二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿5話目です。


第122話

「士郎、よく来てくれたのう。」

「友の為に馳せ参じた…とでも言えば格好がつくのだろうが、私自身の夢の為さ。」

「それでも士郎さんが来てくれたのは心強いっス!」

 

哮天犬に乗って周にやって来た士郎は姜子牙と四不象に歓迎されていた。

 

「それで尚、李靖はいつ周に味方すると宣言するんだ?」

「殷の軍との初戦で勝った後だのう。」

「なるほど、優柔不断な連中の尻を叩く為か。」

「話が早くて助かるのう。」

 

周の建国宣言がされてから三ヶ月程が経ったが、まだ周に味方すると表明した国は無いのが現状であった。

 

「それだけ殷を…聞仲を怖れているのだろうな。」

「周には黄将軍以外に中華で大きく名を知られた者がいないのもあるだろうのう。」

 

姜子牙と士郎、そして四不象が揃ってため息を吐いたが、その次の瞬間には姜子牙が悪い笑みを浮かべていた。

 

「ということで、士郎には名を売ってもらおうと思う。」

「私としては歓迎だが、周の将軍達でなくていいのかね?」

「日和見の者達の尻を叩かねばならんからのう。初戦は派手にいかねばならぬ。」

「一騎討ちか…。」

 

士郎がため息を吐くと姜子牙は笑い声を上げた。

 

そんな姜子牙に四不象がジト目を向ける。

 

「ご主人、どうやって一騎討ちに持ち込むんすか?」

「その答えは…『弓』だのう。」

 

姜子牙の返答に四不象が首を傾げると、姜子牙は四不象に戦の講義を始めたのだった。

 

 

 

 

人類の歴史と戦争は切っても切れぬ関係にある。

 

戦争が人類の技術を発展させた部分もあるからだ。

 

そんな戦争の転機点となるのが新たな兵器の開発である。

 

とりわけ新たな飛び道具が戦争の在り方を変えるのが常である。

 

そんな戦争の在り方が人類の歴史上で最初に変わったのは黄帝が弓を開発した時だ。

 

それまでの飛び道具は投石や投槍が主流だった。

 

投石や投槍の威力や飛距離は個人の身体能力で大きく変わる。

 

しかし極端な事を言えば、弓は引く事さえ出来れば誰もが同じ威力や飛距離で矢を放つことが出来るのだ。

 

その弓を開発して数を揃えた黄帝は広い中華の地を次々と平定し、人類史上初めて中華の地を統一した英雄として名を残した。

 

それからの人類の戦はこの弓を如何に使うかが重要視される様になる。

 

やがて戦の主役は戦場の中心で剣や槍を振るい無双をする英雄から、弓矢を射る者達に変わっていく。

 

弓を巧みに使う事が出来る武人は称賛され、一国の英雄として名声を得ていった。

 

そんな英雄の存在は兵の士気に大きく影響する。

 

味方ならば兵の士気を高揚させ、敵ならば兵の士気を挫く。

 

故に今の時代の戦は、弓に長けた英雄の存在が戦の勝敗を分けると言っても過言ではないのだ。

 

 

 

 

姜子牙の講義を聞いた四不象は首を傾げる。

 

「ご主人、弓が重要なのはわかったっすけど、それでどうやって士郎さんに一騎討ちをしてもらうんすか?」

「士郎が弓で次々に敵を倒していけば、向こうから勝手に一騎討ちを申し込んでくる。」

「えっと、味方の下がった士気を盛り返す為にっすか?」

「うむ、その通りよ。」

 

四不象が感心の声を上げると、士郎が話に割り込む。

 

「しかし、そう上手くいくのか?」

「上手く行かせる状況を作るのが儂の仕事だのう。まぁ、楽しみにしておるがよい。上手くいけば相手の将は最初に油断をし、後に慌て、最後に一騎討ちをするしかなくなるからのう。」

 

そう言ってニヤニヤと笑みを浮かべる姜子牙を見た士郎と四不象は、姜子牙がどんな策を考えているのかと不安になってため息を吐いたのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

夏バテで体調を崩している為、来週の投稿はお休みさせていただきます。

また8月にお会いしましょう。

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