二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です。


第141話

「お見事よん、王貴人ちゃん。」

 

胸に干将を突き立てられた妲己が王貴人に微笑む。

 

「妲己姉様…なぜ最後に手を抜いたのですか!?」

「王貴人ちゃん達が頑張ったご褒美よん♡」

 

そう言って王貴人から離れると、妲己は士郎へと目を向ける。

 

「士郎ちゃん、王貴人ちゃんをよろしくねん。」

「…あぁ、任せてくれ。」

「妲己姉様!」

 

胸から血を止めどなく流し吐血をする妲己に王貴人が駆け寄ろうとするが、妲己は片手を前に出して王貴人の動きを制する。

 

「ごめんね、王貴人ちゃん。私の最後は決めてあるのん…楊ゼン様の腕の中でってねん♡」

 

ふらりとよろめいた妲己がゆっくりと後ろに倒れていくと、その妲己の身体を虚空から現れた二郎が優しく受け止めた。

 

「お疲れ様、妲己。楽しかったかい?」

「はい、楽しかったですわ、楊ゼン様。」

 

二郎の問い掛けに妲己は嬉しそうに微笑みながら答える。

 

「竜吉公主ちゃんも来てくれたのね。」

「お主とはそれなりに長い付き合いだからのう。最後ぐらい見送ってやらねばな。」

「ふふふ、ありがとう。」

 

竜吉公主の気配に気付いた妲己が声を掛けると、竜吉公主が虚空から現れる。

 

「妲己姉様!今ならまだ…!」

「…王貴人ちゃん、ありがとう。でもね、私は私を曲げてまで生きるつもりはないわ。それをしてしまったら、私は楊ゼン様に相応しい女じゃなくなってしまうもの。」

 

妲己の拒絶に、王貴人の目から涙がこぼれ落ちる。

 

「妲己姉様―――!!」

「あら、胡喜媚ちゃんも来てくれたのね。」

 

四不象に乗って空からやって来た胡喜媚は四不象から飛び下りると、転びそうになりながら妲己に駆け寄ろうとする。

 

しかしその胡喜媚を、王貴人が抱き止めた。

 

「ダメです、胡喜媚姉様。」

「離して、王貴人ちゃん!妲己姉様が!妲己姉様が…!」

 

泣き出す胡喜媚を王貴人が抱き締める。

 

「胡喜媚ちゃん、王貴人ちゃん、貴女達は私の自慢の養妹よ…。だから、これからも生きて幸せになりなさい。」

「妲己姉様がいなくなったら、幸せになんてなれないよぉ!」

「うふふ、貴女も王貴人ちゃんみたいに恋を知れば幸せになれるわよ、胡喜媚ちゃん。」

 

抱き合って涙を流す養妹達の姿を、妲己は暖かい眼差しで見る。

 

「…そろそろ時間みたいね。」

「「妲己姉様!」」

 

胡喜媚と王貴人に向けて微笑むと、妲己は二郎の胸に顔を埋める。

 

「お慕いしております、楊ゼン様。」

「ありがとう、妲己。」

「…最後にワガママを言ってもよろしいですか?」

「あぁ、いいよ。」

 

妲己は二郎の瞳を見詰めると、ゆっくりと目を瞑る。

 

そんな妲己に二郎は優しく口付けをした。

 

「悠久の時の果てに生まれ変わる事が出来たら、また御会いしましょう、楊ゼン様。」

 

見惚れる程に華やかな笑みを浮かべた妲己が眠る様に目を閉じると、妲己の身体から魂が抜け出て封神台へと飛んでいく。

 

妲己の魂を見送る二郎の目からは、千年振りの涙が流れていたのだった。

 

 

 

 

『妲己』

 

封神演義に登場する仙女であり、殷周革命に登場する紂王の寵姫である。

 

その類い稀な美貌と彼女の行動で、当時中華最大の大国である殷の滅びを招いた事から『傾国の美女』の異名を冠している。

 

彼女は幻術で紂王を誘惑して後宮に入り込んだのだが、その目的は国産みの神を侮辱した紂王に神罰を与える事だった。

 

後宮に入り込んだ後の妲己は神罰として殷を滅ぼす為に、聞仲と暗闘を繰り広げながらも中華を意のままに動かし、ついに殷を滅ぼす事に成功する。

 

しかし妲己は女媧の使命の果てに自身も太公望や士郎達によって封神されてしまったのだが、その封神される際に妲己の忠義に感心を抱いた二郎真君が現れ、妲己の最後を看取ったと記されている。

 

二郎真君が最後を看取った事以外にも妲己には二郎真君と関係する逸話が幾つもあり、その事から妲己は二郎真君と深い仲であったのではという説もあるのだが、その真偽は定かではない。

 

大国を滅ぼした事から現代では世界三大悪女の一人として数えられる妲己だが、その実は命を賭けて神の使命を遂行した忠義に厚い才色兼備の女傑なのであった。




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