side:アルトリア
マーリンが打ち倒された後、どうすればよいのかわからなかったのですが、とりあえずゼンを家に招く事にしました。
その際にマーリンをどうしようか迷いましたが、ゼンが一声掛けると虚空から見上げる程に大きな犬が姿を現してマーリンをくわえて運んでくれる事になりました。
犬の名前は『哮天犬』というそうです。
毛が長くてフワフワしています。
後で触らせてもらいましょう。
家に着くと養父と義兄がマーリンの姿を見て驚いた顔をしました。
騎士として凛とした表情が常な養父もあんな顔をするのですね。
マーリンには悪いかもしれませんが、養父のあんな顔を見れたのは面白かったです。
養父はゼンが名乗ると、何故か王に対してする筈の最敬礼で名乗りをしました。
ゼンも王族なのでしょうか?
そう思っていたらゼンが私の頭に軽く手を置きました。
その手の暖かさが私の心も暖かくしてくれます。
義兄も養父と同じ様に最敬礼で名乗ると、私達は丁重な扱いで家に入ったのでした。
◆
side:アルトリア
家に入るとゼンに白湯が出されました。
薪を使って歓待するのはそれこそ特別な相手だけです。
やはりゼンは私の勘の通りにただ者ではないのでしょう。
「さて、ちょっと聞きたい事があるんだけど、いいかな?」
白湯を一口飲んでからゼンが声を上げました。
養父が「なんなりと」と答えます。
「アルトリアが泣きながら剣を振っていたんだけど、原因は『あれ』のせいでいいのかな?」
ゼンがマーリンを『あれ』扱いしました。
義兄はそれを聞いて苦笑いをしていますね。
「貴方様に虚言は出来ませぬ。少し長くなりますが、聞いていただけますか?アルトリア、これはお前に関係する事でもある。心を強く持って聞きなさい。」
そう言って養父は語りだしました。
マーリンがウーサーにとある計画を持ち掛けた事。
その計画に基づいて私が造られた事。
そして…後に行われる予定の私を王に選定するためのやらせの儀式の事。
これらを語り終えた養父は椅子から立ち上がると、地に膝を突いてゼンに頭を下げました。
「全てを知りつつアルトリアを引き取ったのは私の決断です。ブリテンを再生する為にはそれしかないとすがり、アルトリアに辛い思いをさせたのは全て私の罪。どうか、息子のケイには罰を与えぬ様にお願い致します。」
あまりにも驚き過ぎて私は何も考えられません。
私は造られた存在?
養父の罪?
では、私が王になる為にしてきたこれまでの事は何だったのでしょうか?
またゼンが私の頭に手を置きます。
そこで気付きました。
私はまた涙を流していると…。
◆
side:二郎
床に膝を突くエクターを椅子に座らせ、涙を流すアルトリアの頭を撫でながら、哮天犬がくわえる者に目を向ける。
さて、『あれ』をどうしようかな?
ギルガメッシュが切り開いて始まった人の歴史…それは人々の命の輝きの証だ。
だからこそ、人々を見るのは楽しい。
時には手助けしたりするが、それはあくまで人々が己の『道』を歩む為のものだ。
『あれ』が傍観者なら捨て置いてもよかったけどね。
そう考えて小さくため息を吐く。
それにしても…。
「少し見てきたけど、俺の目にはブリテンの再生は無理に見えたんだけどなぁ。」
そう言うとアルトリアを始めとしてエクターとケイも驚いた顔をする。
そして…。
「その台詞は聞き捨てならない。」
そう言って『あれ』が目を覚まし、怒りを宿した目で俺を見据えてきたのだった。
本日は3話投稿します。
次の投稿は9:00の予定です。