二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第203話

「これで主君に良い報告が出来ます。それでは劉備殿、これで失礼いたします。」

 

見惚れる様な動きで包拳礼をした周瑜が去ると、劉備は安堵の息を吐いた。

 

「あれで良かったか、徐庶?」

「お見事でした、劉備様。どうやら演者の才をお持ちの様で。」

「よせやい、演じるのも見るのも柄じゃねぇよ。」

 

苦笑いをする劉備に徐庶が微笑む。

 

「徐庶よ、孫家と組んでよかったのか?御主の読みでは、奴等は『二虎競食の計』を狙っているのであろう?」

 

『二虎競食の計』を一言で言えば、強者同士を争わせて弱らせる事を狙ったものだ。

 

今回の場合では袁紹と袁術の連合と曹操を争わせる事で、双方を弱らせて利を得るのが孫家の狙いだ。

 

では、孫家の利とは何だろうか?

 

現在の孫家の大願は『先祖伝来の地を取り戻す』というものである。

 

そしてその地なのだが、今は袁術のものとなっている。

 

孫家と比べて袁術は強大だ。

 

少なくとも今の孫家が真っ向から刃向かったら、あっさりと踏み潰されてしまうだろう。

 

それ故に孫家は袁術の力を弱らせるという利を得る為に、今回の策を実行しようというのだ。

 

さて、ここで一番の問題となるのが曹操との戦では孫家が先鋒を任されるであろう事である。

 

如何に袁術を弱らせても、それ以上に自分達が弱ってしまっては意味が無い。

 

そこで孫家は劉備達と組む事で被害を抑えようと考えたのだ。

 

劉備達と組む事を決めたのには幾つか理由がある。

 

一つは先の自軍の被害を抑える為だが、もう一つは劉備軍が袁術軍に被害が出る前に曹操軍を撃退してしまわない様にする為だ。

 

劉備の下には『飛将』と呼ばれる呂布や、その呂布と一騎打ちで互角に渡り合える関羽がいる。

 

この二人がいれば劉備達が曹操軍を撃退してしまうと考えても無理はないだろう。

 

そこで周瑜は次の戦で組むという話とは別に『前線で力を合わせて曹操軍を受け流し、曹操軍を袁術や袁紹の軍にぶつける』といった策を劉備に提案したのだ。

 

そして劉備がその周瑜の提案を受け入れたのが、冒頭のやり取りなのである。

 

「おいおい雲長、おいら達の軍師を信じねぇでどうすんだよ。徐庶はおいら達が束になっても捻り出せねぇ知恵を出してくれる男なんだぜ?」

 

劉備はそう言うが、関羽の心配も無理はないだろう。

 

何故なら、徐庶が劉備に仕えたのはほんの一刻(二時間)前の事なのだから。

 

「劉備様、御心遣いありがとうございます。ですが、関羽殿の心配も無理はないでしょう。私は先刻、臣の末席に加えていただいたばかりなのですから。」

「いいや、徐庶。おいらは徐庶を信じるって決めたんだ。だから徐庶の策を疑う事は絶対にしねぇ。もし徐庶が読み誤っても『徐庶にもそういう事があるんだな。徐庶も失敗するってわかって安心したぜ。』って笑ってやるさ。」

 

劉備の言葉を聞いた徐庶は包拳礼をしながら深々と頭を下げる。

 

(劉備様にお仕えしたのは間違いではなかった…!)

 

感動に打ち震える徐庶を見た関羽が、非礼を詫びる為に頭を下げる。

 

その詫びを受け入れて徐庶も頭を下げると、劉備は場の空気を変える為に柏手を一つ打った。

 

「さて、徐庶は信じるが雲長みてぇに疑問を持つ事もあるわな。そんで疑問を持ったまま戦場に出て働かなかったらたまったもんじゃねぇ。だろ、翼徳?」

「玄徳兄貴、なんで俺に振るんだよ。」

「おめぇが一番やりそうだからだよ。」

 

劉備と張飛のやり取りに、場にいる一同が頷く。

 

「うむ、翼徳ならばありうる。」

「ちょ、張飛ならやる。」

「残念ながら、あるでしょうな。」

「ひでぇや!」

 

関羽、呂布、張遼の言葉に張飛が頭を抱えながら叫ぶと、徐庶は口を手で押さえて笑いを堪える。

 

空気が変わったのを感じ取った劉備は、話をする為に咳払いを一つする。

 

「んんっ!徐庶よぉ、孫家の策は上手くいくのか?上手くいったとしても、なんかおいら達のうまみは少ねぇ様に思うんだが?」

「半分は上手くいくでしょう。そして劉備様が懸念される通りに、我等に利はほとんどありません。」

 

半分と聞いて劉備達は首を傾げる。

 

「此度の袁家の連合ですが、どちらが盟主となると思いますか?」

「あ~…袁紹か?」

「経緯はどうであれ、おそらくそうなるでしょう。では、袁紹が盟主として顔を立てるにはどうなさいますか?」

 

徐庶の問いに劉備達は首を捻る。

 

「連合の兵糧を用意するのでないか?」

「関羽殿のおっしゃる通りに、袁紹は袁家連合の兵糧のほとんどを用意するでしょう。」

「おい徐庶、それの何が問題だってんでい。」

 

既に頭が痒くなっている張飛が、頭を掻きながら徐庶に問う。

 

「曹操は帝の御身を有して中華でも屈指の強者となりましたが、その力はまだ袁家には及びません。ですので、正面からの勝負は出来ません。では、曹操は勝つために何をしてくるでしょうか?」

 

教え子に問い掛けるかの様な徐庶の言葉に、張飛は音を上げて考えるのを止めた。

 

「ひょ、兵糧を狙う。」

「その通りです。呂布殿、お見事ですね。」

「ま、前に、董卓に教えてもらった。」

 

呂布が嬉しそうに微笑みながら答えると、張飛は裏切り者を見るように驚いた顔で呂布を見た。

 

「袁紹の兵糧が失われれば、戦後にその損失を埋める為に、我等の領地も税の負担が増えるかと。」

「おいおい、勘弁してくれよ。おいら達には兵が多く生き残る以外にうまみがねぇじゃねぇか。」

 

そう言って劉備が天を仰ぐと、関羽達はため息を吐く。

 

「徐庶、なんとかなんねぇのか?」

「もちろん、策は用意してございます。」

 

すがる様に問い掛けてくる劉備に、徐庶は笑顔で答える。

 

期待が込められた視線が徐庶に集まる。

 

「この策の要となるのは、張飛殿と張遼殿です。」

 

徐庶が策を語り始めると皆は驚き、やがて笑顔になっていったのだった。




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