インフィニット・ストラトス《無限の空と電脳の空》 作:【ユーマ】
第1話『女尊男卑の世界』
「……よしっ!」
目の前のディスプレイに映るWINの表示を見て、キーボードとマウスから一旦手を離す。
(これで必要なポイントも溜まったし、打金の刀をアップグレードできるか)
いま俺がやっているゲームはISBA、『インフィニットストラトス・バトルアリーナ』と言う実在するある兵器を元にしたオンラインFPS。そのチームバトルを二人の友人と一緒にプレイし、一戦終えた所だ。
『おー、おつかれさん』
『お疲れ、やっぱ強いな。ハルは』
『バレッドとナツの援護のお陰さ。』
『その腕ならよ、名前の後ろに@1鯖の代表候補生とかつけてもいいんじゃねぇか?』
バトル画面からロビーに移行して二人とチャットで会話をしている。
『そういえば。この間、このゲームのサービス停止を訴えた署名が運営に提出されたみたいぜ』
『それなら、俺もTVで見かけたな』
『ニュースでやってな、そう言えば』
別にこのゲームに何か問題があるわけでも無い。運営もプレイヤーからの不具合報告や要望に対して真剣に吟味する姿勢を見せ、キチンと対応をしてくれる。けれど、何故このゲームが一部の人から疎まれているか。
『署名運動の先頭に立った女性の訴えによると「例えゲームでも男がISを操作するなんて不愉快だし、分不相応だ」だってよ、自分はIS操縦者でも無いなのにな……』
ISBAのベースとなった兵器<インフィニット・ストラトス>、通称IS。天才科学者、篠ノ之束が開発した宇宙空間での活動を目的として開発されたそれは、今ではこの世に現存する全ての兵器の頂点に立つ存在として世の中に認可されている。それもそうだ、数千にも及ぶミサイルの雨の半数以上を処理。その後、ISの存在を恐れ破壊に乗り出した多くの国の軍隊を相手に一騎当千の大立ち回り。そんな実績を残せば他の国でも我先にとISの配備に躍起になり、その存在は瞬く間に世界に広がっていった。そして――
『女尊男卑の風習ここに極まれり、か』
ISが世界にもたらしたもの、それは女尊男卑の風習。というのもISと言うのは女性のみが操縦できる兵器であり、男性ではどうあっても動かすことが出来ない。基本的な操縦と装備兵装の扱い方さえ身に付ければ、例え戦闘の素人でも、長年訓練を積んで来た軍隊の一個小隊相手なら余裕で無双できるほどだ。それだけならISが優れているのは戦闘面だけじゃないか。と、思うだろうがISは政治、主に外交関係にも影響を及ぼしている。現在、外交時に両者の主張が平行線、もしくは対立した場合は各国が擁している代表のIS乗り同士による戦いで結論を出すが主流となっている。元々は過酷な宇宙空間での活動を想定したパワードスーツなだけあり、ISは操縦者の生命を守る機能に優れている。ゆえに、現在ではISでのバトルは一種のスポーツとなり世界大会も開かれている。
『国家間の諍いや犯罪事件の無血解決。ISのお陰で流れる血が減ったのは確だけどよぉ』
『だからと言って、IS操縦者でもない女性すらデカイ顔するのはどうかと思うぜ、俺は……』
最悪の場合、戦争に発展しかねない国同士の対立を血を流す事無く解決する事が出来るのだ。ここまで来ればISを操縦できる女性こそが優れている、男なんぞ下等種族だ。そんな風潮が広がるのは当たり前の流れなのだろう。
『だなぁ。俺なんて昨日、学校の帰りにしらねぇババァに大量の荷物持たされたぜ……』
『フッ、甘いな。俺は部活帰りの女子生徒の集団に無理やり奢らされた』
『それって、完全にカツアゲじゃないか。近くに警察とか居なかったのか?』
『ガッツリ女尊男卑に染まった婦警さんなら。カツアゲは見てみぬ振り、そして俺が掴まれた腕振り払った瞬間、すっ飛んできて過剰防衛で即補導、そこからたっぷりお説教コース……。トドメに男性なんだから女性には奢るぐらいの甲斐性は見せなさい、と警察からの許可も出て、めでたく奢らされました、と』
『OH……』
ここまで極端な意識を持ってる女性は少ない方ではあるが、それでもで世の中の男性が俺やバレッドの様な目に会うのは珍しいことでない。かと言ってキレて反撃しようものなら『男性が女性に手を挙げた』と言う、大体は男性側がバッシングを受ける構図が出来上がり、そこに女尊男卑の風習も合さって最終的に男性の方に非があるとされるのだから性質が悪い。
『さて。そろそろ時間だから一旦落ちるわ』
『ああ、そう言えば13時からだっけか。正式サービス開始』
『まぁな。1000名様限定の先行予約の抽選に当選したからな。日が昇ってから悠々と買いに行かせてもらった』
『昨夜からずっと並んでたけど、普通に売り切れたんだよな』
『俺なんてオヤジに店の手伝い頼まれて争奪戦に参加すら出来なかったぜ……。ハル、今度家に遊びに行くから、やらさせてくれよな』
『あ、俺もやってみたいから、その時は俺も呼んでくれよ』
『了解、そんじゃお疲れ~』
『お疲れ様』
『おつかれさーん』
そうしてISBAからログアウト。ちらりと時計を見る『12:58』。すぐさまベッドに置いてあった巨大なヘッドギアを被り、装着電源を入れてベッドに横になる。これから始まるのはあるオンラインゲームの正式サービス。ゲームにおけるリアリティの追求、その極致とも言える作品――
「……リンク・スタートっ!」
――その名は、ソードアート・オンライン。