二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です。


第288話

遠坂 凛の召喚により突如雲よりも高い空に放り出された王士郎は、状況を認識してため息を吐く。

 

「やれやれ、これは召喚を拒んだ私に対する当て付けか?」

 

重力に身を任せ落下し雲を抜けると、王士郎は眼下の景観を目視して驚く。

 

「ここは…まさか、冬木か?」

 

広大な森の中に西洋風の城の様な建物が一つ、そしてそこから数km離れた場所にある街並みに、星の守護者であった頃に摩耗した記憶が刺激された。

 

「そうか…今の時期は前世で『聖杯戦争』が行われた頃だ。」

 

納得した王士郎だが、そこで首を傾げる。

 

「だが、私を喚び出した者の魔力量は間違いなく魔法使い級だった。そうなると…私を喚び出したのはキャスターか?」

 

自身が空に放り出され、更に眼下にはアインツベルンの城がある。

 

故に王士郎は腕を組んで首を傾げる。

 

「そもそも私は英霊になっておらず、まだ生きている。聖杯戦争の召喚陣は生者を強引に喚び出す様な術式ではなかった筈だ。何かがおかしい…。」

 

そう彼は疑問に思うものの、このままではアインツベルンの城に直下してしまう。

 

「やれやれ、先ずはこの状況をなんとかするとしよう。」

 

虚空瞬動で空を蹴った王士郎は緩やかにアインツベルンの城の玄関前に着地する。

 

すると…。

 

「お待ちしておりました、御客様。」

 

メイド姿の美女が彼を出迎えた。

 

「私はアインツベルンに仕えるメイドでセラと申します。中で皆様がお待ちでございます。御案内させていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

彼女の姿に僅かの懐かしさを感じながら、王士郎は口を開く。

 

「少し待ってもらっていいだろうか。私も急に喚ばれたのでな。連絡をしておきたい者がいる。」

 

セラが頭を下げたのを見ると、王士郎は黒麒麟を喚ぶ。

 

「『無事の様だな、主。』」

「あぁ、問題ない。王貴人に伝えてくれ。首脳会談を行う劉王の警護を任せると。」

「『伝えておく。それで、主はどうする?』」

 

黒麒麟の問いに王士郎は少しの間を置いてから答える。

 

「如何な形であれ召喚されてしまったからには、一度は召喚者に会っておかねばな。」

「『わかった。ではな。』」

 

黒麒麟が虚空に姿を消すと、王士郎はセラに向き直る。

 

「では、案内を頼もうか。」

「はい、こちらへどうぞ。」

 

セラの案内で城の中へと進んでいく。

 

注意深く観察をしながらも、懐かしさを感じていく。

 

(幾つかの戦意は感じるが、殺意や悪意は感じない。それにこの気配は…老師とアルトリアか?)

 

二人の気配を感じ取った王士郎は、セラの後に続きながら眉間を揉む。

 

「日本にいるとは聞いていたが…まさか冬木だったとはな。」

 

おそらくは聖杯戦争そのものが既に変わっているだろうと察して苦笑いをする。

 

「やれやれ…老師、貴方はどこまでも退屈しない御仁だよ。」

 

 

 

 

side:王士郎

 

 

セラに案内され皆が待つ部屋に通された私は、周囲を見渡して老師とアルトリアの姿を見付けた。

 

「老師、いきなり空に放り出された事も含め、どういう事か説明して貰いたいのだが?」

「それは凛から説明させようか。」

「凛?」

「私の事よ。」

 

赤が良く似合う彼女の姿を目にして、私は内心で懐かしさを感じる。

 

「私は遠坂 凛、二郎の恋人よ。」

 

その言葉を聞いた瞬間、私はため息を堪えきれなかった。

 

「なに?なんか文句でもあるの?」

「いや、まだ年若い君を、老師が名を預ける程に認めたという事に少しばかり驚いてしまってな。」

「ふ~ん…まぁ、そういう事にしておいてあげるわ。」

 

思い出すのが困難な程に摩耗していても、彼女は変わらないと感じる。

 

「ならば説明して貰おうか?何故に私が喚ばれたのかを。」

「簡単よ、あいつらと戦って貰いたいの。」

「あいつらとは、あちらで私に戦意を叩き付けてくる者達の事か?」

 

目を向けた先には、今の時代では有り得ない程の神秘を纏った男達がいる。

 

「えぇ、そうよ。」

「ふむ、それで私の利益は?」

「あら、神代の英雄と戦えるって栄誉では足りないかしら?」

 

随分と挑発的な言い方をしてくれる。

 

ならば…。

 

「戦うだけでいいのか?彼等に勝つ必要は無いと?」

「ふ~ん…随分と自信があるみたいね。」

「これでも中華が誇る武神の一番弟子なのでな。たとえ古の英雄が相手でも、そうそう後れは取らんと自負している。」

 

私の言葉に神秘を纏った男達が醸す戦意が濃度を増す。

 

かつて戦場で感じた聞仲の覇気をも超えるだろうそれに、私は自然と笑みを溢す。

 

「それじゃ、後で『天弓』の異名を持つ貴方の腕前を存分に見せてもらうわ。」

「あぁ、期待に応えてみせよう。」

「イリヤ、待たせたわね。」

 

その言葉を耳にして私は目を向ける。

 

そこには摩耗した記憶よりも成長した彼女の姿があった。

 

「まさか中華の大英雄である王士郎を喚び出すなんてね。」

「良い選択でしょ?」

「えぇ、でも私が喚んだアルケイデスの方が上だけどね。」

 

目線で火花を散らしているその様子に、懐かしさを感じながらも苦笑いをしてしまう。

 

イリヤは一つ咳払いをしてから軽やかに声を上げる。

 

「それじゃ『英霊の宴』を始めるわ!パーティーの準備をしてあるから、先ずは料理とかを存分に楽しんでね。」

 

英霊の宴?

 

どうやらまた聞かねばならない事が増えたようだ。

 

私は癖毛の青髪の少年や赤毛の少年の姿等を視界の端に納めながら、老師とアルトリアの元に足を進めるのだった。




本日は3話投稿します。

次の投稿は9:00の予定です。
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