「それでそれで!メディアちゃんってどんな男性がタイプなの?」
「えっと…誠実な男性かしら…。」
乙女な願いを告白したキャスターと女性陣はあっという間に打ち解けた。
そして真名も打ち明けたキャスターに対して物怖じしない切嗣の3人目の嫁…藤村 大河が切り込んでいった。
藤村 大河は冬木に根差す藤村組組長の娘で、父を伝に切嗣と知り合い惚れてしまった。
アイリスフィールという美しい妻がいるとあって一時は諦めかけたのだが、切嗣が中華の国籍を取得して重婚出来る様になったと知ると、まだ高校生であった当時に押し掛け女房となった。
そして魔術の存在を知って身体強化を習得すると、大学生の時に剣道で全国大会四連覇を果たしている。
そんな彼女は現在、凛達が通う高校の教職に就いている。
彼女の役目は凛や桜達の監督役兼、魔術師と一般人の認識の違いの調整だ。
もちろん彼女自身が教職に就くことを望んだので与えられた役目である。
まぁ、ある意味で学生達以上にフリーダムなので、その役目が果たせているのかは疑問なのだが…。
「いやぁ~、最近お父さんが『孫の顔はまだか?』ってうるさくってさぁ。私まだ二十代よ?もっと切嗣さんと幸せな夫婦生活を楽しんでもいいと思うのよねぇ。」
「えっ?二十代ならそろそろ焦るべきじゃない?」
「あっ、そういえばメディアちゃんの時代は文字通りに『人間五十年』で、十代で結婚とか出産は当たり前だったわね。」
失敗失敗と笑う大河の姿にメディアは戸惑う。
実は次にサーヴァントを喚び出すのは桜なのだが、メディアと共にガールズトークに花を咲かせていて動く気配が無い。
そこで仕方なく士郎が喚び出す事にした。
召喚陣の前に立った士郎は明確に喚び出す相手をイメージしていく。
イメージをする事、それは投影魔術を扱う士郎にとって日常的なものだ。
士郎の魔術起源は『剣』なのだが、剣以外の投影も可能である。
そこで遡月 士郎の師である衛宮 切嗣は、彼に弾丸を投影させる事にした。
切嗣は士郎を師事するにあたり、二郎にその才を聞いてみた。
二郎は『射の才は一流だけど、それ以外は二流がせいぜいだね。』と評した。
これを聞いた士郎自身は大いに落ち込んだが、これで士郎の育成方針がはっきりと決まったのだから些細な問題であろう。
切嗣はまだ子供であった当時の士郎にハンドガンを持たせた。
男の子である士郎は銃に目を輝かせたが、士郎の姿にかつての己を重ねた切嗣は複雑な思いだった。
射撃における基本を教えて士郎に的を撃たせる。
すると初弾は的から外れてしまったが、二発目以降は全て的の中心付近に命中した。
これに切嗣は大いに驚いた。
初めて銃を持った士郎がベテランのガンマン並みの腕前を見せたのだから。
だがこれは当然の事だ。
切嗣が考える一流の才能と、武神である二郎が考える一流の才能には大きな違いがあるのだから。
こうして射の才能を開花させた士郎の戦闘スタイルは、切嗣と同じ現代兵器を用いたものとなった。
そしてこの才能は弓道にも生きて、全国制覇を成し遂げたわけである。
(剣士…英雄…。)
明確なイメージに召喚陣が反応すると、士郎は詠唱を始めた。
そして詠唱が終わると召喚陣は一際強く輝き、一人の男性が姿を現す。
褐色の肌に背中の葉の形をした痣の様なものが特徴的な人物で、その目はどこか哀しみに満ちている。
「サーヴァント、セイバー、召喚に応じ参上した。問おう、君が私のマスターか?」
「あぁ、俺がマスターだ。」
強い存在感を放つサーヴァントに臆さぬ様に、士郎は腹に力を入れて問い掛ける。
「真名を教えてくれないか?」
「マスターが他の者に聞かれて構わないなら答えよう。」
士郎が頷くとセイバーが真名を明かす。
「私はジークフリート。乞われるままに力を振るい、後悔の中で倒れた戦士だ。」
「そうか、よろしくなジークフリート。それで、ジークフリートの願いは?」
士郎の問いにジークフリートはすがりつく様に答える。
「私の願い…それは、誰かに乞われてではなく、今度こそ自らの意思で英雄となる事だ。」
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