「エルキドゥ、二郎、時は来た。エンリルを討つぞ!」
上半身をはだけて戦化粧を施したギルガメッシュがそう宣言する。
「いよいよだね、ギル。」
「エルキドゥよ、身体の調子はどうだ?」
「あれ?心配してくれるの?」
そう言ってエルキドゥが嬉しそうに微笑むと、ギルガメッシュは鼻を鳴らして目を逸らした。
「神々との戦の後に、お前は我の妻になるのだろう?我の妻になる程の者を、なぜ我が心配せねばならんのだ!」
「もう、照れなくてもいいのに。」
「たわけ!照れてなどおらん!確認をしただけだ!」
2人が醸し出す甘い空気を、俺はニヤニヤとしながら見物していく。
「二郎。」
しばらくの間、2人のイチャイチャを眺めていたのだが、不意にギルガメッシュが
表情を引き締めて俺に声を掛けてきた。
俺は頷くと神酒を用意する。
3つの杯に注がれた神酒をそれぞれが手にすると、3人で杯を打ち鳴らして一息で
神酒を飲み干した。
「行くぞ!」
空を飛ぶ黄金の船に乗り込んだ俺達は、メソポタミアの神々がいる天界に討ち入るのだった。
◆
「待っていたぞ、英雄達よ。」
メソポタミアの天界に乗り込むと、軍神ニヌルタが神々を引き連れて待ち構えていた。
「そこを退け、ニヌルタ。今ならば我の眼前に立ちふさがった不敬を許そう。」
「ハッハッハッ!神々を前にしても変わらぬその覇気、見事なり!」
軍神ニヌルタは嬉しそうに笑う。
「ギルガメッシュ、ここは俺が引き受ける。」
「よかろう、この場は二郎に任せる。エンリルとイシュタルの首を持ってくる故、
しばし神々と戯れているがいい。」
ギルガメッシュの返事に頷いた俺は1人でメソポタミアの神々の前に立つ。
「哮天犬、エルキドゥを頼んだよ。」
「ワンッ!」
半神半人になったエルキドゥは自然を操る事が出来なくなっている。
今のエルキドゥに残っている権能は、繋ぎ止める力を持つ黄金の鎖を扱う権能だけだ。
黄金の鎖は神の力が濃いほどその繋ぎ止める力が増すのだが、エルキドゥにはそれ以外に神に対して有効な攻撃方法が無い。
その為、『天に哮える犬』である哮天犬をエルキドゥに同行させるのだ。
空を飛ぶ黄金の船がエンリルとイシュタルがいる所へと進んでいく。
その間、軍神ニヌルタと神々は動かずに俺と対峙している。
「行かせてもよかったのですか?軍神ニヌルタ。」
「貴様は二郎真君だな?」
「はい。」
「構わぬ、元々我等はアヌ様に仕える神々だ。権力欲に溺れるエンリルに尽くす義理は無い。それに、イシュタルの乱行の数々には愛想が尽きたのでな。」
そう言って軍神ニヌルタはニヤリと笑う。
「だが、人に天界に乗り込まれて黙っていては他の国の神々に舐められてしまうのでな。 すまんが二郎真君には我等の相手をしてもらうぞ?」
「えぇ、構いませんよ。」
俺の返事を聞いた軍神ニヌルタは好戦的な笑みを浮かべる。
「音に聞こえし中華の武神と戦をする機会に恵まれるとは…エンリルの愚行に感謝をせねばなるまい。なぁ、皆の衆!」
「「「オォ―――!!」」」
軍神ニヌルタの問い掛けに、メソポタミアの神々が咆哮で応える。
咆哮が収まるとメソポタミアの神々はギラギラとした好戦的な視線で俺を見てくる。
俺は三尖刀を一振りすると、百を数えるメソポタミアの神々に立ち向かうのだった。
これで本日の投稿は終わりです
また来週お会いしましょう