二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第231話

side:アルトリア

 

 

自らの意思で王となると決めてからの日々は充実していました。

 

いえ、ゼンと出会ったあの瞬間から、私の生は充実し始めたのでしょう。

 

養父や義兄とよく話す様になりました。

 

以前の様に王と臣下ではなく、家族としてです。

 

ある時、養父が私と義兄に剣の指導をしてくれました。

 

その時に手合わせをしたのですが、義兄には勝てましたが養父には負けてしまいました。

 

私には竜の因子があるので呼吸をするだけで魔力を造り出せます。

 

それを利用した身体強化や魔力放出による踏み込みは、まだ成人していない女の私でも並みの騎士を優に超える事が出来ます。

 

この身体強化や魔力放出はゼンが教えてくれました。

 

まだ魔力放出が雑なのでゼンの『瞬動』の様にスムースに踏み込めませんが、それでも義兄は反応出来ずに私に剣を突き付けられていました。

 

ですが養父には通じませんでした。

 

魔力放出を使って踏み込んだら、剣の柄で軽く頭を叩かれてしまったのです。

 

あっさり対処されてしまって最初は呆然としましたが、マーリンが魔術を使えない状態だったとしても、あのマーリンを退けた騎士なのです。

 

これだけ強くても不思議ではありませんでした。

 

養父曰く『戦場を五つも越えれば誰でも出来る様になるものだ。』そうです。

 

サクソン人やピクト人との戦で五度も五体無事で生き残るのは並み大抵の事ではありません。

 

それを当たり前の様に言う養父は、ウーサーに仕えた騎士の中でも名うての使い手だったのでしょう。

 

その様な感じでその日は終わったのですが、翌日から義兄が以前よりも剣の鍛練に励みだしました。

 

元々、義兄は王となった私を政で支える予定だったのですが、義妹の私にあっさりと負けてしまった事が堪えた様です。

 

この義兄の発奮に養父は嬉しそうでした。

 

3日に一度程ですが、私は哮天犬に乗って姉のモルガンを訪ねています。

 

ロット王から王として必要な諸々の事を学ぶ為ですね。

 

甥とも遊んでいます。

 

とても楽しいです。

 

そんな充実した日々ですが、一つだけ足りないものがあります。

 

それは…ゼンがいない事です。

 

この地に集束する神秘をどうにかする為に動いているゼンはとても忙しい身です。

 

なので中々会えないのはわかっているのですが、もっと会いたいです。

 

…いえ、ずっと一緒にいたいと思います。

 

この気持ちが何なのかはわかります。

 

まだ成人していませんが、私も女ですからね。

 

ですが…許される事なのでしょうか?

 

相手は神です。

 

対して私は、人と言えるかどうかわからない造られた存在…。

 

最近はその事ばかり悩んでいます。

 

そんなある時、私は思いきって姉に相談したのでした。

 

 

 

 

side:アルトリア

 

 

「そう、アルトリアはゼン様に恋をしているのね。」

「…はい。」

 

姉にはっきり恋と言われ、顔が熱くなります。

 

一応、自覚はしていたのですが…こうして改めて言われると来るものがありますね。

 

「それで?アルトリアはどうしたいのかしら?」

 

姉が首を傾げると揺れます。

 

私には無いものが揺れます。

 

…くっ!

 

「…どうしたいと言われましても、許されるものなのでしょうか?」

「はぁ、そんな事で悩んでいたの?アルトリアは初心ね。可愛いわ。」

 

真剣に悩んでいるのにそんな事と言われ、少しムッとしてしまいます。

 

決してため息を吐いた姉の一部が揺れたからではありません。

 

「アルトリア、神話は知っているかしら?」

「幾つかなら。ケルトの伝説、メソポタミア神話、ギリシャ神話といったところでしょうか。」

 

この3つにはゼンが登場します。

 

だからというわけではないですが、以前から養父に聞いていました。

 

ゼンに出会ってからは更によく聞いていますが…。

 

「そう。なら知っているでしょ?人と人ならざる者が結ばれた話をね。」

「そ、それは知っていますが…。」

 

有名なところでは人の王であるギルガメッシュ王と、神の使いであったエルキドゥが結ばれた話でしょうか。

 

他にもケルトの伝説では影の国の女王であるスカサハと、太陽の御子と呼ばれるセタンタの息子のコンラが結ばれた話がありますね。

 

「なら戸惑う必要はないでしょう?」

「えっと、いいのでしょうか?」

「いいの!恋は戦争なのよ!勝者こそが正義なの!」

 

えっと、村娘がしていた恋の話は、もっと夢のあるものだったような…。

 

戸惑っていると姉がズイッと近付きました。

 

笑顔なのに何故か歴戦の騎士の様な迫力があります。

 

「アルトリア、想像してごらんなさい?ゼン様の隣に寄り添う自分を。」

 

…とてもいいですね。

 

「想像してごらんなさい?ゼン様に抱き締められる自分を。」

 

…素晴らしいです。

 

「うん、恋する乙女の顔だわ。」

 

えっ?私はどんな顔をしていたのでしょうか?

 

「アルトリア、遠慮していたらその幸せは掴めないわ。貴女には王となって成すべき事があるけれど、それと女の幸せは別の問題よ。誰に遠慮することなく幸せになりなさい。」

「はいっ!」

 

姉の言葉で迷いが吹っ切れました。

 

私はゼンが好きです。

 

もう迷いません。

 

この想い…遂げてみせます!

 

ところで姉上、どうしたらその様に成長するのでしょうか?

 

私は根掘り葉掘り聞き出します。

 

そしてこの後、私は王や騎士として成長するべく励むと共に、女としても自身を磨いていくのでした。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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