二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です。


第206話

袁家連合と曹操軍の戦は袁家連合の大勝で終わった。

 

帰還した兵が出陣時の二割という大敗をした曹操は、袁家との和睦の為に大いに出費を強いられる事となった。

 

しかし一時国力が下がっても帝の身を有していれば、時間は掛かっても回復可能である。

 

それ故に曹操は袁家の要求を大抵は受け入れると判断した。

 

そんな中で袁家と曹操の戦で第一の功を上げた劉備は、報酬として曹操に奪われた旧領を要求した。

 

この要求は劉備の事を面白く思わない袁紹の重臣が、早く劉備に出ていって貰いたいからと熱心に曹操と交渉した。

 

曹操としても袁紹の庇護下に劉備がいると色々と面倒であったので、相応に駆け引きをしてから領地を渡した。

 

そしてかつての領地を取り戻した劉備は、客将から一介の領主へと返り咲いたのだった。

 

 

 

 

「うめぇ!こんなうめぇ酒は初めてだぜ!」

 

劉備の領主復帰を祝う宴で酒に舌鼓を打っているのは孫策である。

 

孫策は論功交渉が終わり自領へと帰る途中に気紛れで劉備の領地に寄ったのだが、折良く宴が開かれるとあって参加させて貰ったのだ。

 

「孫策殿、いい飲みっぷりだなぁ。」

「独り身最後の酒だからな。たっぷりと味わわねぇと勿体ねぇだろ、劉備殿。」

 

孫策と杯を酌み交わしている劉備は、まだ二十歳そこそこの若者でありながら一家を率いる身の孫策に感心していた。

 

今でこそ領主としてそれなりにこなせる様になった劉備だが、昔の自分には孫策と同じ様に一家を纏める事は出来ないだろうと思っている。

 

さらに一家を背負っている気負いを感じさせない気っ風の良さを見せる孫策を、劉備は好ましく感じていた。

 

「独り身最後ってこたぁ、領地に帰ったら身を固めるのかい?」

「後継ぎをこさえるのも家長の仕事だとさ。老臣達が口を揃えて五月蝿くてな。」

「かぁ~羨ましいねぇ!おいらにはそんな浮いた話は欠片もねぇぞ!」

 

頭を抱えて悶える様におどける劉備を見て、孫策は笑い声を上げる。

 

孫策はこの気取らない劉備という男を好ましく感じた。

 

だからこそ孫策は次の言葉を言ったのだろう。

 

孫策が何を言ったか?

 

それは…。

 

「劉備殿、俺の妹をもらってくんねぇか?」

 

孫策のこの一言で、騒がしかった宴が一瞬で沈黙したのだった。

 

 

 

 

「伯符!宴の場とはいえ、冗談では済まぬ事もあるんだぞ!」

 

宴が終わると用意された宿場に移動した孫策は、親友にして片腕でもある周瑜に詰め寄られていた。

 

「公瑾、俺は尚香を劉備殿の嫁にする事は勢いで言ったが、冗談のつもりはねぇぜ。」

「だが尚香は孫家の女だ。政略的に意味のある婚姻でなければ、宿老達を納得させられんぞ。」

「そこをなんとかするのが、公瑾の仕事だろ?」

 

己が親友にして主でもある孫策の物言いに、周瑜はため息を吐きながら頭を抱える。

 

「俺の勘じゃあ、そう悪いもんじゃあねぇと思うんだがな。」

「はぁ…とりあえず宿老の説得に動くが、時間は掛かるぞ。」

「それでいいさ。頼んだぜ、公瑾。」

 

なにかと先走ったり無茶振りをする己の主に、周瑜はまた大きなため息を吐いたのだった。

 

 

 

 

「おいらが結婚かぁ…皆、どう思う?」

 

宴が終わった後、劉備は執務室に主だった者を集めて相談を始めた。

 

「け、結婚すればいい。守る者が出来れば、気も引き締まる。」

「呂布よ、それはお主が器量良しの嫁を持っているから言えるのだ。もしこれが、孫家が内から我等を崩そうとする策だったらどうする?」

 

呂布の言葉に反論したのは関羽だ。

 

関羽は先の戦で出し抜かれた孫家が、意趣返しを考えているのではないかと思ったのだ。

 

「玄徳兄貴が結婚するのは反対じゃねぇけどよ、政略やらは大丈夫なのか?」

「おぉ?翼徳からそんな言葉を聞けるたぁ思わなかったぜ。」

「へへっ、俺だってちっとは成長してるのさ。」

 

劉備が嬉しそうに笑うと、張飛は照れ臭そうに頭を掻く。

 

「徐庶殿、如何思われる?」

 

張遼が問い掛けると、皆の注目が徐庶に集まる。

 

「そうですね…あまり心配はいらないと思います。」

「へぇ、そうなのか?」

「袁術の下にいる孫家がその支配から抜け出すには、袁術が躓く等の何かしらのキッカケが必要です。そしてキッカケが訪れて事を起こす際には、自家以外に頼れる勢力が必要でしょう。」

「それがおいら達ってわけか。」

 

劉備は納得を示すが、関羽と張遼には少しの疑問が残る。

 

「徐庶殿、袁術は強大だが…そのキッカケは訪れるのか?」

「袁紹と袁術は同じ袁家ですが、どちらが上の立場なのかと常にいがみあっています。これまで両家は力に訴えた争いをしてきませんでしたが、曹操が大人しくなった今は争いが起きてもおかしくありません。おそらくは、曹操に代わる帝の後見人の座を賭けて争いが起きるでしょう。」

 

劉備達は一度顔を見合わせてから、徐庶へと目を向ける。

 

「徐庶、お前さんの読みではどのぐらいで袁家は争うんだい?」

「三年といったところかと。それ以上の時を掛けては、曹操から帝の御身を得る事は難事となります。袁紹と袁術がお互いに勝つ為の入念な準備をしつつ、曹操の飛躍を阻むにはこれが限界です。」

 

徐庶の話を聞き終えた劉備達は、劉備の婚姻についてどうするか本格的に話し合い始めたのだった。




次の投稿は11:00の予定です

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