二郎が玄奘三蔵一行の元を去ってから一ヶ月程経った頃、玄奘三蔵一行は後一息で中華の外にという所まで歩を進めていた。
しかしそこで一行の歩みは完全に止まってしまう。
何故なら一行が中華の外に出るのを牛魔王達が止めているからだ。
「また来やがったな!牛魔王!」
「今日こそは決着をつけて、僕達は天竺に行きます!」
八戒と悟浄が二郎から貰った長柄の武器である宝貝を構える。
そんな二人の前に金角と銀角が対峙する。
「牛魔王、どうしても通してくれないのかしら?」
「通りたくば、私を倒せと何度も言っているであろう?」
「仕方ないわね…悟空、行くわよ!」
「おう!」
目の前に立ちはだかる牛魔王に、悟空と三蔵が立ち向かった。
八戒と悟浄は金角と銀角の二人と互角の戦いを繰り広げるが、悟空と三蔵は牛魔王一人に苦戦してしまう。
「お師匠様!?」
「八戒、早くお師匠様を助けに行きますよ!」
「「させないよ!」」
なんとか援護に向かおうとする八戒と悟浄を金角と銀角は足止めする。
「うわっ!?」
「悟空、大丈夫?!」
牛魔王が放つ雷から三蔵をかばった悟空の身体から焼け焦げた様な臭いが漂う。
「こ、このぐらいで!」
「ふむ、今ので死なぬ様になったか。では、今少し強くしてみるとしよう。」
悟空は歯を食い縛って如意金箍棒で雷を打ち払う。
隙を見て踏み込んだ三蔵が牛魔王に掌を放つ。
しかし…。
「効かぬ!」
腕で薙ぎ払われた三蔵が悟空の近くまで吹き飛ばされる。
「三蔵、大丈夫か?」
「大丈夫よ。ゼンさんに拳法を習っていて本当によかったわ。」
牛魔王に薙ぎ払われる寸前に自分から飛んだ事で、三蔵は受ける衝撃を最小限にしたのだ。
その後、三蔵一行と牛魔王達の戦いは一刻(二時間)程続いた。
精霊の力を持つ悟空達はまだ余力を残しているが、一年程前に本格的に鍛え始めたばかりの三蔵は体力、気力共に限界がきていた。
不意に足を縺れさせた三蔵が地に身体を投げ出してしまう。
「「お師匠様!?」」
八戒と悟浄が必死の形相で助けに向かおうとするが、金角と銀角に阻まれてしまう。
「人にしては良く戦ったほうだ。」
牛魔王が一際大きな雷を造り出す。
悟空が牛魔王を止めようと仕掛けるが、牛魔王が雷を放つ方が早かった。
「三蔵!」
「「お師匠様ぁ!!」」
悟空と八戒達の悲痛な叫びが戦場に響き渡る。
三蔵は襲いくる雷に目を瞑り歯を食い縛る。
そして雷が三蔵の身体を貫こうとしたその時…。
「うん、このぐらいで止めておこうか。」
緊迫した戦場に似合わぬ柔らかな声が響くと突如虚空から一人の男が姿を現し、牛魔王が放った雷を軽く打ち払った。
「…ゼンさん?」
「うん、そうだよ。」
微笑む二郎を見た三蔵は、安堵に包まれて気を失ったのだった。
◆
「…いい匂い。」
鼻腔を擽る香りに誘われ、三蔵が身体を起こす。
「お?三蔵、目が覚めたか。」
「悟空?えっと…?」
「ちょっと待ってて、二郎真君が作った飯を持ってくるから。」
そう言って離れる悟空の背中を、目覚めたばかりで呆然としている三蔵が見送る。
「えっと…ご飯?二郎真君?」
悟空の言葉を反芻する様に三蔵が繰り返す。
「二郎真君?…二郎真君?!」
三蔵が驚きのあまりに大声を上げると、それを耳にした八戒と悟浄が駆け寄ってくるのだった。
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