、いくら何でも鬼畜すぎやしませんかね。と突っ込みたいよ俺は!
「動き出した瞬間に霊魔が現れる。だから再び空想戦士として、失われた記憶や仲間たちを取り戻しながらこの世の民を……ううん、この世のすべてを救ってほしい。必ず_____________」
少女が抱きついてきて何か言いかけたところで時は動き出し、少女の姿は一瞬にして消えた。あれは夢だったのか、それとも幻だったのか。そう思い詰めた時。周りにいた買い物全員がこちらを睨んできた。何事かと思った次の瞬間、姿かたちが変化した。一目見ただけで人間じゃない、一言で表すなら創作物に出てくるような悪魔のようだ。だがこんな異形な化け物を目にしても驚くことはなく、むしろ落ち着きのある澄ました顔を不思議と保てている。
「………なるほど、こいつらが霊魔か」
《そうよ。どうやら少しは思い出したみたいね》
一言つぶやくとあの子の声がしたので聴きながら腹部に両手を当てると『ファンシーオーブ』と呼ばれる金色の輝石が埋め込まれたバックルが出現し、腰にベルトも巻かれると装着完了。腹から両手を離すとすぐさま
「変身」
と掛け声とともにオーブが光りだし、身体もその光に包まれるとさっきまで着ていた制服から大幅変わり、その姿は見習いの天使を思わせるかのようなもの。頭の輪っかは髪飾りとしてついており、背中には小さな羽。胴体は天使が身に着けるような衣が、両腕には堅そうな腕輪がまとわれており、吐いているブーツも同様。
この姿こそ、空想戦士なのだろう。
「き……貴様、まさか空想戦士!?」
今の俺の姿を目の当たりにした霊魔たちは当然驚いているおり、その中の一人が問いに俺はこう答えた。
「その通り、そして今の俺は……」
「僅かながも灯しび続ける希望の光!ブライトミツル!」
変身したあとに名乗り上げれば戦いの合図、これはヒーローものにとってのお約束である。この瞬間から、空想戦士としての物語が始まった。もとい、再生したのだ。
《プロフィール》
川内光流(せんだいみつる)
学年:高校3年生(17歳)
身長:171cm
体重:54kg
スリーサイズ:B81W69H90
誕生日:6月2日
血液型:B型
星座:ふたご座
家族構成:母、妹
好きなもの:友達、ヒーロー
嫌いなもの:犯罪者
趣味:特撮鑑賞、散歩
特技:人助け、力仕事、運動系、記憶系
本作の主人公。髪色は暗めの茶髪で顔は可愛く見えるがよく見ると凛として見える。相手の感情を読み取るのが苦手でお人好しな面もあるが困った人を放っておけないほどの正義感を持った心優しい少年。友達と過ごす日々を何よりも大切にする。光属性の戦士。空想戦士としての能力については次回説明しよう。