二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です。


第103話

姫昌達と合流した姜子牙達は、姫昌達に自分達の事をどのように説明するのか迷ったが、姫昌が黄飛虎に自身の手の者が手配した者達だと説明した。

 

この姫昌の言葉に姜子牙達は驚いたが、おそらくは二郎が手を回していたのだと納得をして状況を受け入れ、今は殷の都から西岐に向かって旅を始めていた。

 

「姫昌殿、大丈夫かのう?無理をせずにスープーに乗っても構わんのだが…。」

「姜子牙殿、心遣い感謝します。ですが、大丈夫ですぞ。」

 

そう答えた姫昌は淀みない足取りで歩き続けている。

 

(黄将軍の話では姫昌殿は何年も幽閉されていたとの事だが、足腰が達者だのう。)

 

姫昌の髪や髭は白んでいるが、その年齢を感じさせない足取りに姜子牙は内心で首を傾げる。

 

(まぁ、この事に二郎真君様が関わっているのなら、あまり深く考えない様にしようかのう。)

 

仙人の中でも飛び抜けた力を持つ二郎の行動は、姜子牙の常識では計れず度々頭を悩ませている。

 

その為、最近の姜子牙は二郎とはそういう者だと、ある意味で達観して考える様になっていた。

 

「私よりも、ご婦人方や子供達を乗せてはいかがですかな?」

「儂が言わずとも、もう乗っておるのう…。」

 

そう言って四不象の方に振り向くと、そこには四不象の背ではしゃぐ黄一族の子供達の姿があった。

 

「すまねぇな、姜子牙殿。」

「気にせんでよい、黄将軍。歩みが遅れれば、それだけ面倒が起きる可能性が高いからのう。」

「そうか、悪いな。それと、西岐に真っ直ぐ向かって大丈夫なのか?」

 

黄飛虎の疑問に姜子牙は人差し指を立てて答える。

 

「回り道をして戦力の補充をする宛があるのならそれも良いのだが、無いのなら食料補充の為に町に寄る程度にして最短距離を進むのが得策だのう。」

「しかし、それじゃあ聞仲の放つ追手に追いつかれるぜ?」

 

そう言う黄飛虎の疑問に姜子牙は淀みなく答える。

 

「どちらにしろ追いつかれるであろうのう。ならば、女子供の体力を考えて近道を行くのが一番であろうよ。」

「すまねぇな。」

「構わんよ、儂の仕事はお主達を護送する事だからのう。」

 

そう言うと姜子牙は一行の最後方で警戒をする士郎の元に向かう。

 

「士郎、追手は見えぬか?」

「天地の果てに人影は見えんよ…今のところはな。」

「やはり、士郎も追手はあると思うかのう?」

「追手がなければ老師は私達に護送をさせないだろうな。」

 

士郎の言葉に姜子牙はため息を吐く。

 

「どんな追手が来るのかのう…?」

「私達三人で相手をせねばならない…そんな相手だろうな。」

 

そう言って士郎がため息を吐くと、姜子牙もつられる様にもう一度ため息を吐いたのだった。

 

 

 

 

「報告ご苦労、後は予定通りに動け。」

 

配下の報告を聞いた聞仲は配下を下がらせると笑みを浮かべる。

 

「姫昌と伯邑考も連れ出すとはな…手間が省けたぞ、飛虎。」

 

聞仲は霊獣の黒麒麟を呼び出すと、その背に跨がり空へと飛び立つ。

 

「女狐の思惑通りに都を空けるのは癪だが、その為の準備は整えてある。全てが貴様の思惑通りにいくとは思わぬ事だ。」

 

周到に準備をして紂王の周囲に結界を張り、自身が戻るまでの間は幻術を抑えられるだろうと確信をする聞仲は不敵な笑みを浮かべる。

 

「女狐、姫昌を殺し西岐の力を削いだ後は貴様の番だ。首を洗って待っているのだな。」

 

跨がった聞仲が腹を軽く蹴ると、黒麒麟は風を切って空を駆ける。

 

聞仲が都を去るのを見ていた妲己は、誰もが見惚れる程の妖艶な笑みを浮かべたのだった。




本日は5話投稿します。

次の投稿は9:00の予定です。

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