二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です。

原作をよく知らない作者の独断と偏見でキャラ付けされています。

口調や性格が違うのは仕様だと思っていただければ幸いです。


第242話

side:ゼルレッチ

 

 

茶を楽しんでいると、不意に友のマーリンが立ち上がった。

 

「すまない、友よ。私はこれで失礼するよ。」

「どうした?」

「草花が知らせてくれた。ここに王がくる。」

 

マーリンの言う王とは、ブリテンが誇る英雄アーサー王の事だ。

 

「謝罪の言葉は受け取ったと聞いているが?」

「これが私の贖罪だ。それに、『僕』は『あの御方』が苦手でね。」

 

そう言って苦笑いをしたマーリンは見事な魔術行使で虚空へと姿を消した。

 

儂は恩人を出迎える為に立ち上がる。

 

すると…。

 

「久しいね、ゼルレッチ。」

「お久しぶりです、ゼルレッチ。」

 

哮天犬に乗ったゼン殿とアルトリア殿が姿を現した。

 

「お久しぶりですな、御二方。」

 

数百年前、若気の至りで『真祖』に喧嘩を売って以来の付き合いだが、御二人は相変わらずの様だ。

 

「して、今日は何用で?」

「日ノ本の冬木という地で行われる魔術儀式について聞きたくてね。」

「冬木というと『聖杯戦争』の事ですな。ささ、少し長くなるので座ってくだされ。」

 

御二方を丁重にもてなすべく対応する。

 

特にゼン殿には返しきれぬ恩があるからな。

 

『真祖』に噛まれ老いてしまったこの身を若返らせてもらった。

 

おかげで『姫様』の側仕えでも不自由を感じぬ。

 

アルトリア殿がテーブルの上にある別のカップに気付く。

 

…ぬかったな。

 

「ゼルレッチ、誰か来ていたのですか?」

「先程までマーリンがおりました。」

「そうですか…私はもう気にしていないのですが。」

「これが彼の贖罪なのだそうですぞ。」

 

そう伝えると彼女は困った様に苦笑いをした。

 

「さて、『あれ』の事は置いておいて、『聖杯戦争』とかいう魔術儀式の事を聞かせてくれるかい?」

 

いまだに『あれ』扱いされていてはマーリンが顔を出せぬのも仕方ないか。

 

消滅させられなかっただけでも儲けもの。

 

儂も『偽りの月』を拳で砕くような御仁と敵対はしたくないわい。

 

茶を御二方に出し終えると、儂は『聖杯戦争』について語っていく。

 

事の始まりは数百年前、アインツベルンとマキリが豊富な魔術基盤を求めて日本を訪れたのが始まりだ。

 

そして豊富な魔術基盤を有する冬木を治めていた当時の遠坂の一族と出会う。

 

そこでアインツベルンとマキリは、まだ駆け出しの魔術師だった遠坂にとある魔術儀式を持ち掛けた。

 

それが『聖杯戦争』だ。

 

今では既に三回行われたが、成功したとは聞いていない。

 

何らかの欠陥があるのだろう。

 

そう話すとゼン殿が頷いた。

 

「三度の失敗を経験しても改善出来ない程に、その儀式は複雑なのかい?」

「おそらくは『聖杯』の事のみが強調されて伝わっており、子孫達も欠陥を知らぬのでしょう。もっとも、マキリの当主は当時から存命しているので知っていて放置しているのかと。」

 

御二方が頷いたのを見て話を続ける。

 

「『時計塔』の魔術師の中に『令呪』が発現した者がいた筈です。興味があるのならば探してみては?」

「龍脈をなんとかするついでに、英雄達の宴に参加するのも悪くないね。」

「古の時代の英雄に会えるのですか?楽しみですね。」

 

御二方は立ち上がると、儂に一言の礼を言って去っていった。

 

去り際に遠坂は儂の弟子だと伝えたので無下にはされぬだろう。

 

見送りを終えると小さくため息を吐く。

 

あの『蟲』はおそらくゼン殿の癇に触るだろう。

 

「マキリ…いや、『間桐』も絶えるやもしれぬな。」

 

 

 

 

side:言峰 綺礼

 

 

「綺礼、勝ったぞ。」

 

英雄の召喚に手応えを感じる師の遠坂 時臣は、召喚による急激な魔力消耗で流れる脂汗を拭いながら歓喜の声を上げている。

 

師の手応えに呼応する様に召喚陣からは光の奔流が溢れだしている。

 

やがて一際光が強まってから収まると、そこには目を閉じた一人の男が立っていた。

 

金髪の青年。

 

一見するとそれだけだが、ただの立ち姿に威を感じる。

 

なるほど、これが原初の英雄ギルガメッシュか。

 

開眼したギルガメッシュの前で時臣氏が頭を垂れて膝をつく。

 

「ほう?我を喚ぶだけあって弁えている。」

 

頭を垂れ、膝をついたまま時臣氏が口を開く。

 

「呼び掛けに御応えいただき感謝致します、ギルガメッシュ王。」

「して、我を喚び何を望む?」

「聖杯戦争の勝利を。」

「たわけ、我を喚んだ貴様の勝利は確約されている。我が問うたのは貴様自身の望みよ。」

 

謝罪の一言を言ってから時臣氏が話す。

 

「『根源』への到達が我が望みでございます。」

「それは娘を捨ててでも叶えねばならぬ願いか?」

 

時臣氏は少し前に次女の桜を間桐に預けた。

 

魔術は一子相伝が基本。

 

次女の桜は長女の凛には及ばぬものの、豊富な魔力量と異質な魔力適性を持つ。

 

故に時臣氏は継承争いを避けつつ、他所の魔術師に狙われぬ様にする為に次女の桜を間桐に預けた。

 

間桐は後継ぎの魔術回路が枯渇したと聞く。

 

ならば娘は無下に扱われぬだろうとの判断だ。

 

だが、ギルガメッシュはそれを『捨てた』と断じた。

 

何故だ?

 

思考を巡らせていると不意にギルガメッシュが歩き出す。

 

「王よ、何処に行かれるのでしょうか?」

「たわけ!我の庭に奴隷一人とて不用な者はおらぬわ!」

 

そう一喝したギルガメッシュは姿を消す。

 

そして数分後には桜を抱えて戻ってきた。

 

そのギルガメッシュを見て驚愕する時臣氏の姿を見た私は、心の奥底から沸き上がる感情を抑え込むのに苦心するのだった。

 

 

 

 

side:遠坂 時臣

 

 

ギルガメッシュ王と共に綺礼も部屋を去ると、桜は恐る恐る声を出した。

 

「…お父さん?」

 

桜の頭を撫でながら、私は内心で頭を抱える。

 

どうしたものか?

 

口頭でのやり取りとは言え、互いの了承を以て桜は間桐の養子とした。

 

それを一方的に破棄した形なのだ。

 

あの怪物…間桐 臓硯を完全に敵に回しただろう。

 

…いや、あの老人なら見に回るか?

 

どちらにせよ、聖杯戦争が終わるまでに何らかの手を打たねばならない。

 

そこまで考えて気付く。

 

あの怪物が本当に桜に何もしないのか?

 

「お父さん…私、いらない子じゃないの?」

 

娘のその言葉に胸を突かれる。

 

遠坂の当主として行った事だったが…私は間違っていた。

 

愚か者め!

 

あの怪物が…桜に何もせぬ筈がないではないか!

 

私は娘を抱き締めながら話し掛ける。

 

「もちろんだ。桜は私と葵の娘なのだからな。それよりも、怖い思いはしなかったか?」

「えっと、凄いいっぱいの虫が私のところにこようとしていたんだけど、あの金髪の人が助けてくれたの。」

 

あぁ…王よ、感謝します。

 

貴方がいなければ、桜はあの怪物に心身共に壊されていたでしょう。

 

愚かな私の決断のせいで…。

 

己に怒りが沸く。

 

「痛いよ、お父さん。」

 

おっと、いかん。

 

強く抱き締め過ぎた。

 

慌てて力を緩めると、桜は少し恥じらいながら抱きついてきた。

 

「葵と凛はちょっと出掛けていていないんだ。だから今日はお父さんと一緒に寝ようか。」

「…うん!」

 

花開く様な笑顔の桜を、私はもう一度抱き締めたのだった。




本日は4話投稿します。

次の投稿は9:00の予定です。
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