二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第264話

side:遠坂 凛

 

 

叫び声に振り返るとそこには全身に鎧を纏った誰かがいた。

 

「凛!桜!」

 

呼ばれた桜は直ぐにお父様の所に戻ったけど、私はそのままゼンの所に残る。

 

何故ならゼンにはまったく慌てた様子がなかったから。

 

「二郎、あれは…。」

「うん、ベイリンだね。」

「ベイリン?」

 

アルトリアとゼンの言葉に疑問を持つ。

 

「凛、彼はかつて円卓に名を連ねた騎士です。」

 

アルトリアがアーサー王だって話は聞いている。

 

それで興味を持った私はちょっと前にアーサー王伝説を少し調べてみた。

 

そこに出てきた騎士の一人が『強欲の騎士ベイリン』

 

たしかベイリンは破滅の呪いが掛けられた剣を手放す様に、アーサー王を始めとした円卓の騎士達に何度も説得されたのだけど、決して破滅の呪いが掛けられた剣を手放そうとはせず、その末に円卓を追放されてしまったのよね。

 

そして最後は呪いの通りに破滅を迎えてしまったのが強欲の騎士ベイリン。

 

そのベイリンがあそこにいる全身に鎧を纏った奴なの?

 

いつの間にか剣を持っていたベイリンは叫び声を上げながら地を蹴った。

 

その地を蹴って向かった先にはギルガメッシュ…。

 

うそ!?

 

そっちにはお父様達が!

 

我関せずとばかりにお酒を飲み続けるギルガメッシュにベイリンの剣が迫ったその時…。

 

キンッ!

 

ランスロットがいつの間にか手にしていた剣で、ベイリンの一太刀を受け止めた。

 

「原初の王よ、かつての仲間が無礼を働きました。この者の無礼を我が手で灌ぐ機会をいただきたく…。」

「許そう。我が友が認めしその才にて我等を興じさせよ。」

「はっ!」

 

ランスロットがベイリンを押し返して皆から距離を取ると、二人の戦いが始まった。

 

「へぇ、ベイリンは狂気に身を委ねても戦いの勘は失ってないみたいだね。」

「えぇ、流石は馬上試合にてガウェインに勝利をした男です。」

「うそっ!?ベイリンってガウェインに勝ったの!?」

 

たしか読んだ本には、ガウェインの実力はランスロットとギャラハッドに次ぐって書いてあったわ。

 

なのにベイリンの方がガウェインよりも強いの?

 

疑問に思った私はゼンに聞いてみた。

 

「馬上試合をした当時はベイリンの方が強かったね。でもガウェインはその敗北を糧に大きく成長したのさ。」

「懐かしいですね。あのガウェインが好物の芋を控えて鍛練に励んでいたのを思い出します。」

 

えっ?ガウェインって芋が好きなの?

 

意外だわ。

 

王様になったって書いてあったから、優雅にワインを飲んでるイメージだったのに。

 

そう言うと二人は笑った。

 

「円卓の騎士達の中で、一番ワインが好きなのはランスロットじゃないかな?」

「そうですね。親馬鹿全開でギャラハッドが造ったワインを絶賛してましたから。」

 

むぅ…二人だけでわかりあっているのがなんかムカつくわ。

 

私は二人の間に身体を捩じ込んで割り込む。

 

そしてアルトリアに向けて勝ち誇ると、彼女は不満そうな顔をしてきた。

 

「凛、いくら貴女が子供とはいえ、それは横暴ではないでしょうか?」

「あら、なんの事かしら?私はまだ子供だからよくわからないわ。」

 

私とアルトリアは騎士達の戦いを横目に、目線で火花を散らすのだった。

 

 

 

 

side:ウェイバー・ベルベット

 

 

文字通りに目にも止まらぬ速さで剣が振るわれる戦いが、僕の目の前で起こっている。

 

ジャパニーズアニメーションで表現される様な、本物の英雄達の戦いだ。

 

「ラ、ライダー、どっちが優勢なんだ?」

「ランスロットだ。だが二人の差は互いの力量によるものではなく、おそらくはマスターの質の違いのせいであろう。」

「マスターの質?」

 

僕の言葉にライダーが頷く。

 

「我等サーヴァントの身体は魔力で構成される仮りの肉体だ。必然、その身体で力を発揮しようとすれば魔力を消費する。そして…。」

「サーヴァントに魔力を供給するのはマスター…。」

「うむ、その通りだ。故にマスターの力量次第でサーヴァントが発揮出来る力も変わる。」

 

僕はチラリとランスロットのマスターである衛宮 切嗣に目を向ける。

 

「切嗣、大丈夫?」

「アイリとパスを繋いでおいてよかった。僕一人の魔力だったら倒れていたかもしれない。」

 

英雄達の戦いの最中なのに緊張している様には見えない。

 

他の人達も同様だ。

 

なんでだ?

 

もし戦いの余波に巻き込まれたら、ただじゃすまないかもしれないんだぞ?

 

そんな疑問を持つと不意にライダーがため息を吐いた。

 

「…何だよ?」

「マスター、御主も魔術師ならば少しは注意深く観察してみよ。」

 

ムカッとしたけど、ライダーの言葉通りに観察してみる。

 

すると…。

 

「これって…結界か?」

「そうだ。余も含めて皆があの狼藉者の気配に気付くよりも早く、ゼンが皆に結界を張ったのだ。」

 

なんというか…流石は神なんだろうな…。

 

「はぁ…気を張っていた僕が馬鹿みたいじゃないか。」

「そこで気を抜くからマスターはまだ未熟なのだ。」

 

ジト目をライダーに向けると、ライダーは呆れた様子で僕を見ていた。

 

「マスター、御主の目的は何だ?」

「それは今の時代では得難い経験を積む為に…。」

「戦いとは己が譲れぬものの為に命を賭して行うものだ!なればこそ腹に力を入れて見届けねばならぬ!それがあの者達への礼儀である!」

 

ライダーの覇気に気圧されて後退りそうになる。

 

でも歯を食いしばって堪えた。

 

そんな僕を見てライダーは頷く。

 

「それでよい。後は全てを目に焼き付けよ。さすれば後にマスターの糧となる。」

 

腕を組んで胸を張りながら、ライダーは英雄二人の戦いを見届けている。

 

そんなライダーの隣に立って僕も二人の戦いを見届けた。

 

そうしてしばらく経つと、ランスロットの一撃をその身に受けたベイリンは光の粒子になって消えていったのだった。




本日の投稿は終わりです。

私的な理由ではありますが拙作を8月一杯休載とさせていただきます。

暑いのは苦手なのです…。

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