二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です。


第229話

side:アルトリア

 

 

ヴォーティガーンに案内されると、虚空に違和感を感じる場所にたどり着きました。

 

どうやらここがアヴァロンへと至る道が封じられた場所のようですね。

 

どうやって解放するのかと思っていると、いつの間にか剣を持っていたゼンが横に一閃しました。

 

すると、マーリンが施した魔術が断ち斬られていました。

 

魔術ってこんな風に断ち斬れるものでしたっけ?

 

「これでいいかな?」

「ありがとうございます。放浪の神ゼン様。これでこの地に生きる神秘の存在が救われます。」

 

最敬礼するヴォーティガーンの姿に私は呆然としてしまいます。

 

こんなあっさりと解決していいのでしょうか?

 

「白き竜の化身、俺はブリテンをより良い滅びに導く為にこの地を見聞しているのだけど、誰か会っておいた方がいい者はいるかい?」

「それならば湖の乙女に会われるのがよいでしょう。以前はフランスにいた彼女が、花の魔術師が蠢動してからは何度かこの地に訪れています。彼女も花の魔術師に何かをされたと愚考します。」

 

こうして私とゼンはヴォーティガーンの助言に従い、湖の乙女に会いに行くのでした。

 

 

 

 

side:アルトリア

 

 

「初めましてだね、湖の精の化身。俺はゼン。白き竜の化身の薦めで会いに来たんだ。」

 

ゼンの挨拶を受けた湖の乙女と思わしき女性は最敬礼をしました。

 

「御会いできて光栄でございます、治水の神様。」

 

治水の神?

 

ゼンは放浪の神では?

 

そう思っているとゼンが話してくれました。

 

なんでもゼンは『治水の権能』を持っているので、本来は治水の神なのだそうです。

 

それが世界中を放浪している内に、放浪の神と呼ばれる様になったのだとか。

 

しかも治水の神だけでなく武神でもあるそうです。

 

武神とは軍神と似ている様なのですが、より個の力が優れた戦いの神だそうです。

 

なるほど、マーリンでも手も足も出なかったわけがわかりました。

 

私が一人で納得していると、ゼンが湖の乙女にマーリンの事を問い掛けていました。

 

すると湖の乙女が訴え出しました。

 

彼女の言葉を要約すると、マーリンは幾つもの宝具(ほうぐ)を彼女から盗んだそうです。

 

聖剣を始めとして空を飛べる盾や、幻想種すら滅ぼす槍も盗まれたとか。

 

彼女は自身が養育している少年に与えたいと思っていた物もあるので返して欲しいそうです。

 

「『あれ』が王の選定に使うつもりだった剣だけくれるかい?それ以外は返してあげるよ。」

 

そう言うとゼンは虚空から数多の武器を取り出しました。

 

一目見てそれらがただの武器ではない事がわかります。

 

湖の乙女は嬉しそうに微笑みながら武器を回収していました。

 

ゼンはいつの間にマーリンから取り返していたのでしょうか?

 

聞いてみると、なんでもちょっと特徴的な鳴き方をする獣と知り合った哮天犬が持って帰ってきたそうです。

 

どうもその獣はマーリンの事を嫌っていたようで、彼を打倒したゼンの為に嬉々としてマーリンが集めた物の所に哮天犬を案内したそうです。

 

獣にすら嫌われるマーリンですが、今では憐れみすら覚えませんね。

 

彼が犯した罪に対する罰が降ったのでしょう。

 

湖の乙女が武器を回収し終わると、フランスまで赴いて彼女が養育しているという少年と会う事になりました。

 

少年の名はランスロットと言うそうです。

 

彼女が言うには、彼は才能豊かで英雄になれる素質があるそうです。

 

ですが異性に対する敬意が強すぎる為、それによる失敗を起こさないか心配だそうです。

 

彼と挨拶をしたのですが、男装をしていた為か彼は私を異性と認識しませんでした。

 

…いいでしょう。

 

その喧嘩、買わせていただきます!

 

こうして私はランスロットと手合わせをしました。

 

三度の手合わせの内、二度引き分けて一度勝利しました。

 

ゼンの指導を受けていなければ負けていたと思います。

 

今後も指導を受けていきましょう。

 

 

 

 

side:ランスロット

 

 

私を引き取って養育している湖の乙女が見知らぬ客人を連れて帰ってきた。

 

一人の成人男性と…少年?から挨拶を受ける。

 

騎士として返礼をすると、何故か少年から怒りの気配を感じた。

 

何故だろうか?

 

疑問に思っていると、少年が手合わせを申し出てきた。

 

湖の乙女と男性が承諾したので、私は少年と剣で手合わせをした。

 

少年は強かった。

 

一合、二合と剣を交え、互いに勝利を掴み取るべく駆け引きをしていく。

 

楽しかった。

 

一度目の勝負は引き分け、二度目も引き分け。

 

そして三度目…紙一重で私は負けた。

 

あと一呼吸…いや半呼吸速く反応出来ればこの負けはなかった。

 

悔しかった。

 

だが、それ以上に楽しかった。

 

いつかの再戦を約束すると、少年は男性と共に去っていった。

 

湖の乙女に話を聞くと、あの少年はブリテンの者らしい。

 

ブリテンはフランスから北の海を渡った先にある国だ。

 

いいだろう。

 

敗者から訪ねるのが礼儀だ。

 

修行を重ね、湖の乙女が認める騎士になれたその時にはブリテンに行こう。

 

湖の乙女はかの地の動乱は増々深まると予想している。

 

ならば騎士として武勲を得る場には困らない。

 

さぁ、湖の乙女よ。私を鍛えてくれ。

 

騎士として恥じぬ様に、騎士として誇れる様に。

 

かの地からここフランスにまで武名を轟かせる事が出来る様に。

 

それが叶うのならば、如何様な修行にも耐えてみせよう。

 

少年よ、待っていてくれ。

 

いつの日か一端の騎士になったその時、私は胸を張って君に再戦を申し込もう。




本日は3話投稿します。

次の投稿は9:00の予定です。

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