二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。

zero編は原作をよく知らない作者がw〇ki等を元にキャラを妄想して書いています。

口調や性格が原作と違っても仕様だとご理解ください。


第252話

冬木のとある家にて嘆きの声を上げる者がいた。

 

「おぉ、ジャンヌ!何処にいるのですか!?」

 

この嘆きの声を上げている者はジル・ド・レェ。

 

かつてはフランスで名を残した者だ。

 

既に死した彼が何故現代にいるのか?

 

それは…とある男が喚び出してしまったからだ。

 

「青髭の旦那ぁ、あんまり騒がしくしないでくださいよぉ。今、芸術の最中なんですから。」

 

ジル・ド・レェに声を掛けるのは彼を喚び出したマスターの雨生 龍之介。

 

美を追求して殺人を繰り返す殺人鬼だ。

 

「おぉ、龍之介、すまない。だがこのジル・ド・レェは、ジャンヌを敬愛し崇拝しているのだ!」

「あっ、手が滑って壊れちった。」

 

雨生 龍之介は聖杯戦争には興味が無い。

 

彼が求めるのは『最高にCOOLな死』である。

 

それ故に彼は攫ってきた子供を、芸術と称して椅子や机といったオブジェクトへと変えている。

 

そんな異常な男は目の前で事切れた子供だった『物』を見て笑う。

 

「次はもっと上手くやらないとなぁ。青髭の旦那、旦那も一緒に子供を捕まえに行きましょうよ。」

「おぉ、龍之介、ジャンヌと会えぬ私を慰めてくれるのですね?このジル・ド・レェ、感謝します!」

 

こうして異常な美学を持った二人が冬木の街中を歩いていく。

 

次の犠牲者を物色する為に…。

 

 

 

 

side:ウェイバー・ベルベット

 

 

「ウェイバー・ベルベット殿、貴方に告げておかなければなりません。聖杯戦争の術式は解体が決定しています。」

「え?あ、いや、はい?」

 

聖杯戦争の参加申請をする為に教会を訪れると、言峰 璃正神父にいきなりそんな事を告げられて吃驚した。

 

なんか璃正神父の息子の綺礼が狼狽えている僕を見て笑っている気がする。

 

「ふむ、一つ聞いていいか?」

「失礼ですが貴方は?」

「余はマケドニアの王、イスカンダルである!」

「なに簡単に名乗っているんだよ!このお馬鹿!」

 

英霊が誰なのかを知られれば、生前の逸話から弱点をつかれてもおかしくない。

 

だから聖杯戦争では英霊の名前は伏せるのが基本だ。

 

なのに…このお馬鹿は!

 

「余に恥じ入る事などなに一つ無い。名を名乗るのに何を躊躇う必要がある?」

「お前の弱点をつける相手がいたらどうするんだよ!?」

「そんなものは諸とも蹂躙してくれるわ!ハッハッハッ!」

 

頭が痛い…。

 

ところで綺礼の奴…絶対に僕を見て笑っているよな?

 

「イスカンダル王、質問をどうぞ。」

「うむ、余が問いたいのは聖杯は使えるのかという事だ。」

「冬木の聖杯が完成しても使われる事は叶いません。」

「それは困る。それでは余の願いが叶えられぬではないか。」

 

あっ、そういえばこいつの願いを知らなかった。

 

「なぁ、ライダー。お前の願いってなんだ?」

「余の願い、それは…『受肉』である!」

「受肉?ってことは、蘇りたいって事か?」

 

僕の問い掛けにライダーが不敵に笑う。

 

「うむ!生前に成し遂げられなかった世界征服を、現世で今一度行うのも一興であろう?」

 

その物言いに僕は唖然としてしまう。

 

ちょ、ちょっと待て!

 

「おい、ライダー!どうやって世界征服をするつもりなんだよ!?」

「戦を仕掛け、蹂躙し、征服する。それだけの事ではないか。」

「このお馬鹿!今はお前が生きていた時代とは違うんだぞ!戦争で勝ったからって、そんな簡単に相手の国を支配出来る筈がないだろうが!」

「むっ?そうなのか?」

 

顎髭を撫でながら首を傾げるライダーを見て、大きくため息を吐く。

 

「今の時代は、お前が生きていた時代の様に王政を続けている国は少ないんだ。」

「王が治めていない?では、どうやって国を治めているのだ?」

「民主政って言ってわかるか?」

 

頷いたライダーがため息を吐く。

 

「知っておる。随分とまどろっこしい方法で政をしているのだな。」

「まどろっこしくても、それが今の時代の常識なんだよ。」

「事が起きたならばどうする?誰が決断し、誰が責を負うのだ?」

「え~っと、大統領とか首相とかだろ?」

 

ライダーに言われて気付いた。

 

民主政は王政に比べて責任の所在が曖昧な事に。

 

でも一国の責任を全て負うなんて、英雄でもなければ無理だ。

 

並みの人間なら責任の重さで潰れる。

 

それに王の決断が必ずしも正しいとは限らない。

 

そう考えるとベストでなくともベターを選択出来る民主政は、決して間違ってないと思う。

 

ライダーにそう伝えると、大きくため息を吐いた。

 

「はぁ…小さい、小さいぞ。」

「小さいってなんだよ。」

「男ならば大きく夢を持たんでどうする!覇道を行く事こそが男の本懐であろう!」

「世の中には出来る事と出来ない事ってのがあるんだよ!」

「やる前から出来ないと決め付けてどうする!夢を見て突き進み!その果てに力尽きるならば本望!余は余の戦士達と共にそうやって生き抜いた!」

 

ライダーの気迫に気圧される。

 

こいつは自分の言葉通りの生き様を貫いた英雄だ。

 

説得力が違う。

 

でも僕は…こいつのマスターだ。

 

歯を食い縛り、目を逸らさない。

 

そうすると、こいつは笑顔になった。

 

「な、なんだよ?」

「うむ!よい、よいぞ!それでこそ余のマスターよ!」

「痛い!少しは加減しろ、このお馬鹿!」

 

先日の様にバンバンと背中を叩かれる。

 

あぁ、もう、寄るな!暑苦しい!

 

「御歓談中のところ失礼ですが、よろしいですかな?」

「おぉ、すまんな神父よ。して、どうした?」

 

璃正神父はライダーに微笑む。

 

そして…。

 

「聖杯の使用は叶いませぬが、イスカンダル王の願いは叶うやもしれません。」

 

その言葉に僕とライダーは揃って首を傾げたのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

来週の投稿はお休みさせていただきます。

7月にまたお会いしましょう。

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