「哪吒、下がれ!士郎、少しの間頼む!」
姜子牙達が聞仲と戦い始めてから半日が経っていた。
その間に姜子牙達の衣服は所々が破けてしまい、一見では満身創痍に見えるが、二郎に貰っていた神酒のおかげでまだ余力を残して聞仲と戦えていた。
「ほれ、哪吒、神酒を飲め。」
「いらん。」
「脇腹の骨を砕かれて何を言っておる。聞仲を相手に僅かにでも動きが鈍れば頭を砕かれるぞ。」
姜子牙の言葉に鼻を鳴らした哪吒は、士郎と聞仲の戦いを見ながら神酒を一口飲む。
すると、身体中にあった切り傷と、砕かれた肋骨が瞬く間に癒えた。
「傷は治った。士郎を下がらせろ。」
そう言って前に出た哪吒の背中を見て、姜子牙は頭を掻きながらため息を吐く。
哪吒と代わって下がってきた士郎は、ため息を吐く姜子牙を見て苦笑いをした。
「尚、この戦いをどう見るかね?」
「聞仲に勝つことは出来ぬだろうのう。」
「あぁ、私もそう思う。」
「儂達は幾度も禁鞭で打たれておるが、半日掛かっても聞仲には一撃も入れる事が出来ておらんからのう。」
乾坤圏を両手に持った哪吒が、前後左右を問わずに襲い掛かってくる禁鞭に懸命に対処していく。
その様子を姜子牙は瞬きもせずに観察している。
「士郎、儂達の周囲は無数の禁鞭に取り囲まれておるが、聞仲が意図して操れる本数には限界があると儂は予測しておる。」
「確かにこの全てを自在に操れるのならば、私達は既に敗北しているだろうな。」
士郎は自分達を取り囲んでいる無数の鞭が襲い掛かってこないか警戒をしながら、哪吒に向けられている攻撃を見て、聞仲の攻撃の癖を見抜こうと観察する。
「儂が確認出来た限りでは聞仲が意図して操れる本数は四つだが…どうかのう?」
「いや、四つではなく五つだな。先程、哪吒と入れ代わる際に丁度四つ目を弾いたのだが、私が下がる直前に五つ目の鞭に腕を砕かれた。」
そう言って士郎は折れ下がる左腕を掲げて姜子牙に見せる。
それを横目でチラリと見た姜子牙は、無言で竹の水筒に入っている神酒を士郎に渡した。
「士郎、お主は幾つまで防げる?」
「確実に防げるのは四つまでだ。五つ目を防ぐには『投影』をした武器をぶつけるしかない。」
「勝つつもりがないこの戦いでこちらの手の内は見せたくないのう。」
姜子牙と士郎が会話をしていると、哪吒が禁鞭で打たれて片腕が使えなくなってしまった。
「儂が風の刃で一瞬の間を作る。その間に哪吒と入れ代わってくれ。」
「あぁ。」
姜子牙が指示を出すと、士郎は素早く動き出す。
そして姜子牙が打神鞭を振るって放った風の刃を聞仲が防いで一瞬の間が出来ると、士郎は哪吒を下がらせて聞仲と戦い始めたのだった。
◆
「うん、士郎達も結構頑張るね。」
「でも、楊ゼン様があげた神酒が無ければここまで戦えていないわねん。」
「まだ百年も生きていない士郎達に、数百年道士として生きた聞仲と戦わせるんだから、そのぐらいの後押しはしてあげないとね。」
妲己が片手を頬に当てながらため息を吐くと、二郎は笑みを浮かべながら肩を竦めた。
「士郎…。」
祈るように手を組んだ王貴人は目を逸らさずに士郎の戦いを見守る。
そんな王貴人が見守る中で士郎達の戦いは三日三晩に渡って続いたのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
なんか王貴人が思った以上に乙女になった。
流石は原作主人公ですな!
また来週お会いしましょう。