二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です。


最終話

「見事だ。」

 

干将の爆発で胸に大きな穴が空いたアルケイデスが、傷の深さを感じさせない爽やかな笑みで称賛の声を上げる。

 

その称賛を受けて王士郎は肩を竦める。

 

「君がヒュドラの毒を塗った矢を一本でも持っていたら、私に勝ち目はなかった。」

「私は自らの意思で君との戦いに挑んだ。ならば如何な条件であろうと、負けた私が君より弱かっただけの事だ。」

 

アルケイデスの言葉に王士郎は困った様に苦笑いをする。

 

「侮辱に感じたのならば謝罪しよう。」

「いや、君が私を強敵だったと感じてくれた故の言葉なのだ。ならば謝罪の必要はない。」

 

その堂々たる振る舞いに、王士郎は英雄としての格の違いを感じた。

 

(正に英雄だな。私も相応に自負していたつもりだったが…。)

 

内心で自嘲していた王士郎の耳に王貴人の声が届く。

 

「士郎。」

 

王貴人は手にしていた竹の水筒の蓋を開ける。

 

すると辺りは芳醇な香りに包まれた。

 

「さぁ王士郎よ、勝利の美酒を口にするがいい。」

 

アルケイデスに促され、王士郎は神酒を飲む。

 

すると失われた左腕も含めて、全ての傷が瞬く間に癒えた。

 

「君との戦いを誇りに思う。」

 

胸に空いた傷から光の粒子が溢れているが、アルケイデスは堂々たる歩みでイリヤの元に向かう。

 

「イリヤ嬢、召還してくれた事に感謝する。今一度、戦士の誇りを感じる事が出来た。」

 

その言葉にイリヤはニッコリと微笑む。

 

「どういたしまして。」

 

微笑みを返したアルケイデスはメディアに目を向ける。

 

「メディア、今度こそ幸せになってくれ。」

「言われなくても幸せになるわ。女神が嫉妬する程にね。」

「そうか。ならば女神が嫉妬に狂った時には任せてもらおう。」

 

クスリと笑ったアルケイデスは少年少女達へと目を向ける。

 

「君達の道行きに幸多からん事を!さらばだ!」

 

こうしてアルケイデスは少年少女達に多くの感動を残し、『座』へと還ったのだった。

 

 

 

 

英霊の宴も最終日を迎え、現世に残らない者が還る時がやって来た。

 

「あれだけ現代医療に興味を持っていたのに還るのね?」

「医療現場で死者が出たら、僕は間違いなく蘇生させてしまう。そうしたら社会が混乱するだろう?」

「そうね、隠蔽魔術の一つでもつかえれば少しは話が違うのでしょうけど、それでも限界があるわ。ゼンの様に国が協力していれば別だけれど、貴方にはそんな後ろ楯はないものね。」

 

既に現代にて転生をしたメディアが、アスクピレオスと別れの会話をしている。

 

一方では王士郎がセタンタと会話をしていた。

 

「やはり君も異世界への転生を選んだか。」

「あれだけの戦いを見せられたら血が騒いで当然だろ。まぁ、一度還って息子達に一言ぐらい言うけどな。」

 

そんな会話をしている一方で、受肉をしたマルタの前で立川からやって来たイエスが目を白くしていた。

 

「えっと…マルタさん?一言言って貰えたら一緒に降臨したんですけど?」

「弟子がついてこない様に逃げ回っていたのは誰だったかしら?」

「あっ、はい…すみません。」

 

降臨ではなく受肉。

 

しかもイエスと縁深い聖マルタがだ。

 

もしバチカンに伝われば、目も当てられない大騒ぎになる事は必至だ。

 

それを察したシッダールタがイエスの肩を優しく叩く。

 

「イエス、とりあえず君の父さんに相談に行ったら?」

「うん、そうしよう。」

 

それぞれの話し合いも終わり、いよいよ英霊が還る時が来る。

 

「じゃあな!縁があればまた会おうぜ!」

 

快活なセタンタの言葉を機に、彼とアスクピレオスは『座』へと帰還したのだった。

 

 

 

 

英霊の宴から一年が過ぎ、凛、遡月 士郎、慎二、イリヤ、カレンは高校を卒業する。

 

それは同時に凛が二郎とアルトリアと共に、異世界へと旅立つ時でもあった。

 

両親や友人達などの縁深い者達が、彼女達を見送る為に集まっている。

 

「桜、遠坂家を任せたわよ。一人とは言わずに慎二の子をバンバン産んじゃいなさい。」

「それは慎二さんと相談しながらかな。」

 

顔を赤らめながらも強く否定しない辺り、桜も満更ではなさそうである。

 

凛が両親や友人達と別れの挨拶をしている一方で、二郎とアルトリアも別れの挨拶をしている。

 

「士郎、留守の間は任せたよ。」

「正直に言って老師の代わりは荷が重い。だが王貴人と共になんとかしてみせるさ。」

 

「アルトリア、生まれ変わった妲己姉様と会えたら伝えてくれ。私は士郎と幸せに生きていると。」

「はい、必ず伝えます。」

 

それぞれが別れの挨拶を終えると、凛が宝石剣で虚空に穴を開ける。

 

いよいよ異世界への旅立ちの時がやって来た。

 

時臣や切嗣といった二郎に救われた者達が、深々と頭を下げて感謝の念を捧げている。

 

それにつられる様にシッダールタとイエスも後光が出る程に祈るが、それを慣れているマルタが止める。

 

慎二や桜達も目頭を熱くさせながら見送る。

 

「それじゃ、行ってくるよ。」

 

こうして二郎達は異世界へと旅立った。

 

彼等がどういった世界へと辿り着くのかは誰にもわからない。

 

だが、きっと多くの者が悲劇から救われるだろう。

 

この世界で救われた多くの者達と同じ様に…。




これで本編は完結です。

本日11:00にzero編とstay night編の登場人物紹介を投稿して、拙作の投稿全てが完了となります。

1年半に渡り拙作にお付き合いくださりありがとうございました。
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