二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です。


第233話

side:アルトリア

 

 

ウーサーの後継者の証しとなるカリバーンを腰に帯びた私は、二郎とケイを伴ってブリテンの城に入城しました。

 

城には苦虫を噛み潰した様な表情をした有力者達がいましたが、それも仕方ない事でしょう。

 

彼等は自身や己の息が掛かった者を、ブリテンの王とするべく動いていたみたいですからね。

 

王として玉座に座った私が先ずした事は私自身とケイ、そして二郎の紹介でした。

 

私は自身をウーサーの子であると紹介すると、有力者達は半信半疑の様子でした。

 

血の証明などそう簡単に出来るものではないので、こういったものはある意味で名乗った者勝ちのところがあります。

 

なので彼等の様子も仕方ない事でしょう。

 

ケイは私の義兄であり、ブリテンの政を仕切らせると紹介しました。

 

これには有力者達が露骨に嫌悪感を出していますね。

 

聞こえないと思っているのか『あんな若僧が』などと言っています。

 

政が出来る出来ない以前に、彼等よりも人として圧倒的に信頼出来るのです。

 

ケイに任せなければ安心して外征に出れませんので、これは決定事項ですね。

 

そして二郎の事は『魔術師ゼン』と紹介しました。

 

これはヴォーティガーンから『ゼン様が放浪の神であると知られたら、ブリテンだけでなく海の外からも良からぬ輩が現れるであろうな。』と言われたので、この様な形を取りました。

 

『魔術師ゼン』の主な役目は私達への助言です。

 

有力者達は二郎の事をケイに比べて好意的に受けとめています。

 

魔術師とは魔術だけでなく、常人とは比べ物にならない知識を有していると認識されています。

 

故にその知識は自分達にも利があると思ったのでしょう。

 

それは間違いではありません。

 

何故なら二郎がもたらす技術や知識を広めれば、この地は今とは比べ物にならない程に豊かになれるのですから。

 

民を飢えさせない為にも、これは必ず成し遂げねばなりません。

 

もちろん個人的事情の為にも成し遂げますが…。

 

さて、有力者達への挨拶を終えた私は、ケイに頼んで今のブリテンの状況を調べてもらいました。

 

調べてもらった結果なのですが…思った以上に酷いものでした。

 

各所からの借財をまとめると、今のブリテンの税収では返済に百年かかってしまいます。

 

何故こんなにあるのでしょうか?

 

ケイが詳しく調べたのですが、どうもウーサーが亡くなってから一気に増えた様です。

 

ウーサーが選定の儀を言い残して没すると、有力者達は次の王となるべく動き出しました。

 

自身や家の者で駄目なら、選定の剣を引き抜けそうな優秀な者を買収して養子にしたりしたそうです。

 

その買収をする為の財はブリテンの名を使って借りたとの事。

 

そうして借財は積もりに積もって、気付けばブリテンの税収の百年分になったと。

 

しかも後継者争いをしている間、ピクト人とサクソン人を野放しにしたので、ブリテンは今までに無いぐらい荒れてしまっているそうです。

 

…彼等を叩き斬っていいでしょうか?

 

ケイと本気で相談していると二郎に止められてしまいました。

 

二郎が言うには『あんな連中でもいなくなれば政が回らなくなるよ』だそうです。

 

残念ですが、そういう事ならば諦めましょう。

 

ですが可能な限り早く、彼等に代わって政を任せられる者を集めましょう。

 

まぁ、今のブリテンの状況を知って来てくれる者がいるかはわかりませんが…。

 

ケイと揃ってため息を吐いてしまいます。

 

二郎との約束がなければ、私は戸惑うことなく王の座を辞していたでしょう。

 

ですが、私は投げ出しません。

 

恋する乙女の覚悟はこんな程度で揺らぎません。

 

たとえ千年掛かろうとも、必ずブリテンをより良い滅びに導いてみせます!

 

 

 

 

side:アルトリア

 

 

ブリテンの王になってから半年が過ぎました。

 

多すぎる借財に頭を悩ませながらなんとか政をこなしていきました。

 

そしてロット王からの援助もあって、やっと形だけですが軍を整える事が出来ました。

 

千人程度の小さな一軍ですが、これが私が初めて率いる一軍になります。

 

軍馬も弓も無い一軍ですが不満は言いません。

 

何故ならブリテンにはお金が無いんです。

 

お金が無いんです!

 

軍馬を育てるのにどれだけお金が掛かるかわかりますか?

 

そんな軍馬を育てるお金があるなら、少しでも借財の返済や民に食料を与えなければならないのです。

 

それがブリテンの現状です。

 

ですが、これで漸くピクト人やサクソン人の対処に動く事が出来ます。

 

小さな一歩ですが、ブリテンをより良い滅びに導く為の大事な一歩ですね。

 

そう思っていた時期にとある人物がブリテンを訪ねて来ました。

 

その人物とは…。

 

「ブリテンの王に拝謁賜り光栄でございます。私はランスロット。フランスより参りました。」

 

そう、数年前にフランスで出会ったランスロットです。

 

形式的な挨拶ですが、彼は見事な所作でこなしています。

 

謁見の間にいる者達は彼の所作を見て感嘆のため息を溢していますね。

 

「面を上げよ。」

 

私自身違和感がありますが、王として言葉を発します。

 

顔を上げたランスロットは僅かに驚いた様な表情をしていますね。

 

どうやら私が女だと気付いたようです。

 

「数年振りですね、ランスロット。ブリテンを訪ねてくれて嬉しいですよ。」

 

ランスロットと知己であると周囲に報せるべく、あえて個人として話します。

 

それを受けてランスロットも不敵な笑みを見せました。

 

「えぇ、久しいですね、アーサー。」

「それで、如何様な理由でブリテンに?」

「この地で最も荒れている場を求めて参りました。ピクト人やサクソン人との戦いに事欠かず、己次第で武勲は思うままと愚考致しました故。」

 

彼の言葉は間違っていません。

 

今のこの地でブリテン以上に荒れている所は無いでしょう。

 

その理由が後継者争いのせいというのがなんとも情けないですが…。

 

「では、私の旗下に加わると?」

「末席を御貸し頂ければ…。」

「いいでしょう。ランスロット、貴方を騎士として我が旗下に加えます。」

 

私の言葉でランスロットは膝をつき、胸に手を当てて頭を垂れました。

 

いずれは甥っ子達も私の下に馳せ参じてくれますが、まだ先の話ですからね。

 

ランスロットが加わってくれるのは大歓迎です。

 

「我が王よ、一つお聞き届けいただけませぬか?」

「聞こう。」

「叶いますれば、いつぞやの再戦を願います。」

「聞き届けた。では、練兵場に行くとしよう。」

 

玉座から立ち上がると、カリバーンを手にして歩き出します。

 

ランスロットも少し遅れて後に続いていますね。

 

練兵場に辿り着いた私は腰の鞘からカリバーンを抜きます。

 

ランスロットも剣を抜きました。

 

一目見てただならぬ名剣だとわかります。

 

あれが湖の乙女が言っていた、彼に渡したかった物なのでしょう。

 

手合わせの見届け人として二郎が立ち会ってくれます。

 

これで万が一の憂いもありませんね。

 

「ランスロット、貴方は女性に敬意を抱くと聞いていますが?」

 

動きやすいので今も男装をしていますが、流石に男に間違われる事はありません。

 

それはもう、しっかりと育ちましたから。

 

育ちましたから!

 

「もちろん女性には敬意を持って接します。そして騎士としても王たる貴女に敬意を払いましょう。もし戦えるかを案じているのならば御安心を。手合わせで手を抜くは騎士の恥。たとえ貴女が女性であり、王であろうとも、私は騎士として全力で戦わせていただきましょう。」

 

その言葉を聞いて安心しました。

 

私は女ですが、それと同時に騎士です。

 

女だからと侮られるのは好みません。

 

彼の信義に敬意を表しましょう。

 

「それと…。」

 

むっ?何でしょうか?

 

「先程は女性に敬意を持って接すると言いましたが、私の好みは大人の女性です。一人の男として貴女に含むところはありません。そしてこの手合わせの結果に関係なく、騎士として王たる貴女に忠誠を誓いましょう。」

 

つまり私はまだ子供だと?

 

…いいでしょう。

 

その喧嘩、買わせていただきます!

 

 

 

 

『ランスロット卿』

 

アーサー王伝説に登場する英雄の一人である。

 

フランスの地で湖の乙女に養育された彼は、眉目秀麗にして才気溢れる男であると評されている。

 

そんな彼は少年時代に、魔術師ゼンに連れられた少女時代のアーサー王と手合わせをした。

 

青年となった彼はその時の縁を頼り、王に即位したアーサー王を訪ねている。

 

その時に彼はアーサー王に手合わせを申し出たのだが、晩年には次の様に言い残した。

 

『私は幾多の戦場を超えたが、王との手合わせ以上に死を身近に感じた戦場はなかった。』

 

後年、ランスロットはアーサー王に『騎士の中の騎士』と評されるのだが、その境地に至るにはまだ長い時を必要としていたのだった。




次の投稿は11:00の予定です。
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