二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です


第1話

「よく来たな、二郎。久し振りに会えて嬉しいぞ。」

 

空飛ぶ犬というファンタジー生物に乗ってはしゃいでいたら、

いつの間にか寝てしまっていた。

 

そして、寝ている間に伯父上のいる場所についていたようで、

こうして伯父上と謁見している所だ。

 

伯父上の容姿は整えられた顎髭を生やした、三十代半ばぐらいの黒髪、赤目のイケメンである。

 

「はい。俺も会えて嬉しいです、伯父上。」

「そう固くならんでよいぞ、二郎。お前は我の外甥故な。」

 

そう言いながら、伯父上はニッと笑顔を見せた。

 

「さて、呼び出した理由なのだが。二郎よ、お前には道士になってもらう。」

「道士ですか?」

 

知らない言葉に首を傾げると、伯父上が説明をしてくれた。

 

伯父上の説明を俺なりに解釈していく。

 

道士を簡単に言うと、道教という宗教の信者の事だ。

 

では、道教ってどういう教えなのかというと、『宇宙と人生の真理の探究』となる。

 

宇宙と人生の真理の事は置いておいて、道(タオ)とはなんぞやというと、

始まりと終わりを示すもの…とでも言えばいいのかな?

 

道という字の『首』は始まりを意味するらしい。

 

そして残りの部分が終わりを意味するようだ。

 

そういった事を踏まえて、道教の教えの根幹となる道(タオ)の意味を解釈すると、

命の答えを探究するといった感じになる。

 

うん、哲学的過ぎて俺には意味がわからない。

 

それこそ前世の記憶を頼りにするなら、俺には『悟りを開け』とも聞こえてしまう。

 

正直いって無理難題過ぎるだろうと思うのだが、この道教には救済処置的な考えがあるのだ。

 

それは…『答えが出るまで生き続ければいいじゃん』といった考えだ。

 

そう、道教は不老不死を推奨している宗教なのである。

 

不老不死を推奨しているおかげなのか、中華の地に生きる民には、

道教を信仰する者が多いみたいだ。

 

伯父上の話には続きがあって、道教の修行をしている道士が一定以上の修行を身に付けると、

額に第三の目と呼ばれる紋様が浮かぶ様になって『仙人』と名乗る事が許されるらしい。

 

『仙人』かぁ…俺の記憶だと、忍ばない忍者漫画で見た気がするな。

 

それで伯父上は、毎日の様に俺の寝所に侵入を試みている小鬼に、

自分で対処出来る様になるために『仙人』になれだとさ。

 

「お話はわかりました。伯父上、そういう事でしたら喜んで道士になります。

 なにより、面白そうですからね。」

「宇宙と人生の真理の探究を面白いと感じるか。流石は二度目の生を生きる者だな、二郎。」

 

うん、伯父上には俺が転生者だって事がバッチリとバレているんだよね。

 

俺が母上から産まれたばかりで意識が無い頃、俺を転生者と見抜いた伯父上が、

『二度目の人生を生きる男』という意味で『二郎』と名付けたと、

3歳の頃に記憶が戻った俺が、初めて伯父上と会った時に教えてもらった。

 

それを聞いた時は本気で焦ったんだけど、伯父上に

『二郎がどの様な存在であろうと、我の外甥であり、家族である』って言ってもらえて、

俺はガチ泣きしてしまった。

 

その事があったから、俺は転生した事を受け入れて、今生の家族と本当の家族になれたんだ。

 

まぁ、俺がガチ泣きしているのを見た母上が、伯父上を全力で殴り飛ばしたんだけど、

今では伯父上が酒の席で話す笑い話となっている。

 

「さて、二郎よ。お前を導く師を紹介しよう…。太上老君、ここへ。」

「初めまして、僕は太上老君と名乗っている仙人だ。」

 

伯父上に呼ばれて謁見の間に入ってきた人を見ると、緑髪、赤目の年若い青年だった。

 

「二郎よ。太上老君は道教の根幹を造り上げた神であり、その教えを実践する仙人だ。」

 

ファッ!?そんな偉い人が俺の師匠になるの!?

 

…あれ?

 

「伯父上、伯父上は道教の最高神ですよね?」

「太上老君は求道者故に、中華の神々のまとめ役を拒んだのだ。」

「ハッハッハッ!その節はご迷惑をお掛けしましたね、天帝。」

 

太上老君は頭を掻きながら大笑いしている。

 

「少しでも迷惑を掛けたと思うのなら、もう少し霊薬を融通せよ。」

「実はこれっぽっちも悪いと思っておりません。」

「太上老君の言う事よ。」

 

伯父上と太上老君が楽しそうに笑いあっている。

 

「二郎よ、太上老君は1000年以上生きている仙人だ。学べる事は多かろう。励めよ。」

「はい!」

 

こうして、俺の道士としての修行が始まった。

 

前世では憧れるだけだったファンタジーに触れる事が出来る新たな人生に、

俺は子供の様に目を輝かせるのだった。

 

あ、俺、まだ7歳の子供だったわ。




次の投稿は11:00の予定です

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