英雄達の戦いも終わり、残った英雄達も座へと還る時がきた。
「時臣よ、子とは巣立つものである事を努々忘れるな。」
「はっ!」
頭を垂れる時臣を一瞥したギルガメッシュは二郎へと目を向ける。
「さらばだ、友よ。」
「あぁ、またねギルガメッシュ。」
「二郎、また哮天犬と一緒に遊びに来てね。あんまり来ないとギルが拗ねちゃうよ。」
顔を逸らして鼻を鳴らすと、ギルガメッシュはエルキドゥと共に『座』へと還る。
「王よ、円卓の皆は貴女の来訪をお待ちしております。」
「そうですね。そのうち、二郎と共に行きますよ。」
アルトリアの言葉に笑みを浮かべたランスロットが『座』へと還る。
妻と子が待ち構えていると知らずに…。
「それじゃあ、私達も帰ろうか。」
「そうだね。」
天から柔らかな光がシッダールタとイエスに降り注ぐ。
「お世話になりました。」
「皆さんに祝福が…。」
「わー!?イエス!ストップストップ!」
ワイワイと騒ぎながら天に昇っていく二人の姿は、どこか俗な雰囲気を醸し出していた。
「…あの光景を教会の偉い人達に見せたら面白そう。」
「あぁ、そうだな。」
慌てふためく光景を想像して言峰父娘は笑みを浮かべる。
「切嗣、ユスティーツァさんはどうしようかしら?」
「一度、ドイツに連れて行く必要があるだろうね。舞弥、セラ、準備を頼んだよ。」
「「はい。」」
アインツベルンの面々はドイツへ向かう事を決める。
すると…。
「グワッハッハッハッ!」
御立派な神がアインツベルンの面々の前に現れる。
「ちょっとセラ~、また見えないじゃない。」
既にこの事態に慣れた出来るメイドのセラが、淀みなくイリヤを目隠しする。
もちろん凛、桜、カレンもしっかりと目隠しされている。
「衛宮 切嗣よ、汝に我の加護を授けた!これで連戦であろうと問題なくブイブイ言わせる事が出来るであろう!では…さらばだ!」
雄々しく虚空を突き破り御立派な神が去ると、妻達から熱い視線を注がれる切嗣は頭を抱えた。
そんなやり取りを苦笑いをしながら見ていた時臣は、ふと雁夜に問い掛ける。
「どうするか決めたか?」
「あぁ、間桐家は遠坂家の庇護下に入る。」
間桐 臓硯が滅んだ事で間桐家に平和が訪れた様に見えるが、それは仮初めのものだ。
臓硯は醜悪な蟲へと姿を変じていたが、数百年を生きた魔術師である。
そんな臓硯の遺産となれば魔術師の興味を引かない筈がない。
そして間桐家に残っているのは魔術の素人ばかり。
多くの魔術師の目には格好の餌場に映るだろう。
故に雁夜は甥っ子を守る為に遠坂家の庇護下に入る事を決意したのだ。
教会勢力である言峰家の庇護下に入る道もあったのだが、とある覚者の影響で雁夜は熱心な仏教徒になっているので、教会勢力の下につくという選択肢は存在しなかったのである。
「さて、俺達も帰ろうか。」
「ゼン!」
凛に呼び止められて二郎とアルトリアは目を合わせる。
「十年程度なら日ノ本で過ごしてもいいか。」
「そうですね。中華は士郎と王貴人に任せて、私達は日本でゆっくりしましょう。」
とある『世界』では悲劇に彩られた第四次聖杯戦争も、この『世界』ではこうして多くの笑顔に満ちて終わりを迎える。
そして子供達は約束の時が来るまで、それぞれ研鑽を積み続けるのだった。
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