二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です


第15話

「ギルガメッシュ、僕は君に失望したよ。」

 

ある日、俺が中華からウルクにやって来ると、エルキドゥが突然そんな事を言い出した。

 

「エンリル様がおっしゃっていたよ?ギルガメッシュは民を見捨てたって。」

 

エルキドゥの言葉を、ギルガメッシュは興味深そうに聞いている。

 

「ギルガメッシュは多くの財を持っている。なら、見捨てずに救う事も出来るんじゃないの?」

 

エルキドゥが話している間にシャムハトから聞いたのだが、ギルガメッシュは百人程の民を隔離したそうだ。

 

だがそれは先日、民が流行り病になったからとの事。

 

俺は以前にあらゆる病や毒を癒す霊薬をギルガメッシュに渡しているのだが、流行り病になった民の人数分には全く足りない。

 

なのでギルガメッシュはより多くの民を救う為に、その百人程の民を隔離したそうだ。

 

「エルキドゥよ、貴様ならどのようにして我の民を救う?」

「ゼンから貰った霊薬があるじゃないか!」

「確かに我の蔵にはゼンが献上した霊薬がある。だが、病になった民の数には

 とうてい足りぬ量しかない。」

「それでも!救える人がいるんじゃないか!」

 

エルキドゥが怒りに任せて声を張り上げる。

 

「エルキドゥよ、貴様は救える民がいるというが、霊薬を誰に与えるつもりだ?」

 

ギルガメッシュの言葉にエルキドゥは唇を噛み締める。

 

「それでも…、皆を見捨てるわけには…!」

「ほう?エルキドゥよ、どうするつもりだ?」

 

ギルガメッシュが問うと、エルキドゥは手を剣にしてギルガメッシュへと向ける。

 

「ギルガメッシュ、蔵の霊薬を僕に渡して。」

「フハハハハ!霊薬の数は足りぬと知りながら求めるか!」

 

ギルガメッシュは高笑いを収めると、玉座から立ち上がる。

 

「エルキドゥよ、欲しくば我から奪ってみせよ!」

「それでいいんだね、ギルガメッシュ?」

「我に二言は無い。エルキドゥよ、野にて待て。そこで我自ら貴様の相手をしてやろう。」

 

ギルガメッシュの言葉を聞いたエルキドゥは、直ぐに玉座の間を出ていった。

 

「ギルガメッシュ、いいのかな?」

「構わぬ。流行り病で気が沈んだウルクの民への良き余興となろう。」

 

俺が問うとギルガメッシュは僅かに唇を引き上げながら俺の問いに答える。

 

「しかし、エルキドゥは俺に霊薬を作らせるって発想は出なかったのかな?」

「エンリルの言葉に動揺してそこまで気が回らなかったのであろう。初な奴よ。」

 

考えてみればエルキドゥは、まだ生まれてからあまり時が経っていないのだ。

 

神に作られたとはいえ、まだ赤ん坊同然。

 

知性や理性を得ても、感情の整理の仕方を知らないのだろう。

 

「ところでゼンよ、哮天犬はどうした?」

「知っていて聞いてるよね?」

「フハハハハ!事を知った時のエルキドゥの顔が見物よ!」

 

今から霊薬を作っていては間に合わない。

 

なので哮天犬には、俺の廓に備蓄してある霊薬を取りに行ってもらったのだ。

 

「行くぞ、ゼン!エルキドゥに王とは何かを教えてやるのだ!」

 

上機嫌に高笑いしながら歩き出すギルガメッシュの姿にため息を吐くと、俺も野に向かって歩き出す。

 

「エンリル様がおっしゃっていた…か。」

 

そう呟くと俺は天を見上げる。

 

「何やら面倒な事になりそうだけど、それもまた面白そうだ。」

 

その後、ギルガメッシュと共にウルクの野に辿り着くと、既に臨戦態勢になっているエルキドゥの姿があった。

 

そして後に神話として語られる事になる、ギルガメッシュとエルキドゥの戦いが始まるのだった。




次の投稿は11:00の予定です

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