二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第290話

英霊の宴開幕のパーティーが終わった翌日、各マスターは己が目的の為に動き始めた。

 

その様子を見ていこう。

 

先ずは美遊だ。

 

美遊はメディアから空を飛ぶための魔術…現代で言えば魔法の領域のものを習っている。

 

「ダメよ美遊。まだ魔力の制御が荒すぎるわ。それじゃ魔術を成功させても、あっという間に墜落よ。」

 

神代の魔法使いからのダメ出しに美遊は大きく肩を落とす。

 

「うぅ…難しいよぉ。」

「本来、魔術というものはとても繊細なものなの。世界の理に働きかけるのだから。雑になって失敗したら、全て術者に跳ね返ってくる。貴女の身を守る為にも厳しくいくわよ。」

 

四苦八苦している美遊から場面を慎二のところに移そう。

 

慎二はセタンタからルーン魔術を教わっている。

 

「ダメだダメだ!書き順、形、どっちが違っても世界は応えねぇぞ。こういうのは理屈じゃねぇ。何度も繰り返して身体に叩き込むしかねぇんだよ。」

 

言葉遣いは荒いセタンタだが、その指導は何度も手本を示したりしてとても面倒見が良い。

 

そのおかげか慎二はルーン魔術の初歩を身に付けつつあった。

 

「出来た!」

「おう、それが火のルーンだ。忘れねぇ内にもう一度やってみろよ。」

「うん、ありがとうセタンタ。」

 

照れ臭いのかセタンタは鼻を鳴らしている。

 

そんな微笑ましい様子から場面をカレンの所に移そう。

 

「わーい。」

 

やや抑揚に欠けた喜びの声だが、カレンはマルタが喚んだタラスクの背に乗り空を飛んでいるのを楽しんでいる。

 

マルタはというと…。

 

「そこであたしは言ってやったのよ。見返り無しの施しを善意として受け止める人ばかりじゃない。だから奇跡で人を救うのも程々にしなさいってね。それをあの御人好しは『それも人の持つ原罪、私が背負うべき罪。マルタさん、心配してくれてありがとうございます。』って言ったのよ。あの時は本当に頭が痛くなったわ。」

 

ワイングラスを片手にそう愚痴っていた。

 

「ふむ、では何故に貴女は神の子から離れなかった?面倒が起きるのはわかっていたのだろう?」

 

綺礼の問い掛けにマルタはグラスを干してから答える。

 

「あの時代は冬になれば飢えて凍えるのが当たり前だったわ。今の時代とは違ってね。でもあの御人好しと一緒にいればそれを避けられる。それじゃ理由にならないかしら?」

「なるほど、そういう事にしておこう。」

 

綺礼の言葉にマルタはため息を吐く。

 

「あの御人好し並みの察しの良さね。それって生きにくくないの?」

「さてな。これが私だとしか言えん。」

 

そう言って酒を一口飲む綺礼の隣には五年前に再婚して妻となった、バゼット・フラガ・マクレミッツの姿がある。

 

夫婦共に執行者の役目があるので二人の間にまだ子供はいないが、バゼットの方はそろそろいいかと本気で考えているので、そう遠くない未来に二人の間に子供が出来るかもしれない。

 

決してカレンがバゼットを煽っているわけではない…と思いたい。

 

そんな二人からマルタは璃正へと目を移す。

 

「聖マルタなんて呼ばれているあたしがこんなので失望したかしら?」

「いいえ、貴女は正しく聖マルタです。」

「あたしはただの村娘だって言ってるのに…どうして皆そう言うのかしら?」

 

頬杖をつくマルタに璃正は笑みを浮かべる。

 

「貴女が神の子の行動を咎めたのも、神の子を心配しての事。皆が生きるのに必死だった時代に他者を思いやる事が出来た貴女は、正しく聖を冠するに相応しい御方です。」

「…そう。」

 

慈愛に満ちた璃正の言葉を耳にしながら、マルタは肴のチーズを摘まむ。

 

(イエスが彼を本気で祝福した理由がわかったわ。時代が違えば、彼も聖人と呼ばれていたかもしれないもの。だからあんたもはりきって見守っているのね。)

 

人の領域では認識出来ない様に姿を隠した見知った顔の上級天使と目が合うと、マルタはジト目を向ける。

 

(あいつから離れてると思ったらここにいたのね。ばれたらバチカンとかで大騒ぎになるんだから大人しくしてなさいよ?)

 

そう念話を送ると、上級天使はニコリと微笑みを返す。

 

(本当に大丈夫かしら?イエスと同じでこいつらもうっかりやらかすから心配だわ。)

 

これまでイエス達がやらかした数々のうっかりを思い返すと、マルタは大きくため息を吐いたのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

実は苦労人なマルタさんでした。

また来週お会いしましょう。
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