ギルガメッシュとエルキドゥの力の余波で、辺りには土埃が舞い上がっていた。
「流石に天地開闢の力は凄いものだな。力の余波だけで俺の『水鏡の守護結界』が限界寸前なんだからなぁ…」
『水鏡の守護結界』
これは二郎が使える最強の守護結界である。
二郎の権能である『治水』は『あらゆる水は二郎に害をなさない』という概念を持つが、二郎はその概念を修行で『あらゆる水は二郎を害から守護する』へと昇華させたのだ。
そして、その権能を用いて作り出すのが『水鏡の守護結界』である。
この水鏡の守護結界がある故に、二郎の守りを突破する事は非常に困難である。
だが、最高の触媒の1つである神酒を用いて作った水鏡の守護結界が、今回のギルガメッシュとエルキドゥの戦いの余波だけで突破されそうになったのだ。
「それにエルキドゥのあの力、もの凄い大きな気がエルキドゥに流れ込んでいた。あれは大地の…いや、『星』の力か?」
二郎がギルガメッシュとエルキドゥの戦いの考察をしていると、やがて土埃が晴れていく。
そして戦いの影響で大きなクレーターとなった場所に倒れるギルガメッシュとエルキドゥの姿を見つけると、二郎はため息を吐いた。
「2人で楽しそうに笑っているけど、この後始末は誰がするんだ?」
きっと自分がするんだろうなと思った二郎はまた1つため息を吐くとゆっくりと2人の元に歩み寄っていくのだった。
◆
「フハハハハ!」
「あはははは!」
全力を出しきったギルガメッシュとエルキドゥは、地に倒れたまま爽やかに笑っていた。
笑いを収めたギルガメッシュは力を振り絞って身体を起こすとまだ倒れているエルキドゥを見て話し出す。
「見事だったぞ、エルキドゥ。褒美に霊薬を取らせる。」
そう言うとギルガメッシュは、黄金の波紋から霊薬が入った容器を取り出すが、身体を起こしたエルキドゥは首を横に振る。
「もういいよ、ギルガメッシュ。僕には誰を救うのか選べないから…。」
そう言うとエルキドゥは悲し気に笑う。
「選ぶ必要はないぞ、エルキドゥ。何故なら、我の民は既に救ってあるからな。」
「…え?」
ギルガメッシュの言葉にエルキドゥは呆然とする。
すると、エルキドゥのその反応を見たギルガメッシュが大声で笑い出す。
「ウルクの民は救ってあると言ったのだ!」
「はは…、僕の行動は無駄だったんだね…。」
「フハハハハ!中々の道化っぷりだったぞ、エルキドゥ!」
ギルガメッシュの言葉にエルキドゥは目に見えて落ち込んでしまう。
そのエルキドゥの様子を見て、ギルガメッシュはまた笑い出す。
「エルキドゥをからかうのもそこまでにしときなよ、ギルガメッシュ。」
そんなギルガメッシュに、二郎は制止の声を掛けた。
「それに、ウルクの民を救ったのはギルガメッシュじゃなくて俺なんだけど?」
「友である貴様が救ったのなら、我が救ったのも同然だ!」
「どんな理屈だよ…。まぁ、いいけどね。」
ギルガメッシュのワガママっぷりに、二郎は頭を掻きながら苦笑いをする。
「さて、エルキドゥよ。貴様は霊薬をいらぬと言ったな?」
「…うん、もういらないよ。」
落ち込んでいたエルキドゥは、大きくため息を吐いてからギルガメッシュの言葉に応えた。
「なれば代わりの褒美を与える。エルキドゥよ、我の友になれ!」
ギルガメッシュの言葉にエルキドゥは目を見開く。
「ギルガメッシュ、僕は君の監視役なんだよ?」
「たわけ!その程度の事はとうに知っておるわ!」
エルキドゥはギルガメッシュの言葉に戸惑ってしまう。
そんなエルキドゥの様子にギルガメッシュは苛立ちの様子を見せる。
「エルキドゥよ、貴様は我の友になるのは嫌と言うのか?」
「いや、違うよ!でも僕は…。」
「貴様が何者であろうと関係無い!我は貴様を認めたのだ!我の友になれ!」
ギルガメッシュはボロボロの身体でふらつきながらも立ち上がると、エルキドゥに手を差し伸ばした。
差し伸ばされたギルガメッシュの手を見たエルキドゥは、一度目を瞑ると微笑みながら目を開く。
そして…。
「うん、君が望むなら。」
そう言ってエルキドゥはギルガメッシュの手を取ったのだった。
◆
ギルガメッシュ叙事詩の一節にはこう綴られている。
『エンリルの神託により、エルキドゥはウルクの財を奪うべくギルガメッシュに戦いを挑んだ。』
『野にて始まったギルガメッシュとエルキドゥの戦いは三日三晩に及ぶ激しいものだった。』
『戦いの後にお互いを認めあった2人は、治水の神ゼンの前で友となる事を誓った。』
この一節はギルガメッシュ叙事詩を代表する話として有名である。
そしてこの後にギルガメッシュは、多くの冒険をエルキドゥやゼンと共に
乗り越えていくのだった。
これで本日の投稿は終わりです
また来週お会いしましょう