二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です


第10話

「ギルガメッシュ、入るぞ。」

 

ウルクの王であるルガルバンダ殿に案内されて入った部屋には、

金髪、赤目の美少年が立っていた。

 

「父上、よくぞいらしてくれました。それと、そちらの御仁はどなたですか?」

 

ルガルバンダ殿を父と呼んだ事を考えても、この少年がギルガメッシュか。

 

ギルガメッシュは俺の事を興味深そうに見てくる。

 

その赤い瞳は、少年とは思えない程の知性を感じさせてくる。

 

「ギルガメッシュよ、ゼン殿はお前の友になりたいそうだ。」

「僕の友にですか?」

 

首を傾げながらギルガメッシュが俺を見てくる。

 

俺は一歩前に進み出て自己紹介をした。

 

「初めまして、ギルガメッシュ。俺は姓を楊、字をゼンという。名に関しては中華の地の

 風習で簡単に教えてはならないから、君と親友と呼べる程に仲良くなれた時に名乗るよ。」

 

俺が自己紹介をすると、ギルガメッシュはニコリと微笑んだ。

 

「僕はギルガメッシュです。ゼン、これからよろしくお願いしますね。」

 

そう言ってギルガメッシュは手を差し出してきたので握手をする。

 

うんうん。素直でいい少年だなぁ。

 

「ゼン、貴方は何か鍛練をしているのですか?」

「確かに俺は修行をしているよ。でも、どうしてわかったのかな?」

「父上や兵士もそうですが、ゼンの手は武器を振っている方と同じ手をしているので。」

 

ギルガメッシュ…、とんでもなく賢いな。

 

「よければゼンの腕前を見せてくれませんか?」

 

ギルガメッシュがそう言って来たので、俺はチラリと見てルガルバンダ殿に伺いを立てる。

 

「ふむ、中華の地の戦士がどういうものなのか、我も興味がある。

 ゼン殿、ぜひとも見せていただきたい。」

 

ルガルバンダ殿は随分あっさりと許可を出したな。

 

俺に武器を持たせても大丈夫と信頼してもらえるだけのものって、何かあったか?

 

…まぁ、いいか。

 

「それでは、ここではなんなので外に行きましょうか。」

 

 

 

 

俺達が外に移動すると、外で大人しく待っていた哮天犬が俺にすり寄ってきた。

 

「大きな獣ですね。この獣はゼンのものなのですか?」

 

ギルガメッシュは興味深そうに哮天犬を見ている。

 

「哮天犬は俺の乗り物であり、相棒だよ。」

「哮天犬?」

「中華の言葉で『天に哮える犬』って意味だね。」

「へぇ~。」

 

ギルガメッシュは哮天犬を見ながらソワソワとし始めた。

 

「ゼン、哮天犬を触ってもいいですか?」

「うん、いいよ。」

 

俺が了承するとギルガメッシュは哮天犬をモフモフして、目をキラキラとさせている。

 

モフモフされても尻尾を振って無い所を見ると、哮天犬はまだギルガメッシュを

認めてないみたいだな。

 

「さて、ゼン殿。そなたの力を見せていただけるかな?」

 

ルガルバンダ殿が俺にそう言ってくると、哮天犬をモフモフしていたギルガメッシュが、

ハッとした様に咳払いをしながら哮天犬から離れた。

 

「…ンンッ!ゼン、僕からもお願いします。力を見せてください。」

 

ギルガメッシュは間違いなく優秀で賢い少年だ。

 

でも哮天犬を触っていた様子を見ると、年相応に背伸びをしている少年に見えて微笑ましい。

 

「では、拳法の一端をご覧あれ。」

 

俺はそう言って右腕を軽く振るうと、右手に三尖刀を召喚する。

 

いきなり武器を手にした光景を目にしたルガルバンダ殿とギルガメッシュは、

驚いて目を見開いていた。

 

俺が蛟退治や邪仙討伐をする様になって50年程経ったが、その過程で三尖刀が変化していた。

 

伯父上が言うには内包する神秘が増した結果、三尖刀が成長したとの事だ。

 

そして成長した三尖刀は、俺の意思で俺の手元に戻ってくる様になったのだ。

 

そのおかげで、俺の修行には投槍の修行も加わった。

 

遠距離への攻撃手段が出来たので非常に助かっている。

 

ちなみに三尖刀は普段、灌江口にある俺の廓に置いてある。

 

送還すれば灌江口の廓に戻るので、非常に便利な宝具なのだ。

 

「これは三尖刀といって、俺が愛用している武器です。」

 

俺はそう言うと、三尖刀を剣として振るっていく。

 

そして次に三尖刀の柄を伸ばして槍として振るうと、ルガルバンダ殿とギルガメッシュは、俺に称賛の言葉をくれたのだった。

 

 

 

 

 

ギルガメッシュ叙事詩の一節にはこう綴られている。

 

 

『治水の神ゼンは幼少時のギルガメッシュと対面すると、信頼を示すために利き腕をギルガメッシュに預けた。』

  

 

『治水の神ゼンの利き腕を手に取ったギルガメッシュは、治水の神ゼンの戦士としての力に気付き、その力を示す事を望んだ。』

  

 

『治水の神ゼンはギルガメッシュの望みに応えてその力を振るう。』

 

『ギルガメッシュは治水の神ゼンの力を見ると、父ルガルバンダと共に治水の神ゼンに称賛の言葉を贈った。』

  

 

『治水の神ゼンの力を知ったルガルバンダは治水の神ゼンに、ギルガメッシュに戦士としての手解きを願う。』

  

 

『ルガルバンダの願いを聞き入れた治水の神ゼンは、師としてギルガメッシュを鍛え、友として友情を育んだのだった。』

  

 

 

後に数多の冒険で栄光を積み重ねるギルガメッシュだが、その根幹となるものはこの時の出来事がキッカケだったとされている。

  

 

古代オリエント界最大の英雄ギルガメッシュ。

 

世界の全てを見た者と称されるギルガメッシュのその慧眼が、

初めて発揮されたエピソードである。




次の投稿は11:00の予定です

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