二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です


第2話

太上老君に連れられて、俺は中華の西の果てにあるという崑崙山にやって来た。

 

どうやらここで、道士としての修行をしていくらしい。

 

「さて、ゼン。まずは基本となる『調息』からやっていこうか。」

「はい!老師!」

 

太上老君からは師匠ではなく、老師と呼ぶようにと言われた。

 

それと、俺の呼び方に関してなのだが、名はその者の本質を表すモノとの事で

簡単に呼んではいけないと母上から教わっている。

 

母上が言うには、家族か信頼する相手以外に、名を預けてはいけないらしい。

 

なので通常では、字を相手に呼んでもらうそうなのだ。

 

俺としては老師に教えを乞うので名を預けてもいいのだが、

老師曰く、母上から『崩拳』をくらいたく無いそうだ。

 

『崩拳』というのは、仙人達が磨き上げてきた拳法における攻撃の事で、

『拳による突き』の総称らしい。

 

拳法の基本にして、極めれば奥義にも至る攻撃との事。

 

そんな感じの事を、崑崙山に来るまでの間に、老師に教えてもらったのだ。

 

「それでは、『調息』のやり方を教えるよ。」

 

老師の説明を俺なりに解釈していく。

 

調息は分かりやすく言えば『深呼吸』の事だ。

 

それにより体内の気を整え、練り上げ、巡らせるのが『調息』の目的みたいだな。

 

「それじゃ、ゼン。さっそく調息をやってみようか。」

「はい!老師!」

 

俺は老師の説明通りに、調息をやっていく。

 

慣れない呼吸の仕方だからなのか、最初の内はなんか疲れを感じてしまった。

 

それでも、老師の指示通りに続けていって30分程経つと、なにやら臍の下辺りが

ポカポカと暖かくなってきた。

 

「老師?なんかこの辺が暖かくなってきたんですけど?」

「へぇ?流石は天帝の外甥とでも言うべきかな?もう、気を整えられてきたみたいだね。」

 

え?この暖かいのが気なの?

 

「僕がそれを感じられる様になるまで5年は掛かったんだけどね。お見事だよ、ゼン。」

「はい!ありがとうございます、老師!」

 

老師にお礼を言っていると、臍の下辺りの暖かいナニかが消えてしまった。

 

あれ?

 

「ゼンが調息を止めてしまったから、体内の気が散ってしまった様だね。」

「そうなんですか?」

 

俺の疑問の声に、老師は臍の下を指差しながら話をしていく。

 

「ゼンが暖かさを感じた場所は丹田というんだ。調息により、ここを通して身体の

 気を整えるのが、道士としての基本となる。覚えておくんだよ?」

「はい!」

 

俺の返事に、老師は満足そうに頷く。

 

「それじゃ、まずは3年ぐらい調息をやっていこうか。」

「3年ですか?」

「調息を意識せずとも出来る様にならないと、仙人にはなれないからね。」

 

そう言いながら、老師はニコニコと笑っている。

 

「意識して出来るのは当たり前。それこそ日常や、戦いの中、果ては寝ている時でも

 調息が出来る様になって、初めて身に付けたと言えるんだよ?」

 

マジですか?

 

その要求は厳し過ぎるんじゃない?

 

「なに、大丈夫さ。気を感じられるなら、このまま調息の修行を続けていけば、

 自然と身体の方が調息を求めていくようになるからね。」

 

ニコニコと笑う老師に促され、俺は調息の修行を続けていくのだった。

 

 

 

 

「はぁ…。」

 

我の目の前で妹が何度目かわからぬ、ため息を吐いている。

 

「妹よ、二郎が仙人になるのは二郎自身の為。お前も納得した事であろう?」

「そうですが…それでも、寂しいものは寂しいのですよ、兄上。」

 

そう言うと妹が、またため息を吐く。

 

やれやれ、世話の掛かる奴よ。

 

「時に妹よ。お前は次なる子を産まぬのか?」

 

我の言葉に、妹が瞬きをしながら我を見てくる。

 

「次なる子を産めば、その寂しさも紛れるのではないか?」

「そうかもしれませんが…。」

 

ふむ、感触は悪くない。

 

もう一息といったところか。

 

「今の二郎は庇護される者だ。故に、庇護すべき存在が出来れば、

 二郎の修行の励みになるのではないかな?」

「そうですね…二郎も弟か妹が出来れば喜ぶかもしれませんものね!」

 

寂しさに憂いていた妹の表情が、花も恥じらう程の華やかな笑みに変わった。

 

うむ、もう大丈夫だな。

 

「兄上、急で申し訳ありませんが、これで失礼しますね。」

「うむ、また会おうぞ、妹よ。」

 

神獣に飛び乗った妹は、音を置き去りにする程の速さで去っていった。

 

 

「やれやれ、あの様子では日が昇っている内から励みそうだな。」

 

 

そう言葉を溢しながら、我は頭を掻いた。

 

あの様子では、妹の夫が枯れ果ててしまうかもしれぬな。

 

ふむ…。

 

「楊氏には、我の秘蔵の霊薬を少し融通するとしようか。」

 

そう思い立った我は、手を叩いて配下の者を呼び出すのだった。




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