二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第197話

「まさか五百の弓騎兵で一万の兵を相手取ろうとするとはねぇ…。流石は『天弓』士郎といったところかぁ。」

 

士郎は王貴人と共に劉備達に名乗った後、一つの策を献じた。

 

それは…劉備の言う通りに僅か五百の弓騎兵で曹操軍一万を相手するといったものだ。

 

本来なら死兵で少しでも足止めをすると思われるこの策なのだが、士郎は劉備に向かってこう言い放った。

 

『私達で奴等の足止めをするが…別に倒してしまっても構わんのだろう?』

 

この言葉に劉備は身を震わせた。

 

これが『天弓』の異名を持つ男なのかと…。

 

「劉備、それは間違いだ。士郎がその気になれば、一人で一万を相手取れるぞ。」

「かぁ~、凄いねぇ…。おいらには想像も出来ねぇや。」

「ふふっ、自慢の夫だ。」

 

王貴人の惚気に劉備は苦笑いをする。

 

(なんかおいらも嫁さんが欲しくなってきたな。まぁ、どっかでしっかりと足場を固めねぇと嫁さんを貰う事も出来ねぇか。)

 

事ある度に逃げている様ではおちおち結婚も出来ないと、劉備はため息を吐いた。

 

「さぁ!おいら達は安心して逃げるぞ!なんせ頼りになり過ぎる奴等が殿になってくれてるんだからな!」

 

劉備の声に一万近い民が、追われているとは思えない明るい声で応えたのであった。

 

 

 

 

「呂布、矢の数は気にしなくていい。使った分だけ私が造り出すからな。」

 

呂布が頷くと、士郎は呂布が手に持つ弓に目を向けて『解析』する。

 

呂布が持つ弓は董卓を逃がす折りに二郎から与えられた宝貝である。

 

その名は『方天画弓』という。

 

形状としてはやや波打ち、和弓の様に下が短く上が長い弓だ。

 

更に長い方の先には槍の穂先が付いた特殊な物となっている。

 

宝貝としての力は『不壊』の概念しか付与されていないが、中華一の剛力である呂布にとっては壊れない武器というのは何よりも有難い。

 

生半可な者では引けない程に強い弓だが、槍としても使えるこの『方天画弓』は、今では呂布にとって赤兎馬と共に代えの効かない相棒となっているのだ。

 

(やれやれ、老師は相変わらずだな。)

 

少々依怙贔屓が過ぎると思うが、神とはそんなものだと理解する士郎は苦笑いをするしかない。

 

ちなみに張遼が持つ薙刀の様な武器も二郎に与えられた宝貝である。

 

一通り『解析』を終えた士郎は呂布に目を向ける。

 

「呂布、私が宿を借りていた村なのだが…今あの村には『華佗』がいる。」

 

士郎の言葉に呂布は目を見開く。

 

「劉備に言った私の言葉は冗談ではない。奴等を倒さなければあの村は蹂躙されてしまうからだ。もしあの村が蹂躙されれば…。」

 

士郎はそこで言葉を切ったが、呂布にはしっかりと意味が伝わっていた。

 

「て、徹底的に叩く。」

「あぁ、欲を出して乱取りなど出来ないぐらいに奴等を叩くぞ。」

 

 

 

 

『飛将の撤退戦』

 

三国志の時代に劉備達が袁紹の領地に逃げる際に起きた曹操軍との戦いである。

 

この戦いで呂布は弓騎兵五百を率いて一万の曹操軍を相手に一兵も損なう事無く圧倒的に勝利をした事で、後にその勇姿を称して『飛将』の異名で呼ばれる様になった。

 

また、この戦いの折りに曹操軍を率いていた将である夏侯惇は片目を、夏侯淵は片足を呂布に射抜かれて負傷してしまっている。

 

千にも満たない敗残兵を見た曹操は、呂布の武功を称して次の様に残した。

 

『呂布一人が敵に回れば、我が野望は十年遅れる事になるだろう。』

 

『飛将呂布』

 

現在でも三国志で最強の武将は誰かと語る時に欠かせないこの男は、戦略戦術が重要視される様になった時代に個人の武力で戦場を切り開く者として、多くの人々を魅了するのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。

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