エルキドゥが土に還った後、ギルガメッシュはエルキドゥだった土を握り締めて涙を流し続けている。
「ギルガメッシュ、その土を俺に渡してくれないか?」
「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!」
首を横に振りながらギルガメッシュが拒絶をする。
俺はそんなギルガメッシュを見て苦笑いをしながら話す。
「その土を渡してくれないと、エルキドゥを生き返らせられないんだけどな。」
「…生き返らせる?」
そう言ってギルガメッシュは顔を上げて俺を見てきた。
「ギルガメッシュ、忘れたのかな?俺は魂の扱いを専門とする仙人なんだけど?」
「…だが、エルキドゥは神に造られた存在だ。その楔はどう解き放つ?」
「その準備は1ヶ月前からやってあるよ。」
俺がそう答えると、ギルガメッシュは大きく目を見開いた。
「人として在る事をよしとするギルガメッシュの考えは尊重するよ。でも、今回は神の ワガママで勝手に命を奪われたからね。なら、俺が生き返らせても問題無いだろう?」
「…くっ、フハハハハ!」
俺がそう言うとギルガメッシュは笑いだした。
「二郎よ、この我を道化としたのか?不敬だぞ!」
「そういう割りには随分と嬉しそうだけどね。」
「フハハハハ!我以上に道化となったエンリルの事を考えれば、腹の虫も治まるというものよ!」
そう言ってギルガメッシュは俺にエルキドゥだった土を差し出した後、腕で涙を拭う。
「失敗は許さぬぞ。」
「安んじてお任せあれ。」
俺がおどける様にギルガメッシュに応えると、ギルガメッシュは上機嫌に笑ったのだった。
◆
エルキドゥだった土を受け取った俺は、『反魂の術』の準備をしていった。
事前にある程度の準備はしてあったのだが、それでも色々と準備が必要で10日程掛かってしまった。
そして準備を終えた俺は、エルキドゥを生き返らせるべく反魂の術を実行するのだった。
◆
「あれがエルキドゥの魂の器となる身体か?」
「そう。1ヶ月前にエルキドゥから貰った髪を元に造った身体だね。」
反魂の術を行うために設置した祭壇の上にあるモノを見て、ギルガメッシュが目を細める。
「半神半人の器か。」
「神造兵器として生まれたエルキドゥの魂を人の身体で受け入れるのは無理だ。
だからエルキドゥの魂を受け入れるには神の血を与える必要があったんだ。」
俺の説明にギルガメッシュが頷く。
「エルキドゥだった土を使って神の血をあの器に与えたんだけど、神の血を濃くし過ぎるとエルキドゥを生き返らせた後にまたエンリルに干渉されるから、人の血と神の血の割合の調整にちょっと時間が掛かったんだけどね。」
「フハハハハ!エンリルが歯噛みをする様が目に浮かぶぞ!」
ギルガメッシュは腕を組んで上機嫌に笑う。
この調整は器の元にしたエルキドゥの身体に残っていた神の楔を取り除く為のものだ。
魂の方にまだ楔が残っているが、それは反魂の術でエルキドゥの魂を召喚する時にどうとでもなる。
なぜなら反魂の術は主に仙人の従者であるキョンシーを作る時に使う術だからだ。
せっかく作った従者に術者が襲われたら意味無いだろう?
反魂の術で魂に楔を付けたりするのは初歩の初歩だ。
あんな雑につけられた楔を外すのは鼻歌を歌いながらでも余裕である。
それぐらい出来なければ仙人にはなれないのだから。
「それじゃ始めるよ、ギルガメッシュ。」
「二郎よ、我の友を生き返らせて見せよ!」
ギルガメッシュの返事を聞いて反魂の術を実行する。
すると、エルキドゥの魂の器となる身体を中心に光が発される。
そして光は天に昇ると、器に降り注ぎ、器の中へと収まっていった。
その光景を見ていたギルガメッシュは、組んでいる腕に力が入っている。
光が器に収まって数秒経つと、器に変化が現れる。
真っ白だった顔に赤が差し始めたのだ。
そして…。
「…ただいま、ギル。」
目を開けたエルキドゥがそう呟くと、ギルガメッシュは歩み寄ってエルキドゥの身体を抱き締めたのだった。
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