二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です。


第220話

張郃が劉備の配下となって数年経つと、袁紹は曹操に敗れて、袁術は孫策に敗れて勢力としての地盤を失った。

 

だが袁紹と袁術は命だけは拾い、その身を僅かな配下と共に劉備の元へと寄せた。

 

二人が劉備の元へと寄せた事で一悶着があったが、袁紹は内部争いに心底辟易して袁家の再興を拒み、袁術も暮らしに不自由せねば再興を望まないと言って誓詞を書いた事で、この騒動は一応の収まりをみせた。

 

袁紹を打倒した曹操は邪魔者がいなくなった事で、その勢力を急激に伸ばしていった。

 

袁紹を打倒してから僅か7年で、中華を南北に分割した際の北の部分ほぼ全てを勢力下に治めた。

 

残すところは涼州の馬家だけだが、それも時間の問題だろう。

 

孫策は袁術を打倒した事で念願の孫家の地の大半を取り戻したのだが、父の仇を討つべく劉表に戦いを挑んだ際に、一つの矢に射抜かれて帰らぬ人となってしまった。

 

その後は孫権が孫家を継ぎ、内政に勤しんでいる。

 

そして多くの優秀な仲間達に恵まれた劉備は、淀みなく蜀の地を完全に手中にした。

 

こうして中華は後の世で『三国時代』と呼ばれる状況となったのであった。

 

 

 

 

「さて…どうしたもんかねぇ?」

 

中華で三指に入る程の有力者となった劉備の言葉に、法正が答える。

 

「肥沃な蜀の地を手にしましたからなぁ。定石では内政に励んで力を蓄えるところでしょう。」

「孫権殿に頼まれてる戦の合力はどうすんだい?」

 

劉備が手にしている書状には、劉表との戦で力を貸して欲しいと孫権の直筆で書かれている。

 

愛する妻の兄直筆の書状とあって、劉備はどうしたものかと悩んでいるのだ。

 

「劉表の下には『名将厳顔』、『弓将黄忠』がおります。合力の戦といえど、片手間で出来る相手ではありませぬ。」

 

徐庶の言葉に皆が頷く。

 

『名将厳顔』は見事な用兵で孫家軍と渡り合った男であり、『弓将黄忠』は『小覇王』と呼ばれるまでに成長した孫策を一矢で仕止める弓の腕前を持った男だ。

 

油断をしたら孫策の様に逆に食われてしまうだろう。

 

「孫策殿の仇討ち戦となれば、おいら達に実入りはねぇよなぁ?」

「劉表の土地を手にするには孫家を出し抜く必要がありますが…。奥方様の御実家と懇意な関係を続けるおつもりならば、出し抜くのは止めた方がよろしいですね。」

「おいらは尚香と離縁する気は欠片もねぇぞ。孫家を出し抜くのは却下だ。」

 

諸葛亮をジト目で劉備が睨むと、皆が笑いを堪える。

 

「土地を貰えぬとあれば人を貰うとしますか。」

「人を?法正、いったい誰を貰うってんだい?」

「先に名が上がった厳顔殿と黄忠殿といったとこですかな。」

 

法正の言葉を受けて皆がそれぞれ思考を巡らせる中で、法正は言葉を続けていく。

 

「弓将黄忠殿の相手を呂布殿に、名将厳顔殿の相手を関羽殿に引き受けていただければ、相手を討ち取る事なく降す事も不可能ではないと愚考しますが?」

 

法正の言葉を受けて皆が行けるのではと思い始めたが、そこに関羽が待ったをかけた。

 

「お待ちを。願わくば弓将黄忠の相手を私にお任せいただきたく。」

「理由をお聞かせ願えますかな?」

「黄忠殿は王士郎様の弟子を公言していると聞く。楊ゼン様に武の手解きを受けたこの身としては、是非とも黄忠殿と武を競いたいのだ。」

 

関羽は数年前の宴で己の師が武神である事を知る機会があった。

 

それからというもの関羽はより一層鍛練に励み、その武の腕前は近接戦闘において、手合わせで呂布から一本奪う程にまで成長したのだ。

 

もっともその一本を奪われてからは呂布も近接戦闘の鍛練に励んで腕を上げ、関羽から手合わせで一本を奪い返しているので二人の実力は拮抗していると言えるだろう。

 

法正は関羽の目をジッと見詰める。

 

関羽も視線を逸らさずに法正を見返した。

 

「貸し一つといったとこですかな?」

「恩にきる。」

 

法正は微笑むと、徐庶と諸葛亮を交えて策を練り始めたのだった。




本日は4話投稿します。

次の投稿は9:00の予定です。

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