キシュの王アッガとの戦にギルガメッシュが勝ってから数年経った。
その数年の間にギルガメッシュは、エルキドゥと共に世界中を冒険して財を集めていった。
俺も時折冒険に参加していたのだが、ギルガメッシュが王として名を上げた事で、
中華でも人の王をと勝手に動き出す連中が増えたので、その連中の討伐で忙しくなっていた。
伯父上は中華で人の王とするべき者を慎重に選ぼうとしているのだが、他の連中が急かしたり、勝手に動いた奴の確認や討伐の指示をしたりしているので、中々選定の作業が進まないようだ。
そんな感じで伯父上と一緒に忙しい日々を中華で送っていた俺だが、それでも暇を見つけてはウルクに訪れてギルガメッシュやエルキドゥと友好を深めていった。
3人で共にギリシャやケルトと呼ばれる地も冒険して財を集めていったな。
そんな感じで冒険の日々を送ってウルクに戻った日の事。
ウルクの森にフンババという怪物が現れた。
ギルガメッシュはフンババの存在を精霊の一種だと言っていた。
フンババは咆哮で洪水を起こし、口から火を吐いて森を焼き、毒を撒き散らしてウルクの森の獣達を蹂躙していっているらしい。
ギルガメッシュはフンババの討伐を即断した。
空を飛ぶ船にエルキドゥと共に乗り込んだギルガメッシュは森に向かった。
俺?
俺は戦勝祝いの宴の準備をシャムハトと一緒にやってるよ。
フンババの討伐に向かったギルガメッシュとエルキドゥは翌日に帰ってきた。
戻って来たエルキドゥが言うには、フンババはその命をメソポタミアの至高神エンリルに受け、太陽神ウトゥに育てられたそうだ。
そのせいなのか、その力は強大で手強かった様だ。
そのフンババを討伐する際にギルガメッシュは、エルキドゥの権能の黄金の鎖でフンババを縛り上げてから天地開闢の力を使ったらしい。
それで天地開闢の力を使った結果、ウルクに新たな川が出来てしまったそうだ。
…流石は天地開闢の力というべきなのかな?
でもさ、急に水の流れが変わったりしたら川が荒れたりするぞ。
え?俺が治水すればいい?
友の使い方が荒い奴だ。
まぁ、いいけどね。
治水そのものはすぐに終わるので、治水のついでに新たに出来た川で宴をする事にした。
それも、ウルクの民も参加する盛大な宴にしてだ。
その宴で俺は治水をした後、中華の天界から持ってきていた『仙桃』を使って新たな川を酒に変えた。
この酒は翌日には身体の中で水になるので、子供でも酒毒にやられない素晴らしい酒なのだ。
そう説明すると、ウルクの民は文字通りに浴びる様にして酒を飲んでいった。
その様子を見てギルガメッシュは満足そうに高笑いをしていた。
この宴は無礼講という事で、ギルガメッシュも民と同じ様に川に入って酒を飲んでいる。
ギルガメッシュはエルキドゥも川に引き込んでとても楽しそうだ
だが、そんな楽しい宴で一悶着が起きてしまう。
美と豊穣と戦を司る女神イシュタルが、ギルガメッシュの元にやって来たのだった。
◆
「ギルガメッシュ、貴方を私の夫にしてあげる。光栄に思いなさい。」
女神イシュタルが妖艶に微笑みながらそう言う。
女神イシュタルはフンババ討伐を祝いに来たわけでもなく、たまたまウルクの民が楽しんでいる姿を見つけて気紛れで来た様だ。
そんな女神イシュタルは酒に変わった川に上半身をはだけて入り、酒を飲んでいるギルガメッシュの姿に一目惚れをしてしまった。
そして女神イシュタルはギルガメッシュに求婚をしたのだ。
今の時代、男女の付き合いは結婚と同義である。
故に女神イシュタルはギルガメッシュに求婚をした。
そして人々が神の慈悲にすがっている今の時代、神からの求婚は断れるものではない。
だが…。
「断る!」
ギルガメッシュは女神イシュタルの求婚を即座に断った。
求婚を断られた女神イシュタルは口をパクパクさせている。
「何故我が凡百の王達の様に、己以外の誰かに伴侶を決められなければならぬのだ?」
求婚を断ったギルガメッシュの姿にウルクの民がざわついている。
「それに、貴様ごときの器量で我の妻になろうなど傲慢が過ぎるというものだ。我への不敬は許す故、宴から疾く去るがよい。」
神への物言いと考えればギルガメッシュの言葉は不敬と言えるものだ。
だが、ギルガメッシュは度重なるエンリルの行動で神に不信を抱いている。
宴の途中でエルキドゥに聞いた話では、フンババをウルクの森に送ったのもエンリルらしいのだ。
「ギルガメッシュ、私に恥をかかせるなんて…。ただではすませないわよ!」
そう言うと女神イシュタルは宴から去っていった。
ギルガメッシュは女神イシュタルの後ろ姿を見て鼻を鳴らすと、手にしていた杯で川の酒を掬い上げて飲み干したのだった。
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