二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿5話目です。


第239話

side:アルトリア

 

 

ブリテンの解体から100年、最後の一人だったギャラハッドもアヴァロンへと旅立ちました。

 

多くの家族に看取られて幸せそうでした。

 

ここまで彼が長生きしたのは聖人だからなのでしょう。

 

そのせいなのかこっそりと天使が迎えに来ていましたが、神の子が慌てた様子で二郎に謝りに来ていたので問題は無い筈です。

 

えぇ、神の子です。

 

神の子と会ったのです。

 

これからも驚く事は多いのでしょうが、二郎の女として慣れないといけません。

 

なので誘惑の悪魔と会っても驚きません。

 

えぇ、驚きませんとも。

 

むしろ誘惑の悪魔という名よりも、あの御立派な姿形に驚きましたよ。

 

神の子の守護天使達がべたつくなにかにまみれていたのは気のせいでしょう。

 

さぁ、気を取り直して二郎の生まれ故郷である中華へ旅立ちです。

 

どんな所なのか楽しみですね。

 

 

 

 

side:士郎

 

 

百数十年振りに老師が中華に帰ってきたと思ったら、思わぬ人物を連れて帰ってきた。

 

「初めまして、私はアルトリア・ペンドラゴン。二郎の恋人です。よろしくお願いしますね。」

 

記憶の中の姿よりも一部が豊かに成長しているが、間違いなく彼女だ。

 

少し混乱している頭を冷やそうと小さく息を吐く。

 

「士郎?」

「あぁ、何でもないさ、王貴人。」

 

ちゃんと後で事情を説明する。

 

だから脇腹をつねらないでくれ。

 

さて、それよりも…だ。

 

「老師、貴方はどこに行っていたのだ?」

「ブリテン島だね。集束する神秘を何とかするように、伯父上に頼まれたんだよ。」

「…そうか。」

 

いったいアーサー王伝説はどうなってしまったんだろうか?

 

「自己紹介はしていただけないのでしょうか?」

 

おっと、いかんな。

 

千年以上生きてきて老師の自由な行動には慣れたつもりだったが、私もまだまだ未熟だったようだ。

 

「失礼した。私は王士郎。老師…二郎真君の一番弟子だ。」

「一番弟子ですか?」

 

彼女は驚いた表情を見せた。

 

表情には前世で見た憂いが欠片も見当たらない。

 

その事に安心する。

 

前世の私は彼女を救う事が出来なかったからな。

 

それと名乗った事で己が何者なのかを自覚出来た。

 

私は衛宮 士郎ではなく王士郎なのだと。

 

「私は王貴人。士郎の妻だ。」

「私は華陀。王夫妻と共に行動させてもらっていますぞ。」

 

思えば華陀とも長い付き合いになったものだ。

 

そういえば華陀は生前の法師と男女の仲になった。

 

そしてそれが理由で法師を死後に桃源郷に招いたのだが…大丈夫なのだろうか?

 

まぁ、老師と覚者は知己であるので問題無いのだろう。

 

そう思っておこう。

 

私の心の平穏のためにも。

 

…後で華陀に胃薬を調合してもらおう。

 

「士郎、アルトリアと手合わせをしてくれるかい?」

「それは構わないが…何故だろうか?」

「特に理由は無いよ。でも、そうだね。強いて言えば、こうした方がいいと思ってね。」

 

やれやれ、どこまでお見通しなのやら。

 

「ではペンドラゴン卿、一手指南をお願いしようか。」

「アルトリアで構いませんよ、王士郎殿。」

「私も士郎で構わんさ。」

 

互いに得物を手にして向かい合う。

 

あれは…カリバーンか?

 

私の知るそれとは違っているが、間違いなくカリバーンだ。

 

あぁ…やはりその剣は君によく似合うな。

 

「では、こちらから行かせてもらいます!」

 

魔力放出による踏み込みで一瞬にして間合いを詰めてくる。

 

記憶にある彼女のそれよりも鋭い剣撃を干将・莫耶で全て防ぐ。

 

私が知る彼女よりも強いが…聞仲の禁鞭と比べれば問題無く対処出来る。

 

「流石は二郎の一番弟子ですね。ギャラハッドの守りよりも固く、崩せる気がしません。」

「これでも千年以上は研鑽を積んでいるのでね。無様にやられては老師と顔を合わせられんよ。」

 

これは皮肉でも冗談でもない。

 

もし今のを対処出来ていなかったら、私はまた老師の拳で吹き飛ぶ日々を送る事になっただろう。

 

「さて、今度はこちらから行かせてもらおうか!」

 

その後、結果として私はアルトリアとの手合わせに勝利した。

 

そこで一つ忘れていた事を思い出した。

 

彼女が負けず嫌いだった事だ。

 

この日、五回に及ぶ彼女との手合わせをこなす事になったのだが、私はその全てに勝利したのだった。

 

 

 

 

こうして神秘の時代は終わりを迎え、時代はやがて現代へ。

 

そして物語の舞台はzeroへと移り行く…。




これで本日の投稿は終わりです。

ブリテン編もこれで完結でございます。

それとお知らせです。

来週の拙作の投稿をお休みさせていただきます。

まだ次章の構想が固まっていないのですよね。

さて…どう引っ掻き回してやろうかな?

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