二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第228話

side:アルトリア

 

 

私達がブリテンをより良い滅びに導くと決意をした次の日、私はゼンに連れられてこの地の見聞の旅に出掛けました。

 

この旅の目的はブリテンをより良い滅びに導く為にはどうすればよいのかを見極める事ですね。

 

ゼンの腕に包まれ、哮天犬に乗っての旅はとても素敵です。

 

まるで村や町の少女達が話す、『白馬の騎士』に抱かれる『お姫様』になった気分を味わえるのですから。

 

また道中ではゼンから剣の指導を受けています。

 

ゼンが言うには、私には『戦場の剣』が合っているそうです。

 

戦場の剣は敵を殺すだけでなく、生き残る事にも長けた剣だそうですね。

 

指導の一環としてゼンと手合わせをしました。

 

彼は凄く…いえ、もの凄く強いです。

 

剣を合わせた瞬間、しっかりと持っていた筈の剣を手放させられたり、地面に転がされたりしてしまいます。

 

どうなっているのでしょう?

 

ゼンが言うには、なんでも『武の理』だそうです。

 

才ある者ならば100年もあれば至れるそうですが、長生きでなければ人は50年程で寿命を迎えるので無理だと思います。

 

その事を言うと、『あぁ、漢方が無い中華の外の国では、人の寿命はそのぐらいだったね。忘れてたよ。』と言いました。

 

私も人の事は言えませんが、ゼンも世間に疎いところがあるようですね。

 

旅の道中では色んな事を知ることが出来ました。

 

その知った事の一つが、ブリテンを含めたこの地はとても貧しいという事です。

 

作物の実りが悪く、飢えてしまう民も多くいます。

 

その飢えた民を食べさせる為に近場の国に戦を仕掛けるのですが、戦をするにも食べ物が必要です。

 

そして戦をする為の食べ物を買うために借金をしているというのが、この地の多くの国の現状でした。

 

…どうやって治めればいいのでしょうか?

 

まだまだ浅学の身ではありますが、私にも治めるのは無理だと思います。

 

マーリンは力で統べればいいと言っていましたが、力で敵を降せば食べる為に奪うのですよね?

 

そんな事をして、民が従ってくれるとは思えないのですが…。

 

思わずため息が出てしまいます。

 

そうそう、旅の道中で立ち寄った国で姉であるモルガンと出会いました。

 

私は父と母の因子を使ってマーリンに造られた存在です。

 

母に産んでいただいたわけではないので、彼女を姉と呼んでいいのかわかりませんでした。

 

ですが彼女は私を妹と呼び、自身を姉と呼んでいいと言ってくれました。

 

とても嬉しかったです。

 

姉はロット王の妻です。

 

そんな姉はとある時に母と共に暴行されかけたのですが、そこをロット王に助けられて一目惚れしたそうです。

 

それから姉は母に手助けをしてもらいながら、ロット王の心を射止めたのだとか。

 

現在ではロット王の子を産んでおり、夫や子供と共に幸せに暮らしているとのこと。

 

母は残念ながら亡くなってしまっているそうですが、初孫の顔を見て満足して逝ったそうです。

 

しかし、私は成人してもいないのに甥っ子がいるのですか…。

 

なんだか複雑な気分ですね。

 

周囲の国と比較して裕福な姉の国でゼンと一緒に歓待を受けた私は、彼女達に別れを告げて卑王と呼ばれる王の元に向かったのでした。

 

 

 

 

side:アルトリア

 

 

「初めましてだね、白き竜の化身。俺はゼン。少し話したい事があったから寄らせてもらったよ。」

 

ゼンが名乗ると、卑王ヴォーティガーンは養父や義兄と同じ様に最敬礼をしました。

 

「我に何用でございましょうか?放浪の神ゼン様。」

 

放浪の神ゼン?

 

えっと…たしかケルトの伝説だけでなく、メソポタミアやギリシャの神話にも名を残している神ですよね?

 

えっ?ゼンは放浪の神ゼンだったのですか?

 

私が混乱している間も二人の会話は続いていきます。

 

「白き竜の化身となり、この地の意思を感じ取る事が出来る様になった君なら、この地に神秘が集束しているのは気付いているんじゃないかい?」

「おっしゃる通りでございます。故に我は、この地の神秘の存在を守る為に奔走してきました。ですが、それをあの憎き花の魔術師に邪魔されてしまったのです。しかも花の魔術師は在らぬ噂を流し、我は人々に卑王と呼ばれる様になってしまいました。」

 

…マーリンは何をやっているのでしょうか?

 

「花の魔術師?」

「えっと…ゼン、様?」

「今まで通りにゼンでいいよ、アルトリア。」

「はい、ありがとうございます。ゼン、花の魔術師とはマーリンの事です。」

 

花の魔術師が誰かわかると、ゼンは「あぁ、『あれ』の事か。」と納得しました。

 

「白き竜の化身、『あれ』は君の邪魔をした事を何か言っていたかい?」

「なんでも理想の王には敵が必要だとか。その為に奴めは魔術で約束の地に至る道を閉ざし、神秘の存在を約束の地に行かせずにこの地に残したのです。」

 

本当にマーリンは何をやっているのですか!

 

私は旅に出てから何度目になるかわからないため息が出てしまいます。

 

「事情はわかったよ。さて白き竜の化身よ、約束の地を解放するから案内してくれるかい?」

「喜んで承りましょう。」

 

こうして私達は卑王と呼ばれるヴォーティガーンと一緒に、アヴァロンの解放に向かうのでした。

 

…マーリンのせいでブリテンが滅ぶ様な気がするのですが、気のせいでしょうか?




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。

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