「フハハハハ!此度の冒険は良きものであった!ゼンよ!我に酒を献じよ!我が口にするにふさわしい酒をな!」
冒険からウルクに戻り玉座に座るギルガメッシュは、冒険で手に入れた歪な形をした剣を片手に、上機嫌に高笑いをしている。
「ギルガメッシュ。その剣を随分と気に入ったみたいだけど、それは何なんだ?」
俺は権能で神酒へと変化させた酒を、ギルガメッシュに渡しながら問う。
「ほう?この剣が気になるか?ゼンよ。」
俺から酒を受け取ったギルガメッシュは、手酌で酒を杯に注ぎながら剣を掲げる。
「この剣は宝具だ。そして、原初の力を内包している。」
「原初の力?」
俺はギルガメッシュが掲げる歪な形をした剣を見る。
原初の力なのかわからないが、俺は剣からもの凄い気配を感じている。
「そうだ。この剣は生命の記憶の原初であり、星の最古の姿にして、地獄を再現する。そういった宝貝だ。」
天地開闢。
俺が仙人として修行をしている中で老師に教わった事だ。
かつては世界の全てが混沌としており、天地は分かれておらずに1つだったらしい。
そして、とある出来事が起こった事で世界は天地開闢して今に至ると教わった。
「ほう?ゼンよ、貴様は原初の力を知っているようだな?」
「そう言うギルガメッシュも知っているみたいだけど?」
「我の目は全ての本質を見通す。故にこの剣の本質を見ればわかる事よ。」
ギルガメッシュが言う通りなら、この歪な剣は天地開闢の力を発揮出来るのだろう。
…とんでもない宝貝だな。
それとギルガメッシュの目も、宝貝に負けず劣らずに凄いものだ。
ギルガメッシュの目は所謂、千里眼と呼ばれるものなのだ。
伯父上に聞いた事なんだけど、千里眼を極めれば現在だけでなく、過去や未来も見通せる様になるそうだ。
ギルガメッシュも見ようと思えば過去や未来を見れるみたいだが、ギルガメッシュには見るつもりは無いそうだ。
「我と違いゼンにはこの目はなかろう?」
「先人が千年を超えて残してきた知識と、俺が百年生きて積み重ねてきた思考のおかげだろうね。」
「クハハ!神と違って仙人は随分と気が長い事よ。」
「仙人の中にも好奇心に負けて直ぐに動く奴が結構いるんだけどね。」
ギルガメッシュは杯の酒を飲み干すと、俺の目を見据えてくる。
「ゼンよ、我と友になり十数年経つが、まだ名を明かさぬつもりか?」
上機嫌に笑っていたギルガメッシュが、真剣な表情で俺を見てくる。
「ギルガメッシュ、君が友を作ったら名を明かすよ。」
「友ならば貴様がいるではないか!」
「それは俺がギルガメッシュの友になりに来たからだろう?だからギルガメッシュ自身の手で、他の誰かを友にして欲しいんだ。」
俺がそう言うと、ギルガメッシュは不機嫌だと言わんばかりにフンッ!と鼻を鳴らした。
このギルガメッシュに自分で友を作って欲しいというのは、俺とルガルバンダ殿の考えだ。
ギルガメッシュは生まれながらにして王である。
王とは人の上に立つ存在だ。
故に孤高であるのだが、孤独である必要は無い。
俺は中華の者だから、ずっとウルクにいるわけではない。
だからこそ常にギルガメッシュと一緒にいられる友を、ギルガメッシュに作って貰いたいのだ。
「友とは対等な者だ。ゼンよ、貴様は貴様以外に、この我に並び立てる者がいるとでも思うのか?」
ギルガメッシュは半神半人の王だ。
そのギルガメッシュに並び立つのは並大抵の事ではない。
でも…。
「世界は広いからね。もう1人ぐらいいてもいいんじゃないかな?」
「フンッ!」
ギルガメッシュは鼻を鳴らすと、手酌で杯に酒を注いでグイッと飲み干すのだった。
これで本日の投稿は終わりです
また来週お会いしましょう