二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第214話

孫尚香が劉備へ結婚を言い寄ると劉備は大いに慌て、なんとか孫尚香を宥めようとしたのだが、結局は押しきられて結婚する事になった。

 

しかし劉備は孫尚香に若い年齢での出産の危険性を王夫妻に教えられたと伝えて、なんとか夫婦の営みの回避に成功する事が出来た。

 

もっとも、代わりに王夫婦の事を根掘り葉掘り聞かれる羽目になったのだが…。

 

「ねぇ、玄徳様。王士郎様と王貴人様はどこにいらっしゃるの?」

「いや、おいらに聞かれてもわかんねぇって…。」

 

押しの強い孫尚香にたじたじな劉備の姿を見て、関羽を始めとした皆は大いに笑った。

 

そして劉備のこの姿を見た領民達の間では結婚への意欲が高まり、どんどん領地は豊かになっていった。

 

戦でも勝利を続ける劉備達は、今の中華で最も勢いのある勢力と言えるだろう。

 

また劉備へ孫尚香を嫁に出した孫家も着々と力をつけていっていた。

 

袁術はそんな孫家を咎めようとしたが、先の袁紹との戦の傷は大きく、孫家の伸長を止める事は出来なかった。

 

大事な局面では同盟を結んだ劉備の力を借り、袁術との戦で勝利を重ねて少しずつ領地を広げていく。

 

孫家の勢いは袁術の下で溜めた鬱憤を晴らす様に止まらない。

 

そんな劉備と孫家に対して曹操は伸び悩んでいた。

 

曹操が対する勢力は、名実共に中華筆頭の勢力となった袁紹である。

 

曹操は幾度も軍を発するが決定的な勝利を得られない。

 

これは袁紹の元にいる文醜と顔良が原因である。

 

猛将である文醜の武勇と良将である顔良の知勇は、曹操軍の名だたる諸将を尽く跳ね返した。

 

曹操は二人を調略しようとするが、二人の忠誠心は微塵も揺るがず失敗に終わった。

 

事ここに至り曹操は現段階での袁紹への勝利を諦め、負けぬ戦いに移行した。

 

そうして時間を稼いで帝を動かすと、曹操は袁紹と和睦したのだった。

 

 

 

 

(やはり、あそこで呂布を手に入れられなかったのが悔やまれるな…。)

 

袁紹との決着をつけられなかった曹操は、何故今の現状に至ったのかを思考していた。

 

(いや、あの決戦での失敗が今に響いているのだろう。たしか…徐庶だったな?)

 

戦場で指揮を取る軍師の不在。

 

それが今の己に足りぬものだと答えを出す。

 

「誰か在るか?」

 

曹操の言葉に、一人の配下が応える。

 

「劉備の元にいる軍師の徐庶を調べよ。可能であるならば調略し、俺の元に連れてくるのだ。」

 

命を受けた配下が下がると、曹操は天を見上げる。

 

「そう言えば…公孫瓚の所にも、優秀な客将がいると聞いた事があるな。」

 

曹操の悪癖である人材収集癖が鎌首をもたげる。

 

思いを巡らせる曹操の顔は、愉悦に満ちていたのだった。

 

 

 

 

曹操が徐庶への調略を命じた頃、劉備は己の領地にて孫尚香と共に狩りに出ていた。

 

「惜しい!劉備様、もう一射よ!」

「勘弁してくれよぉ。おいら、武はからっきしなんだぜぇ。」

 

逢い引きを楽しむ二人を、一時の休息を求めて領地に訪れていた王夫妻が微笑みながら見守っている。

 

そんな王夫妻に、たまには外に出るという名目で同行していた法正が話し掛けた。

 

「王士郎様、王貴人様、ちょっといいですかね?」

「あぁ、構わない。」

「今の御二人は何か役目がお有りで?」

「いや、特には無い。」

 

王貴人の了承を得て法正が問い掛けると、士郎はそう答えた。

 

「厚かましいのは承知ですが、一つ頼まれていただけませんか?」

「何を頼みたいのかね?」

「一人、うちの領地に連れてきてもらいたいのですよ。」

 

法正の言葉に士郎は思考を巡らせる。

 

そして一つの答えを出した。

 

「調略への対策…といったところか。」

「流石は『天弓士郎』様、御察しの通りで。」

「どこが仕掛けてくると?」

「曹操辺りでしょうねぇ。」

 

士郎と法正の会話を、王貴人は黙して聞いていく。

 

「なんせ奴さんは袁紹に勝ちきれませんでした。なら、奴さんは勝つ為に新たな人材を求めるでしょうよ。」

「そうなるだろうな。では、徐庶の御母堂を連れてくればいいかね?」

「えぇ、頼めますかい?」

「あぁ、引き受けよう。一時の休息をさせてもらった代価としてな。」

 

トントン拍子に話が進むと、法正は安堵の笑みを浮かべた。

 

「いやぁ、助かります。奴さんを刺激しない為にも表だって動けないもんでして。」

「しかし、よく気付いたものだ。」

「優秀な仲間が多くて暇なもんでしてね。考える時間はたっぷりあるんですよ。」

 

王貴人は法正に太公望と同じ気質を感じていた。

 

(なるほど、優秀な怠け者に面倒を押し付けられたのか。まったく…そういう所は変わらないな、士郎。)

 

かつての光景を思い出した王貴人は小さくため息を吐くが、その表情はどこか嬉しそうなものなのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。

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