二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第207話

劉備帰還の宴が終わった翌日、孫策達は自領に帰っていった。

 

そして孫家の末妹である孫尚香の嫁入り話については先送りされる事になった。

 

何故ならば、これから両家共に物凄く忙しくなるからだ。

 

かつての領地を治める劉備は内政に関しては然程大きな問題は無いが、一領主となった事で外交や軍政を一からやり直さなければならない。

 

対して孫家なのだが、先の戦の武功で新たに得た領地が大きな問題となっていた。

 

孫家が得た新たな領地は袁術から割譲されたものなのだが、この領地…元々は治安が悪すぎてかつての孫家では治めきれず、袁術に没収されたものなのだ。

 

袁術側の思惑はこうだ。

 

先の戦で武功を上げた以上は、それに適する褒美を与えねばならない。

 

しかし袁紹との戦に向けての準備に集中したいのに、内憂である孫家の力が上がるのは面白くない。

 

そこで袁術は張勲の進言を受け入れて、面倒な領地を孫家に割譲したのだ。

 

実入りはそれほどないのに治安維持で手間が掛かる…そんな場所を孫家に与えれば、自分達は袁紹との戦の準備に集中出来るし、褒美を与えた上で孫家の伸長を抑える事が出来る。

 

一石三鳥の妙案だった。

 

もっとも孫策達は、袁術達の狙いに気付いている。

 

だがこの領地は先祖伝来の地の一部なので、文句を言わずに受け入れたのだ。

 

そんなこんなで孫策達が自領に戻り、劉備が一領主となってから三ヶ月程が過ぎた頃、一人の男が劉備の元に仕官にやって来た。

 

その男は法正という者だ。

 

この法正という男は非常に優秀なのだが言動や行動に問題があり、仕官した先々で疎まれて放逐されてきた経歴を持つ。

 

しかし劉備はそんな法正の仕官を快く受け入れた。

 

劉備は法正に『仕事さえちゃんとやりゃあ、昼間っから酒を飲もうと構わねぇさ。』と言い、法正の言動や行動を一切咎めなかった。

 

この職場環境に法正は感心した。

 

そして仕官をしてから三ヶ月後、慇懃無礼な態度ではあったが、法正は劉備に忠誠を誓った。

 

この後に、軍師として政全般を担っていた徐庶は、法正に内政を全面的に任せる事にした。

 

法正は自身に劣らぬ能力を持つと認めたからだ。

 

こうして軍政に専念した徐庶なのだが、彼の仕事が楽にならなかった。

 

それは徐庶が優秀であったため、内政の分の手が空けばそれだけ他でやれる事が増えてしまったからだ。

 

そして劉備が一領主となってから一年程が過ぎた頃、徐庶はある事を決意して劉備に願い出たのであった。

 

 

 

 

「おいらに会って欲しい奴がいるって?」

 

劉備の執務室に、目に大きな隈をこさえた徐庶がやって来ていた。

 

「はい…お恥ずかしながら、私一人では軍政を担いきれませぬ。故に、私の他に軍政を任せられる者が欲しいのです。」

 

劉備は徐庶の目の隈を見て苦笑いをした。

 

(法正みたいに適当に力を抜きゃいいんだがなぁ…。)

 

色々なところに仕官をして経験を積んだ法正は、人を使うのがとても達者だった。

 

それ故に内政全般を担っても徐庶の様に疲弊していない。

 

対して徐庶はまだまだ経験が浅い若者で優秀であるが故に、他者に頼るのを良しとしないところがあった。

 

その徐庶が誰かを頼ろうとしているのだ。

 

劉備は徐庶が一杯一杯なのだろうと察した。

 

「それで徐庶が楽になるってんなら喜んで会うさ。で、誰と会えばいいんだい?」

「水鏡塾で出会った私の友で、諸葛亮という者です。」

「諸葛亮?噂は聞いた事があんなぁ。」

 

劉備が聞いた噂は名だたる諸侯の勧誘を、諸葛亮が断っているというものである。

 

「徐庶、おいらはどうすればいいんだ?」

「御手数ですが、劉備様から諸葛亮に会いに行っていただけませんか?」

「そいつは構わねぇが…おいらが行っても、諸葛亮に会って貰えるのか?」

「紹介状を書いておきました。これを渡せば諸葛亮も劉備様を無下にせぬかと…。」

 

徐庶から紹介状を受け取った劉備は、早速とばかりに動き出したのだった。




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