二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です。


第204話

袁紹、袁術連合と曹操軍がそれぞれ陣を敷き対峙している。

 

そんな中で孫家と共に先陣に立つ劉備は、徐庶の言葉を思い出していた。

 

『我等の狙いを気取られるわけにはいきません。その為、袁紹に先陣を命じられた際には私達の最高戦力である呂布殿と関羽殿を配します。これで曹家だけでなく、袁家と孫家の耳目も御二人に集める事が出来るでしょう。呂布殿と関羽殿にはそれが出来るだけの実と名がありますからね。』

 

『呂布殿と関羽殿には先陣で戦場の耳目を集める為に御活躍していただきますが、活躍し過ぎてはいけません。孫家との約を違えてしまいますし、曹操が早々と手仕舞いしてしまうかもしれませんからね。』

 

『そこで呂布殿と関羽殿は、右翼から曹操軍を左に押し込む様に仕掛けてください。ただし御二人同時ではなく、円を描く様にして入れ替わりながらです。この動きには幾つかの理由があります。』

 

『一つ目の理由は御二人の内一人の手を空けておくことで、有事の際には直ぐに劉備様の元に駆け付けられる様にする為です。戦場では何が起きても不思議ではありませんから当然の配慮です。』

 

『二つ目の理由ですが、これは自分達だけおいしい思いをしようとした孫家への意趣返しですね。

曹操軍を左に押し込む事で、我等の左に位置する孫家に曹操軍を押し付けようというわけです。』

 

『我等に合わせ孫家が左翼から曹操軍を押し込む事が出来れば、陣が乱れた曹操軍の先陣を袁紹軍と袁術軍に流せます。まぁ、そうならなくてもそれは孫家が力不足だっただけなので、もし孫家が多くの被害が出たと戦後に我等を非難しても向こうの恥になるだけですね。』

 

『最後の理由ですが、御二人が同時に仕掛けると圧が強くなりすぎて、曹操軍の先陣が完全に崩壊してしまうからです。こうなると曹操は本隊に被害が出る前に別動隊と共に撤退してしまうでしょう。これは後々に我等にとって一番よろしくない事態となります。』

 

『曹操軍を撃退し面目を立てた袁家両家は無理に曹操軍と戦をしないでしょう。袁家にはそれだけの余力がありますからね。そして曹操は帝の権威を利用して更に力を高める為の時間を必要としています。』

 

『袁家と曹操が再び戦を行うのは…おそらく十年後となるでしょう。それだけの時間、袁家と曹家が力を蓄えたら、次代の覇者を争うのは袁紹、袁術、曹操の三人となってしまうでしょう。』

 

『それを防いで我等の大望を叶える為には、曹操軍に痛撃を与え、袁紹の客将という立場から堂々と独立出来るだけの功を上げねばなりません。我等は諸侯と比べてまだまだ小さな存在です。曹操が余力を残した状態で我等が袁紹から独立をしたら、簡単に曹操に潰されてしまうでしょう。それ故に、此度の戦では確実に曹操軍に痛撃を与える必要があります。』

 

『その為には呂布殿と関羽殿が活躍し過ぎてはいけないのです。これが呂布殿と関羽殿を分けて曹操軍に当てる最大の理由ですね。』

 

ここまで思い出したところで、劉備は頭を掻く。

 

「戦一つでこんなに考えるとはなぁ…。軍師になる奴ってのは、おいらとは頭の出来が違い過ぎるぜ。」

 

頼もしい軍師が仲間になったと、劉備は笑みを浮かべる。

 

「それでも徐庶は自分よりも頭がいいのがいるって言うんだからな。まったく、中華は広いもんだぜ。」

 

そう言いながら肩を竦めた劉備は、開戦の時を待ちながら曹操軍を眺めるのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。

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