二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です


第12話

ギルガメッシュが王になってから3年程の月日が経った。

 

王となったギルガメッシュの政務は、まさしく賢王と言える程に凄いものだった。

 

10日で100日分の政務をこなして時間を作れば、自らの足でウルクを見て回ったり、俺と一緒にウルクの外に冒険に行ったりしている。

 

冒険の理由は、ウルクの近隣には都市国家が幾つもあるのだが、その中でもウルクは小さい方なので何かあった時に対応出来る様にする為だ。

 

現在、大きな都市国家の代表と言える立場にあるのがキシュという国だ。

 

そのキシュという都市国家を治める王はアッガという男なのだが、俺とギルガメッシュは冒険の途中でアッガと出会っている。

 

アッガと出会った時に俺とギルガメッシュはアッガから水や食料を貰ったのだが、この時にギルガメッシュは後数年の内にアッガはウルクに攻めてくるだろうと予測した。

 

昔からアッガを知るルガルバンダ殿は、アッガを王としても戦士としても傑物だと評価している。

 

アッガが治めるキシュの国家としての規模はウルクよりもずっと大きく、そして栄えている。

 

では、何故そのキシュがウルクに攻め入ろうとしているのか?

 

それは今の時代背景が関係している。

 

人々は自然の猛威を生き抜く為に神の加護や慈悲を願っているのが今の時代なのだが、願ったからといって必ず加護や慈悲を得られるわけではない。

 

そんな人々にとって最も脅威となっているのが、冬の寒さと飢えである。

 

今の時代の戦争が起こる基本的な理由は、冬に自国の民が凍えず、飢えない様にする為に他国から食糧等を奪う事を目的に起こされている。

 

時には神々のワガママで戦争が起こる事もあるのだが、表向きな理由としては冬の寒さと飢えである。

 

ギルガメッシュはウルクがキシュと戦争をする事になっても勝てる様に、冒険をして多くの財を集め、ウルクの国力を上げようとしているのだ。

 

まぁ、ギルガメッシュが財を集めるのはギルガメッシュの趣味でもあるのだが…。

 

ウルクの近況はこんな感じだが、中華の地でも変化が起きようとしている。

 

伯父上を始めとした中華の神々が、中華の地でも人の王を作ってはどうかと話し合いをしているのだ。

 

 

伯父上はまだ答えを出すのは早いと、人の王であるギルガメッシュを観察する事を中華の神々に通達した。

 

 

しかし、中華の神々の多くは仙人である。

 

宇宙と人生の真理を求める者達であり、好奇心と探求心で悠久の時を生きる者達だ。

 

そんな中華の神々が、一度興味をもったら我慢出来る筈が無い。

 

なので中華の道士や仙人が独断で、中華に人の王となる者を作らない様に注意しないといけない。

 

 

俺が中華に戻ると、そういった行動をしている道士や仙人の討伐を伯父上に頼まれる事が増えてきた。

 

 

今も伯父上に頼まれてそんな道士と仙人を討伐して来たばかりなのだ。

 

今回の討伐相手は徒党を組んでいたので、討伐するのに3ヶ月程掛かってしまった。

 

早くウルクに行かないとギルガメッシュに文句を言われるだろうなぁ…。

 

よし!哮天犬!ウルクに急ぐぞ!

 

 

 

 

「遅いぞ、ゼン!我を待たせるとは何事だ!」

 

哮天犬と共にウルクに辿り着くと、開口一番にギルガメッシュが叱責してきた。

 

「ごめん、ギルガメッシュ。今回の相手は徒党を組んでいたから時間が掛かったんだ。」

「ワン!」

 

俺の言葉に同意する様に哮天犬が吠える。

 

「たわけ!貴様ともあろう者がそのような雑種共に手こずるなど怠慢が過ぎるわ!」

 

王になる前のギルガメッシュは丁寧な言葉で話す可愛い少年だったのだが、今のギルガメッシュは何故かこんな感じになっちゃったんだよなぁ…。

 

一体誰がこんな風にギルガメッシュを教育したんだ?

 

ギルガメッシュと一番一緒にいたのは俺だけど、断じて俺のせいでは無い!

 

…俺のせいでは無い!

 

「まぁ、よいだろう。こうして我の前に馳せ参じた功を持ってゼンを許す。我の寛容さに感謝するがいい!」

「はいはい、ありがとうギルガメッシュ。」

「ワン!」

 

俺の感謝の言葉に続いて哮天犬も吠えると、ギルガメッシュは満足気に頷く。

 

「さて、ゼンよ。冒険に行くぞ。」

「今回はどこに行くんだ、ギルガメッシュ?」

「先代文明の遺跡だ。」

 

先代文明?

 

俺が首を傾げると、ギルガメッシュは愉悦する様な笑みを浮かべて話し出す。

 

「先代文明とは神々が人類を支配する前の時代の事だ。その時代には月が落ちたという話がある様だが、その遺跡には落ちる月をも薙ぎ払った剣があるらしい。」

  

 

月を薙ぎ払った?

 

その剣が凄いのか、その剣の使い手が凄いのかわからないけど、スケールの大きな話だ。

 

「それほどの剣が世に出ずに埋もれているのは、それは担い手となる我を待っていただけの事。ゼンがその剣を手に入れて我に献じるのも悪くないが、我自ら足を運ぶのも一興よ。」

 

ギルガメッシュはそこまで話すと、演劇の様に手を振るって行き先を指し示す。

 

そんな姿も様になるのがギルガメッシュの凄いところだな。

 

「行くぞ、ゼン!愚者が我の財を盗み出す前にな!」

 

そう言って歩き出すギルガメッシュに並んで、俺と哮天犬も歩き出す。

 

そして辿り着いた遺跡で手に入れた宝具は、ギルガメッシュをも満足させるとてつもない逸品だったのだ。




次の投稿は15:00の予定です

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