赤壁の戦いで曹操が散った事で、曹家では後継者争いが起こった。
これは曹操が自身の後継者を明確に指名していなかった事に起因している。
正室、側室だけでなく、愛人に及ぶまで己が子を後継者にと参加すると、曹家の後継者争いは血で血を洗う骨肉の争いとなった。
この後継者争いは中華の歴史上でも屈指の大きな争いとなり、曹家の力を著しく落としてしまった。
そしてそれを見逃す程、劉備は甘くなかった。
劉備は可能な限り戦力を動員し、次々と曹操の領土を攻めとっていく。
孫権も動こうとしたが、軍師である周瑜が病で床に臥してしまった事で初動が遅れてしまった。
曹家軍も赤壁の戦いを生き残った夏侯惇を始めとした諸将が食い止めようと動こうとするが、曹操の後継者争いは過激化するばかりで、まともな戦力を用意する事が出来なかった。
すると、広大な曹家の領土は僅か5年で、残すは洛陽のみとなってしまった。
ここに至り曹家は漸くまとまったが時既に遅し。
曹操が赤壁の戦いで散ってから6年、中華の覇権は劉備の物となったのだった。
◆
「はぁ…おいらが帝ねぇ?柄じゃねぇなぁ。」
中華の七割近くを統べた劉備は漢王朝の前帝に二度帝位に就くことを要請したのだが、前帝に帝位に就くことを固辞されてしまう。
そしてなんだかんだと法正を始めとした文官達に外堀を埋められてしまい、劉備自らが帝位に就くことになってしまったのだ。
「帝、そろそろ諦めてください。式典は三日後に迫っているのですぞ?」
「おい、法正。おいらを嵌めたお前さんがそれを言うのかい?」
「これは心外ですなぁ。私は劉備様が帝となればよいと言葉を溢しただけで、積極的に動いたのは徐庶と諸葛亮なんですがねぇ。」
すました顔でそう宣う法正を、劉備は苦虫を噛み潰した様な顔で睨む。
「もういいじゃない。私は旦那様が帝にまで出世して誇らしいわよ。」
劉備との間に3人の子を産んだ孫尚香は、以前にも増して艶やかな女となっている。
そんな妻に微笑まれた劉備は惚れた弱みなのか、帝になる覚悟を決めた。
「はぁ…仕方ねぇか。それで、法正。おいらはいつまで帝を続ければいいんだい?さっさと息子に帝位を禅譲して、尚香と二人でゆっくりとしてぇんだが?」
「劉禅様には十分に政を学んでいただかなければなりません。それに次代の者達の育成にも時間がかかるので、むこう10年は帝でいていただく必要がありますなぁ。」
「10年?!勘弁してくれよぉ…。」
ほとほとまいった様子で劉備が項垂れると、皆が笑った。
義勇軍だった頃から付き従ってきた関羽は誇らしげに胸を張り、張飛は嬉し涙を流す。
孫が乱世を生きる必要がなくなったと呂布と貂蝉は喜び、呂玲綺はそろそろ子供はどうかと夫の張遼に問い掛ける。
徐庶と諸葛亮は劉備が帝位に就いて生まれ変わる新たな漢王朝『蜀漢』の未来を語り合い、そんな二人を尻目に法正はどうやって自分だけ楽隠居しようかと思考を巡らせる。
公孫瓚と趙雲は式典の酒について話を咲かせ、以前は何かといがみあっていた袁紹と袁術が笑いあっている。
黄忠と厳顔は乱世が終わる事を少し寂しそうにしているが、それは御愛嬌だろう。
そんな皆の姿を見て劉備は声を発した。
「帝になった事よりも、おいらは皆で乱世を生き残った事の方が嬉しいぜ。」
◆
劉備が蜀漢王朝の帝位に就いて3ヶ月後、孫権は孫呉の帝位を辞し、劉備に蜀漢への臣従を願った。
こうして後に三国時代と語られる乱世は終わりを迎え、中華に数百年に渡る平和な世が訪れたのだった。
次の投稿は13:00の予定です。
これで今章は終わりです。
次章の題材は決まっているのですが、まだ話の大筋を決めていません。
なので来週の本編投稿はお休みさせていただきます。
代わりに今章の主な登場人物紹介などを投稿しようと思います。