英霊の召喚も残すは二人。
イリヤに続いて慎二が英霊を喚び出す。
召喚陣が一際強く輝くと、そこには野性味を感じさせる一人の男性の姿があった。
「サーヴァント、ランサーだ。おめぇが俺のマスターか?」
「あぁ、僕がマスターの慎二だ。君はセタンタで間違いないか?」
「おう!俺はセタンタだぜ。クー・フーリンとは呼んでくれるなよ。」
ニッと笑う彼に慎二は首を傾げながら話し掛ける。
「なぁ、セタンタ。なんでランサーなんだ?僕はルーン魔術を教えて貰いたくて、君をキャスターで喚んだ筈なんだけど?」
「あん?別にどんなクラスだろうがルーンを教えるのに問題はねぇよ。それよりもランサーで来なきゃ、俺の願いが叶わなかったからな。」
「ルーン魔術を教われるんなら問題ないけど、セタンタの願いは何なんだ?」
慎二の問いにセタンタはニヤリと口角を上げる。
「ケルトの戦士として存分に戦いてぇんだよ。俺以外に六人は英雄が喚ばれんだろ?なら一人や二人は戦い甲斐がある相手もいると思ってな。」
「セタンタらしい願いだね。」
不意に掛けられた声に振り向くと、二郎を目にしたセタンタは口笛を吹く。
「ヒュー♪ゼンがいるとなりゃ文句はねぇ。俺と戦ってくれんだろ?」
「構わないよ。でも、セタンタ以外にも俺との戦いを望む者がいてね。」
二郎の声に反応する様に見上げる様な大男が進み出る。
「でけぇな。雰囲気もありやがる…なにもんだ?」
「私の名はアルケイデス。」
「…ギリシャの大英雄じゃねぇか。」
大男がアルケイデスと知ったセタンタは獰猛な笑みを浮かべる。
「いいぜ。ゼンに挑むとなりゃ、あんたを超えるぐれぇはやってみせねぇとな。」
「ケルトの戦士の中でも特に名高い貴殿との戦いは私も望むところだ。受けて立とう。」
「すまないが、私も混ぜてもらおうか。」
空気が歪んで見える程の濃厚な戦意の中に、ジークフリートが歩み出る。
「セタンタ殿、私はジークフリート。」
「へぇ、竜殺しの英雄か。」
「私は異世界へと転生し、己が意思で英雄を目指すと志す戦士。故に人類史上でも名高い二人と戦える機会は見逃せるものではない。」
ジークフリートも加わり戦意の密度が更に増す。
魔術師である慎二達でも呼吸が難しくなる程に。
だが…。
「はいはい、そこまでよ。まだ私が英霊を召喚してないんだから、さっさとそこを退きなさい。」
そんな空気を凛があっさりと吹き飛ばした。
「あの戦意に臆さねぇとはやるねぇ。嬢ちゃん、名は?」
「遠坂 凛、二郎の…貴方が知る名で言うならゼンの恋人よ。」
凛の言葉にセタンタは目が点になる。
「あぁ~…嬢ちゃん、本当か?」
「本人がいる前で嘘をついてどうするのよ。」
「そりゃそうなんだがよ…しかし嬢ちゃんがねぇ…。」
セタンタにとって二郎は師のスカサハが敵わぬと言いきる程の強者だ。
その二郎に目の前の年若い娘が認められたという事実は、中々に衝撃的なのだ。
「なによ?なんか文句でもあるわけ?」
「いや、ねぇよ。」
「ふ~ん…まぁ、そういう事にしておきましょ。」
凛はそう言いながら手でそこを退くように促す。
それを受けてセタンタは肩を竦めてから移動する。
彼の背にアルケイデスとジークフリートも続く。
そんな彼等に…。
「あぁ、そうだわ。」
凛は自信を持って言い放った。
「三人じゃ半端よね。だから私がもう一人喚び出してあげるわ。貴方達にも勝てる英雄をね。」
この言葉を受けて三人は不敵な笑みを返したのだった。
次の投稿は11:00の予定です。