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諸侯連合が董卓軍に勝利した後の帝との拝謁で、帝から最も多くの言葉を掛けられたのは劉備だった。
同じ血筋であった事もあるが、それ以上に関羽が呂布と互角に渡り合ったのが大きい。
これにより劉備は帝から直々に役を与えられるという名誉を得た。
それを面白く思わない諸侯もいたが帝の御前であった事もあり、その場は無事に解散となる。
さて、董卓軍との戦が終わって役を得た劉備であったが、義勇軍として戦ばかりをしてきたツケと言うべきなのか、役人として政が出来る者が劉備も含めてほとんどいなかった。
毎日の様に中央の役人との折衝やら民の陳情などを受け、戦とは違う役人として領地を治める大変さに劉備と張飛は毎日の様に頭を抱えていた。
まともに政務を行えていたのは私塾を開くぐらいに学がある関羽ぐらいだ。
かつて劉備は黄巾の乱の後も役を得ていたが、その時は一月持たずに中央から来た役人と揉めて一度役を投げ出している。
しかし、今回の役は帝直々に与えられたものなのでむやみに投げ出す事は出来ない。
困り果てていた劉備の元に、多くの部下を連れた呂布が訪れた。
呂布の部下には董卓の下で政務に携わっていた文官の姿もあり、劉備は諸手を上げて呂布一行を歓迎した。
呂布の部下にいた文官のおかげでなんとか領地の政が安定すると、劉備は領地内を荒らす賊の討伐に向かう事にした。
賊の討伐に向かう主な者は劉備、関羽、張遼だ。
張飛と呂布は領地の城で留守番である。
数日経って劉備達が無事に賊の討伐を終えて笑顔で領地の前まで戻ってくると、張飛が額を地に擦り付ける様にして劉備達に頭を下げてきたのだった。
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「玄徳兄貴!雲長兄貴!すまねぇ!呂布に城を奪われちまった!」
額を地に擦り付ける様にして頭を下げる張飛の姿に、劉備は首を傾げる。
「呂布に城を奪われたぁ?翼徳ぅ、どういうこった?」
張飛は劉備達に身振り手振りを交えて説明していく。
張飛の話では政が安定した事と劉備達の賊討伐成功を祝して宴を開こうとしたそうだ。
それで昨日その宴の準備を終えて寝ると、張飛は身一つで外で寝ていたとの事だ。
「う~ん…雲長、張遼、おめぇさん達はどう思う?おいらは呂布が城を奪う様な奴とは思えねぇんだ。」
呂布達を受け入れてから半年程が経つのだが、その間に劉備達は張遼を始めとした元董卓軍の諸将から董卓軍と諸侯連合の戦の経緯を聞いていた。
その事もあって劉備は元董卓軍の者達を全面的に信じる事にしたのだが、賊討伐から戻ってみると張飛が呂布に城を奪われたと言うのだから面を食らっているのだ。
「呂布殿はその様な事をなさる御仁ではありませぬ!」
「兄者、私も呂布はその様な事をするとは思えません。一騎打ちの際に呂布は真っ直ぐな御仁だと感じました。」
張遼と関羽の言葉に劉備は頷く。
しかし現実に張飛は寝着で外に出されている。
どうしたものかと頭を掻いた劉備はため息を吐いてから顔を上げる。
「まぁ、呂布に会ってみるしかねぇやな。」
劉備の言葉に頷いた一行は、呂布がいる城へ向かって歩き始めたのだった。
◆
「りゅ、劉備達は城に入っていい。でも、ちょ、張飛はダメだ。」
城に辿り着いた劉備一行を出迎えた呂布だが、張飛だけは入城を拒否した。
「やいやい!呂布!なんでこの張飛だけ入れねぇってんだ!俺が何をした!」
米神に青筋を浮かべて怒鳴り散らす張飛を呂布は無視する。
そんな呂布の態度に我慢の限界を超えた張飛が呂布に掴み掛かろうとするが、関羽と張遼が抑え込む。
「なぁ、呂布よぉ。なんで翼徳だけ入れねぇのか教えちゃくんねぇか?」
劉備の言葉に呂布はため息を吐いてから答える。
「ちょ、張飛は昨日、宴の為に用意した酒を一人で飲んで酔った。そ、そして暴れて皆を怪我させたから叩き出した。は、反省するまで中に入れない。」
呂布の言葉に心当たりがあるのか、張飛は気まずそうに顔を逸らす。
そんな張飛の頭に劉備は拳骨を落とした。
「いてぇ!?」
「いてぇじゃねぇ!な~にが呂布に城を奪われただぁ!翼徳!罰として向こう三月は酒禁止!そして反省の証として賊の討伐に行ってきやがれ!」
拳骨を落とされた頭が痛むのか頭を擦りながら張飛が劉備に問う。
「げ、玄徳兄貴、宴は?」
「あぁん?!翼徳の参加を許すわけねぇだろ!さっさと賊の討伐に行ってこい!嫌なら義兄弟の契りを解消して荒野に叩き出すからな!」
「そ、そんなぁ…。」
劉備の言葉に張飛が項垂れると、それを見た関羽と張遼が笑い声を上げたのだった。
◆
『張飛 翼徳』
三国志の時代に生きた劉備三義兄弟の末弟である。
小柄ながら筋骨隆々のその身体は、『飛将』の異名を持つ呂布と互角の膂力を持つと謳われた。
そんな張飛だが極度の酒好き故に、酔った上での失敗の逸話が多々残されている。
しかしそれでも義兄弟を始めとした仲間達に見捨てられなかった辺り、張飛は憎めない人柄をしていたのだろう。
『張飛 翼徳』
若き日は酒での失敗が多かった彼だが、多くの経験を積んでいく事で後の時代に名を残す程の名将へと成長していったのだった。
本日は3話投稿します。
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