袁家の動きを掴んで開いた軍議の後、諸葛亮は使者の任を申し使り、護衛の張遼と100人の兵と共に孫策の元に向かおうとしていた。
しかしそんな二人の元に予期せぬ者が現れた。
それは…。
「文遠様~。」
呂布の長女である玲綺だ。
「玲綺殿、どうなされました?」
「私も一緒に行きます!」
晴れやかな笑顔でそう告げてくる玲綺の姿に、張遼は小さくため息を吐く。
「玲綺殿、兎を狩りに行くのとは違うのですぞ?我等は劉備様から承った御役目を果たしに行くのです。」
「もちろんわかっています。だからちゃんと、御父様と劉備様から許可を貰ってきています。」
用意周到な玲綺の行動に張遼は頭を抱えた。
「わかりました。しかし、玲綺殿は馬に乗っておりませんがどうなさるのですか?」
「えっと…それは…。」
幼いと言える年齢の女子の玲綺には、まだ馬は与えられていない。
呂布譲りの弓術と馬術の才があっても、それを十全に活かせるだけの経験がまだ無いからだ。
「ふむ…では、玲綺殿は張遼殿の前に乗せて差し上げたら如何ですか?」
「諸葛亮殿?!」
諸葛亮の申し出に玲綺は華開いた様な笑顔を浮かべ、張遼は驚いて目を見開く。
「張遼殿は日常ではそうして玲綺殿に馬術を教えてらっしゃるのでしょう?ならば特に問題は無いのでは?」
「ですが、此度の任は我等の今後を決める大事な…。」
「私の兄が孫家に仕えているのですが、兄は孫家に重用されています。なので多少の事は融通が効きますよ。」
諸葛亮がそう言うと、張遼は大きくため息を吐いた。
「仕方ありませぬな。玲綺殿、御手を。」
一度下馬をした張遼は、愛馬に玲綺を乗せてから自らも騎乗する。
張遼の腕の中に収まった玲綺は、御満悦な表情を浮かべていた。
(張遼殿も鈍い御方ですね。まだ幼いからと油断しているのでしょうか?それはともかく、私もいつの間にか外堀を埋められてしまわぬ様に気をつけましょう。)
事の真相を知る諸葛亮は、張遼に気取られぬ様に小さくため息を吐いたのだった。
◆
『呂玲綺』
呂布と愛妻の貂蝉の間に産まれた長女である。
幼くして弓を取れば一矢で野兎を仕止め、馬に乗れば大人顔負けの馬術を披露したと残されている。
更に成長した後の呂玲綺は男性達に交じって戦場に出向き、男性顔負けの武功を上げて、一人の将としても名を残している。
これらの事から呂玲綺は男勝りな女性と思われがちだが、そんな彼女には幼き頃から女性としての強かさを発揮していたエピソードが残されている。
劉備が後に妻となる孫尚香を娶る為の交渉に諸葛亮と張遼を送り出した際に、呂玲綺は父である呂布と主である劉備に直談判をして、この交渉に同行する許可を得ている。
当時まだ十に満たなかった玲綺の歳に見合わないこの行動力は、『流石は飛将の娘』と劉備を含めた諸将を大いに笑わせた。
既にこの頃から張遼は呂玲綺に外堀を埋められ始めていたのだが、後々までその事に気付かず、後年に呂玲綺を嫁に取る話が出た時には大いに頭を抱えたのであった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。