「アルケイデスさん、治癒魔術を掛けますね。」
ジークフリートとの戦いで傷付いたアルケイデスを桜が治療する。
「マスター、腕一本分は傷を残しておいて欲しい。この時代の知識を元に作成した薬の治験をしたいんだ。」
アスクピレオスの申し出に桜は苦笑いをする。
「えっと…。」
「お嬢さん、彼の言う通りにしてやってくれ。」
アルケイデスの言葉に桜が驚く。
「いいんですか?」
「医の事となると神にすら反発する猪突なところもあるが、その患者の事を思う心は本物だ。それに彼の医者としての腕は信用している。」
その言葉に微笑むと桜は腕一本を残してアルケイデスの治療を終えた。
「さぁ、始めよう。ふふふ…アルケイデスの身体で治験が出来るなんて最高だ。」
「…これがなければ信頼も出来るのだがな。」
そんな一幕を他所に、王士郎とセタンタが睨み合う。
「いいのか?弓を手に取るまで待ってやるぜ。」
「心遣いはありがたいが、妻が見ているのでな。少しばかり意地を張りたくなったのさ。」
そう言う王士郎は二本の短剣を手に佇んでいる。
「そうかよ…後悔するぜ!」
呪いの魔槍を手に、唐突にセタンタが仕掛けた。
常人には残像しか映らない高速の突きが王士郎を襲う。
だが王士郎はその突きを手にする短剣で弾いてみせた。
続けてセタンタは一息で十を楽に超える突きを上下に散らして放つ。
しかし王士郎はその尽くを防いでみせた。
飛び退いて間を作ったセタンタは称賛の声を上げる。
「へっ、やるじゃねぇか。」
「師との手合わせで数えきれぬ程に死にかけてな。そのおかげで身体が勝手に反応してくれる。」
「…お前もかよ。」
その言葉で色々と察した王士郎が遠くを見詰めると、セタンタも遠くを見詰めた。
二人の間に奇妙な友情が生まれた。
死線を超えた者だけがわかる男の友情だ。
微妙な空気の中で戦いを再開した二人を目に、イリヤは凛に問い掛ける。
「ねぇ、凛。まさか貴女も二郎真君様からそういう指導を受けてるの?」
「そんなわけないでしょ。私は優しく指導してもらってるわ。」
凛やアルトリアには優しく王士郎には厳しい指導をする二郎だが、これは王士郎が英雄になる事を望んだのが起因となっている。
二郎にとって英雄とはギルガメッシュである。
故に王士郎をその領域に成長させる為に、一見すると理不尽とも言えるレベルで指導をしているのだ。
そうとは知らないイリヤはどこか勝ち誇る様な凛を見て、不満を露に頬を膨らませる。
「む~…ふんっ!今に見てなさい。英霊の宴が終わったら私達もそっち側になるんだから。」
「私達もって…まさか桜とかも?」
「そうよ。私は凛と違って抜け駆けなんてしないもの。」
呆れる様にため息を吐いた凛はイリヤに問い掛ける。
「まぁ、いいわ。ところでどうやってあの堅物の慎二と士郎を誘惑するつもりなのかしら?」
「最初はメディアに手伝ってもらおうと思ってたのだけど、私達が相談してる時にマーラが来てね。力を貸してくれるって言ってくれたわ。」
「いや、それは流石にどうかと思うけど…。」
イリヤの言葉に凛は頭を抱え、話を聞いていたアルトリアは苦笑いをする。
「まぁ、本人達がそれでいいのなら良いのではないでしょうか?」
「それはそうなんだけどね…。」
「そういえば、切嗣が加護を貰ってるって聞いたバゼットが綺礼にもとか言ってたわね。」
「なにを考えてんのよあのダメットは!?誘惑の悪魔から加護を貰うなんて、教義的にダメに決まってんでしょ!」
執行者として戦いには優れているバゼットだが、プライベートでは色々と残念な女性である。
その為、時折こうして『ダメット』と呼ばれてしまう事もあるのだが、言峰家の嫁として彼女なりに努力は重ねているのだ。
その努力が実るのかどうかは神の子でも察する事は出来ないが…。
凛が盛大にため息を吐いているのを他所に、王士郎とセタンタの戦いは激しさを増していくのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。