孫家が治める領地に辿り着いた諸葛亮と張遼は、諸葛亮の兄である諸葛謹の縁を頼って孫策と会う事に成功する。
そして交渉により劉備と孫尚香の婚姻の密約を結ぶと、諸葛亮と張遼の二人は自領へと戻っていった。
「諸葛亮殿、密約でよろしかったので?」
「えぇ、孫家が袁紹と袁術の戦の隙をつけるとは限りませんからね。もっとも、孫家側も我々が事を成せるかに疑問を持っているので御相子でしょう。」
この様な会話をしながら自領に戻った二人が劉備に報告を済ませると、やがて袁紹と袁術が軍を発したとの情報が中華を駆け巡ったのだった。
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「そんじゃおいら達も動くとするかね。法正、留守は頼んだぜ。」
「安んじてお任せあれ。」
領地を法正に預けた劉備達は軍を進める。
そして徐庶の策通りに目的の地を接収する事に成功した。
「さぁて、孫家の方はどんな具合なんだろうな?」
劉備がぽつりと呟いた頃、孫家は死闘を繰り広げていた。
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「掛かれ!掛かれ!掛かれ!」
孫家の宿将である黄蓋の蛮声が戦場に響き渡る。
その蛮声に感化されたのか孫策が身体を疼かせるが、周瑜が孫策の肩に手を置いて落ち着かせた。
「悪いな、公瑾。」
「まったく…少しは総大将らしく腰を据えられる様になれ。」
「仕方ねぇだろ?これが俺の性分だからな。」
周瑜は親友にして主君である孫策の言葉に呆れる様にため息を吐く。
「それで、首尾はどうだ?」
「予想よりも手こずっている。袁紹との戦に主戦力を注ぎ込んでなおこの戦力だからな。」
先祖伝来の地を取り戻す為に、孫策達は袁術の留守の間に袁術の領地を攻めている。
外から見れば立派な反逆だが、袁紹が勝利すると予測した孫家は迷う事なく行動に移していた。
「時間は掛かるだろうが、何とかなんだろ?」
「あぁ、皆張り切っているからな。」
孫家の悲願を果たさんと孫家の諸将は大いに奮戦を続けている。
この戦に勝利すれば、例え袁術が袁紹との戦に勝利しても何とか出来る算段があるからだ。
「それより伯符、尚香の説得は終わったのか?」
「おいおい、そいつは公瑾の仕事だろ?」
お互いに一番の難事が残っている事を知ると、周囲に気取られぬ様にため息を吐いたのであった。
◆
「そうか、袁紹が勝ったか。」
袁紹と袁術の戦の結果を聞いた曹操は眉を寄せる。
(先の大敗の補填はまだ済んでおらぬ。さて…どうするか?)
今後の指針に悩む曹操の元に二つの情報がもたらされる。
それは劉備と孫策の情報だった。
「わかった。下がってよい。」
人を下がらせた曹操は椅子に深く腰を下ろして黙考する。
(孫策の動きは読めていた。孫家の悲願を果たさんとすれば、この機を逃す筈がないからな。だが、劉備の目的は何だ?あの方角には奴と同じ劉姓の劉焉がいるが…同族のよしみで同盟でも結ぶつもりか?)
顎髭を撫でながら、曹操は更なる黙考を続ける。
(いや、あるいは肥沃なあの地を手にするつもりかもしれんな。だが、劉備に同族を食らう気概があるのか?そうであるならば厄介な存在になるが…。)
そこまで考えた曹操は首を横に振る。
「まぁ、よい。それならそれで楽しみが増えるというものよ。我が覇道が容易く成ってしまってはつまらぬからな。」
背もたれに身体を預けた曹操は天を仰ぐ。
「先ずは袁紹、貴様からだ。呂布と関羽がおらぬのなら勝算は十分にある。そして奴をたいらげたのならば…やがて中華は俺の物となるのだ。」
込み上げてくる笑いを堪えた曹操は虚空を見詰める。
その曹操の姿は覇者の威厳に満ちていたのだった。
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