二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第177話

「なぁ、楊。武器はいらねぇのか?」

 

食事を終えていざ手合わせとなった時、八戒は無手の二郎を心配して声を掛けた。

 

「うん、問題ないよ。」

「楊さん、八戒はとても力持ちなのです。素手では危ないですよ?」

「大丈夫だよ、三蔵。それに、武器を使う気分でもないからね。」

 

二郎の言葉に三蔵はそういうものではないのではと苦笑いをする。

 

仕方なく三蔵は八戒に目を向けた。

 

「八戒、十分に気をつけてくださいね。」

「おう!任せてくれ、お師匠様!」

 

そう言って力瘤を作る八戒の姿に心配が増す三蔵だが、そんな三蔵の肩を悟空が軽く叩いた。

 

「三蔵、楊ゼンなら大丈夫だよ。」

「悟空、楊さんは素手なのですよ?」

「う~ん…まぁ、見てたらわかるから。」

 

あいまいな事を言う悟空に首を傾げたが、三蔵は悟空と悟浄と一緒に手合わせを見学する事にした。

 

「おっしゃあ!楊、行くぜ!」

 

掛け声と共に八戒は手にしていた金属製の棍を思いっきり振りかぶる。

 

そして二郎に向かって飛び掛かると、飛び掛かった勢いを利用して棍を振り下ろした。

 

三蔵と悟浄、そして棍を振り下ろした当人である八戒が攻撃が当たると思ったその時。

 

「随分と素直な攻撃だね。」

 

欠片も慌てた様子を感じさせない二郎の声が聞こえると、八戒の攻撃は二郎から逸れてしまった。

 

ドガッ!

 

地を勢いよく叩いた金属製の棍の音が響き渡ると、三蔵達は驚いて目を見開いた。

 

「お師匠様、僕の見間違いでしょうか?八戒の攻撃は楊さんに当たったと思ったのですが…。」

「悟浄、私にもそう見えました。」

 

悟浄と三蔵の会話にチラリと目を向けた悟空だが、直ぐに二郎へと目を戻す。

 

(三蔵達は見えなかったんだな。二郎真君が八戒の棍に手を当てて回転させたのを…。)

 

二郎は八戒達が攻撃が当たると確信した意識の隙間に予備動作無しで動いた事で、八戒の攻撃を逸らした事を認識させなかった。

 

しかし悟空は以前に同じ形で攻撃を逸らされた経験があるのでなんとか見えたのだ。

 

「いってぇ~…。」

 

予想外に地を叩いてしまった八戒は手が痺れてしまい、棍を手放してしまった。

 

そんな八戒に二郎は一歩近付く。

 

そして…。

 

「まだ手合わせ中だよ。」

 

その言葉と共に二郎が崩拳を放つと八戒は吹っ飛び、三蔵達の目の前まで転がっていったのだった。

 

 

 

 

「やれやれ、老師も容赦がないな。」

 

黒麒麟の背に乗り、王貴人の幻術で虚空に身を隠している士郎が苦笑いをする。

 

「そうか?あのぐらいしなければあの子達は、中華の外に出た時に倒れてしまうと思うぞ。」

 

自身と同じく黒麒麟の背に乗る王貴人の言葉に士郎はため息を吐く。

 

「『それより急がなくてよいのか?以前と同じく姫一族、姜一族、黄一族を王朝の滅びに巻き込まれぬ様にするのだろう?』」

 

黒麒麟の言葉に士郎と王貴人は目を合わせて頷く。

 

「あぁ、また頼むぞ、黒麒麟。」

「『霊獣遣いの荒い主達だ。』」

「暇をもて余すよりはマシだろう?」

 

王夫妻と黒麒麟は慣れたやり取りに自然と笑い声が上がる。

 

「『それで、先ずはどこに行くのだ?』」

「そうだな…縁もある事だし、黄一族の所に行くとしようか。」

 

士郎の言葉を聞いた黒麒麟は、王夫妻を背に目的の場所に飛んでいくのだった。

 

 

 

 

「師より弓の手解きを受けて数十年…ようやく物に出来た…。」

 

感慨深く手にする弓を見詰めるこの若者は姓を黄、名を忠、字を漢升という者である。

 

「機会があれば我が師、『王士郎』様に今一度弓を見ていただきたいが…。」

 

黄忠は黄飛虎の血を引く黄一族の者である。

 

彼は賊討伐をする初陣で、賊を隠れ蓑にしていた邪仙に捕まった事がある。

 

その時に黄忠は王夫妻に助けられたのだが、黄忠が黄一族の者であると知った士郎は、黄忠に自衛の手段として弓を手解きしたのだ。

 

だが、それも数十年前の出来事である。

 

では何故に黄忠が今も若者の姿であるのか?

 

それは…。

 

「しかし、まさか二郎真君様に若返らせていただけるとは夢にも思わなかった。」

 

そう、二郎のせいである。

 

近年、黄巾党が中華を騒がせる様になると黄忠は乱世を予感していたのだが、既に高齢である己は中華の歴史に名を残せないだろうと嘆いていた。

 

そして数日前、そんな黄忠の前にふらりと二郎が現れると、二郎は黄忠に弓の腕前を見せて欲しいと言った。

 

黄忠は初対面の者の頼みを快く受け入れる程の聖人君子ではないが、本能的なところで二郎の頼みを受け入れるべきだと察して弓の腕前を見せた。

 

すると…。

 

「士郎の教えを守って、良く修行してきたみたいだね。褒美と言ってはなんだけど、一つだけ君の願いを叶えてあげるよ。」

 

この言葉で黄忠は、二郎が二郎真君である事に気が付いた。

 

そこで黄忠は…。

 

「二郎真君様にお願い致します。どうか、私を若返らせてください!」

「構わないけど、どうしてだい?」

「不敬ではありますが、私は近々中華に乱世が訪れると予感しております!この身は既に老い始め、若き日の様な力を発揮出来ませぬ。私は一人の武人として、乱世に己の武を問いたいのです!」

 

こうして黄忠の心意気を気に入った二郎は、若返りの霊薬を与えて今に至る。

 

ちなみに士郎は黄忠が若返った事を知らない。

 

今の若々しい黄忠を見たら、間違いなく頭を抱えるだろう。

 

「二郎真君様が言うには、近いうちに王士郎様がいらっしゃるとの事だ。今一度、弓を確認しておこう。」

 

そうして黄忠が弓を引いていると、程なくして王夫妻が虚空から姿を現す。

 

そして若返った黄忠の姿を見た士郎は頭を抱えたのだった。




次の投稿は13:00の予定です。
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